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いま飲食業界では「専門店」が盛況! ポトフ専門店『ジョワ』に聞く「集客力」ある業態の作り方

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メニューは一人一冊ずつ、丁寧にテーブルセッティングされている

一般的な「ポトフ」とは一味違う、専門店ならではのメニューづくり

『joie』のメニュー数は決して多くないと喜多川さんはいう。しかし、ポトフだけで6種類あると聞くと、驚く人もいるのではないだろうか。基本の「すっきり牛骨スープのポトフ」のほかに、「濃厚きのこクリームのポトフ」や「パクチーのエスニックポトフ」など一般的に考えられているポトフとはひと味違うメニューも展開している。さらに、肉は「和牛すね肉」「岩中豚バラナンコツ」「牛ほほ肉」から選べることも特徴。スープの種類と3種類の肉の組み合わせから考えれば、全部で18種類、冬季限定メニューの牡蠣があるときは24種類のポトフが楽しめる。

このようにカスタマイズできるポトフは、お客様に好きなものを遠慮せず食べてもらいたいとする気持ちから生まれた。

「こだわりの強い方には『こんなのポトフじゃない』と言われてしまうこともありますが、大半のお客様が楽しんでくれています。そもそも『ポトフ=火にかけた鍋』という意味なので、いろいろな味があってもいいのではと思います」

『joie』のメニューにはプリフィックスコースも用意されているが、それでもメインはあくまでもポトフ。「ポトフを煮込んでいる間、食べ終わったあとに、『ちょっと他の料理を楽しんでみませんか?』『ポトフの後にデザートはどうですか?』といったように追加オーダーを提案しています」と喜多川さん。家庭料理であるポトフを主役にしながらも、店で食べるからこその楽しさも提案しているというわけだ。

入り口にはかわいらしい鍋やイラスト。やさしい雰囲気の店内

ベースをしっかりと作ることこそが、多店舗展開へのカギに

『joie』で提供しているポトフは、どれもベースとなるスープは同じ。ランチメニューで提供するカレーも同じスープを利用しており、仕込みの面では大きなメリットがあるといえる。「ポトフ専門店だからこそ、ベースとなるスープを一番大事にしています」と喜多川さんは語るが、この基本をしっかりと作ることが次の展開にもつながっていく。

「基本のスープをしっかり作ってマニュアル化しておけば、他のスタッフにも任せやすくなります。そうして自分以外のスタッフも作れるようになれば、複数店舗を経営することも可能じゃないかなと考えています」と喜多川さん。しかし、これはポトフだからできることだと続ける。「たとえば食材に特化した専門店では、その食材を使った複数のメニューをマスターしなくてはいけません。焼き物、揚げ物、煮物など、料理人に覚えてもらうことが非常に多くなります。ポトフであれば、ベースをしっかりと押さえれば作れるようになります」。

オシャレな外観

季節に左右される、「ポトフ料理」だからこそのデメリットも

ポトフ専門店を運営する上でのデメリットを聞くと、すぐに「夏です」と答えをもらった。体の温まるポトフという料理だからこそ、冬に比べてどうしても夏は客入りも減ってしまうという。売上のばらつきはもちろんのこと、何より気になるのが人材雇用の面だそうだ。夏はあまり人手は必要ないが、冬はしっかりと必要になるため安定して雇用できない点が問題点として挙げられるそうだ。

さらに、スタッフのケアでも気になる点があるという。「売上は冬でも巻き返せますし、夏も充分に給料は支払うことができます。ただ、閑散期はスタッフのモチベーションが下がりやすい。金銭面よりも働くスタッフのやる気を維持することが難しい点が課題です」。現在はアルバイトスタッフに支えてもらいつつ、ベストな方法を検討しているそうだ。

専門店は一つの料理や食材に特化しているからこその利点も多くあるが、客入りや雇用面、店舗展開の面など、さまざまなところで他の業態とは違った目線が必要となる。しかしながら、事前にしっかりとコンセプトを練り上げ、不安な点を一つ一つ解決していけば、個性豊かな繁盛店を作ることができる。専門店を開きたいと考えている方は喜多川さんの話をぜひ参考にしてみてはいかがだろうか。

『ポトフ料理 Joie(ジョワ)』
住所/東京都新宿区新宿1-12-1 サンサーラ第三御苑1F
電話番号/03-5341-4564
営業時間/11:30~L.O.13:30(水曜~日曜)、18:00~L.O.21:30(火曜~土曜)/17:00~L.O.20:30(日曜・祝日)
定休日/月曜(ランチは月曜日・火曜日)
席数/20

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竹野愛理

ライター: 竹野愛理

食と文学を愛するライター。飲食店取材、食に関するコラム、書評を執筆のほか、食関連のメディアや書籍にて編集者としても従事。趣味は読書と散歩。本を片手に旅行したり食べ歩きをしたりすることが好き。