西日本豪雨、被災地救った飲食店に感謝の声。尾道いっとくグループ「こんな時こそ街に明かりを」
各地に大きな被害をもたらした西日本豪雨。特に被害が大きかったエリアの一つが広島だ。県内各地で土砂災害が相次ぎ、多くの被災者が避難所生活を送ることになった。また、建物に直接的な被害がなくても、道路の寸断で物流が止まったり、断水や停電などでライフラインが絶たれたりして、生活に大きな支障が出たエリアもある。
そんななか、被災エリアのいくつかの飲食店がSNSで呼びかけた。「避難所に避難されている方へ、お好み焼きを無償支援します」「店の前で給水を行っています」「お弁当50円で販売します」……。これらの投稿は、感謝の言葉とともに多くの人に拡散された。被災エリアにある飲食店が、いざというときにできることとは何か。被災後、SNSで支援を呼びかけた飲食店の一つ、いっとくグループ代表の山根浩揮さんに話を聞いた。
「こんな時こそ街に明かりを」。断水の最中、営業再開
いっとくグループが店を構えるのは、広島県東部にある尾道市と福山市。特に10店舗の居酒屋やカフェがある尾道は、今回の豪雨で2名が亡くなり、市内のほぼ全域がおよそ10日間断水となった。
「尾道は坂が多い町で、土砂崩れなどもありました。幸いお店に土砂が流れてくることはなかったのですが、雨漏りで天井が抜けて畳がだめになるなどの被害もありました」。
被害の状況について山根さんはこのように話す。普段は観光客や地元の人たちでにぎわう尾道駅前の商店街も、被災直後は休業を余儀なくされた店が多くあった。こうした状況の中、いっとくグループでは豪雨から2日後の7月8日に3つの居酒屋の営業を再開した。
「豪雨の後は、街の雰囲気がとても暗いものでした。自粛ムードというか……それどころじゃないという感じ。飲みに行く雰囲気ではない。でもそんな時だからこそ、街に明かりをともす必要があると思ったんです」。
食材や水はライフラインが生きている福山市にある系列店から運んだ。物流がストップし、普段の生活が取り戻せない状態の中、食事を求めて訪れる客からは「店をやってくれてありがたい」という声も少なくなかった。団体客のキャンセルなどはあったものの、店を訪れた顔なじみの常連客同士が顔を合わせて、ほっとした表情を見せることもあったという。