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目指すはオンリーワンの存在。ダルマプロダクション古賀慎一氏、コンセプトメイクに賭けた人生

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株式会社ダルマプロダクション・古賀慎一社長

メニューのないイタリアン『オステリアウララ』で成功し、現在8店舗を営む株式会社ダルマプロダクションの古賀慎一社長(39)。同じ店は出さないという信念の下、冒険心に満ちた出店を重ね、結果を出していく。熊本大学工学部卒業という飲食業界では珍しい経歴、一見奇抜に見える行動にも全て理由がある理系出身者らしい計算が根底にある。独自の路線を突き進む古賀社長に、成功の秘訣や経営哲学、そして将来への見通しを聞いた。

徹底したコンセプトメイクで来店動機を高める

2012年2月、『オステリアウララ』はメニューのないイタリアンレストランとして渋谷区猿楽町にオープンした。毎日変わる食材を黒板に書き、詳細はスタッフと相談するというスタイル。現在、パスタは一律1,300円、メインディッシュは2,400円と決まっており、客がその日の食材を見て店員とやりとりして決める。その斬新さが評判を呼び、開店から2、3か月で予約が次から次へと入る繁盛店となった。

━━メニューのない店舗という発想に至ったのはなぜでしょうか

古賀 店がある並木橋交差点の近くは、決して場所がいいというわけではありません。開店当時、夜は人通りが少なく、普通にイタリアンをやっても埋もれると思いました。そうなると目的として来てくれる店にしないといけないわけです。「美味しい」「サービスがいい」はリピートの要因であって、1回目に来てもらう動機にはなりません。ですから、ここまでわざわざ歩いて来てもらう理由がある店というのを、コンセプトメイクしなければいけないわけです。他の店がやらないこと、ここでしか体験できないことが必要でした。

━━イタリアではそういう店が多いのでしょうか

古賀 ものすごく多いというわけではありません。惣菜をいくつも作っていて「どれ食べる?」、「パスタはどれにする?」という感じの店はあります。ただ、以前働いていた六本木の客単価1万5,000円ぐらいの店では、常連さんはあまりメニューも見ないで「今日は何が美味しいの?」みたいな感じで、あれこれとやり取りして決めていました。

━━お客さんとのやりとりが増えることで距離が縮まり、結果、リピーターが増えるというあたりを意識されたのでしょうか

古賀 そうです。この場所は渋谷、恵比寿、代官山、どの駅からも結構、歩きます。そのため完全にお店にハマってもらわないと次はないと思っていました。その点を考えると接客回数、トーク回数を増やすことが必要です。

ダルマプロダクションが運営する店舗は一貫して食材の仕入れに力を入れ、顧客満足度の高い料理を提供している

「同じ店は2軒つくらない」逆風のイタリアンで活路を開く

古賀社長のユニークな点は、このように成功したパターンがありながら、2店舗目の『ALA(アラ)』では、イタリア版串焼き(スピエディーノ)をメインとしたバールという全く異なるコンセプトの店舗にしたことである。その後も店舗を出しているが、日本酒と郷土料理の『酒々屋 暁月』『アカベコ』など、同じグループの店舗なのかと思えるような構成である。

━━流行ったら似たような店をもう一軒、と考えたくなりそうですが

古賀 同じ店は2軒作りません。僕自身が飽きるし、僕が飽きるということはスタッフが飽きるということです。人事異動で他の店に行っても、やることが同じ、例えばずっと同じ料理をつくり続けるだけだったら「自分の人生これでいいのかな」と考えて、人は辞めてしまいます。そのため、全く違うコンセプトを作っていかないといけませんし、かなり速いサイクルで人を動かしています。

━━最近、ポルトガル料理の『クリスチアノ』の佐藤幸二社長にお話をうかがう機会がありました。「今の時代、イタリアンだと相当特徴を出さないと埋もれてしまう」ということで、あまり馴染みのないポルトガル料理店をつくったと言われていましたが、そういう危機感はありますでしょうか

古賀 『クリスチアノ』は大好きでよく行きますが、佐藤社長の言われるのは正解だと思います。イタリアンは今、大変な向かい風です。業態的に飽和状態、もう終了気味だと思います。例えばパスタを食べたいと思ったら、『PRONTO』に行けば食べられるわけです。また、居酒屋は最近、結構、肉を出すようになりました。イタリアンの特徴はパスタ、ピザに、塊の肉ですが、それらは今、イタリアンの専門店でなくても食べられるようになっています。イタリアンレストランに来る理由がなくなっているわけです。

━━今後はイタリアンの比重を低くするお考えでしょうか

古賀 いえ、逆にイタリアンに活路を見出そうと思っています。イタリアンでもやり方次第で十分流行るよというのを示していきたいです。店をやるからには10年、15年は最低でも続けたいですから、そのために本筋をしっかり追っていく必要があります。イタリアンで人々が経験していないことができたり、例えば新しいワインの飲み方を提案したり、まだ網羅しきれていない部分をやっていく。チャレンジは必要だと思っています。それは一種の逆張りにもなります。

━━高級イタリアンに出ていくお考えはありますでしょうか

古賀 先々、やりたい気持ちはあります。ただ、まだコンセプトが決まっていなくて。例えば石田聡社長の『レフェルヴェソンス』などはミシュランの二ツ星ですし、行く理由を作れている素晴らしいレストランだと思います。イタリアンレストランとして、そんな感じでしっかりとコンセプトをつくれたら、アッパーな店もやるかもしれません。

飽和状態にあるイタリアン業態でも、戦略次第でオンリーワンになれると語る古賀社長

飲食業界での成功に必要なのは「人」

━━社長のコンセプトメイクはうかがっていると「何となくうまくいきそうだから」というのではなく「そうすべき理由があるか」を考えていらっしゃるように感じます

古賀 例えば他の店にしても、何でこの店は流行るのだろうと自分なりに考えて、それを店に落とし込んでPDCAを繰り返していくといいますか。仮説を考えることは大事です。

━━理系の発想ですね

古賀 そうかもしれません。理由がないと自分を動かすきっかけを作れませんから。

━━飲食業界で成功するために必要なものは何だとお考えでしょうか

古賀 一番は人です。人がすべてと言っていいぐらいだと思います。ちゃんとした人材が会社内に残ることが大事です。僕がコンセプトメイクをするのは優秀な人を会社に残すためです。

━━逆にこういう人は失敗する、失敗する人に共通するものはありますでしょうか

古賀 個人店、例えばオーナーシェフが失敗するパターンとしては商売を勉強していないと言いますか、うまくいかない原因を皿の中で考えてしまいがちです。それから、人の問題で会社を潰す人は多いと思います。人を定着させることを疎かにしている店は比較的早めになくなっているように感じます。

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松田 隆

About 松田 隆

青山学院大学大学院法務研究科卒業。スポーツ新聞社に29年余在籍後にフリーランスに。「GPS捜査に関する最高裁大法廷判決の影響」、「台東区のハラール認証取得支援と政教分離問題」等(弁護士ドットコム)のほか、月刊『Voice』(PHP研究所)など雑誌媒体でも執筆。ジャーナリスト松田隆 公式サイト:http://t-matsuda14.com/