ニュースレターの購読はこちらから(無料)
Foodist Mediaの新着記事をお知らせします(毎週2回配信)
※お申し込みの前に、個人情報の取扱いについてご確認いただき、同意の上お申し込みください。
powered by 飲食店.COM ログイン

高級フレンチから居酒屋へ転身。『ル ジャングレ』有沢シェフ「飲食店はもっと自由でいい」

LINEで送る
Pocket
follow us in feedly

『ル ジャングレ』オーナーシェフの有沢貴司さん

飯田橋で人気の居酒屋『Le Ginglet(ル ジャングレ)』。店内には巨大なワインセラーがあり、ナチュラルワインを中心とした約2,000本のボトルが並ぶ。冷蔵庫には季節の日本酒が約50種類あり、オーナーシェフの有沢貴司さん(35歳)は、「ナチュラルワインや日本酒に一家言ある人でも満足させられる本気の品揃え」と胸を張る。

食材にもこだわっており、全国の生産地を見てまわり、「生産者の思いのこもった食材」を厳選するようにしているそうだ。有沢さんは東京の名店『OHARA ET CIE(オーハラ エ シーアイイー)』をはじめとする都内のフレンチレストランや、ホテル、日本料理店、ラーメン店、博多焼き鳥店などで勤務した後、経営を独学して店をオープンした。さまざまな業態を経験した有沢さんが、あえて居酒屋で勝負しようと思った理由とは? そして、若くして2店舗を成功させたその経営手腕とは!?

“居酒屋”と謳っているものの、外観や店内は洒落た雰囲気

美容学校の入学を直前でやめ、料理の道へ飛び込む

有沢さんが料理人を志したのは高校卒業間際だった。当時、美容学校へ進学し、一人暮らしをすることが決まっていた有沢さんは、自炊スキルを上げるため、地元のビストロでアルバイトを始める。自分の作った料理で、誰かを喜ばせる楽しさに目覚めた有沢さんは、美容学校には進学せず、ホテルのレストランで働くことを選んだ。その後、19歳で上京し、都内のレストランに勤務。『オーハラ エ シーアイイー』には、23歳から26歳まで勤務した。忙しい仕事の合間を縫って、23歳頃から経営の勉強もしていたという。

「僕は高校卒業後すぐに現場に入ったので、大学にも調理師学校にも行っていないんです。経営も専門的に学んだことはありません。あらゆる面で、他の人よりもスタートの時点で劣っているわけです。だとしたら、空いている時間に勉強したり、自分なりの考え方を持ったりしないと圧倒的に不利になると思いました。田舎から出てきているし、周りに助けてくれる人もいない。それでも、『自分の思うようにやってみたい』という思いが大きな原動力になったんです。リスクを背負ってでも、自分のわがままを通したいと思って、23歳頃から独立に向けた準備を始めました」

フレンチレストランなどの高級業態で腕を磨いてきた有沢さんだが、その後焼き鳥店やラーメン店などカジュアルな業態に転向した理由は何だったのだろうか。

「リーマンショックや東日本大震災があったときに、有名レストランが簡単に潰れるのを見て、高級業態は世の中の動きに影響を受けやすいんじゃないかと思ったんです。1,000円以下の外食は生きるための食事ですから、不況であっても牛丼店やラーメン店などは繁盛していました。5,000円以上の価格になってくると楽しむための食事になるので、世の中で何か起きるとお客さんも足を運ぶのを自粛してしまいます。そこで、ピッツェリアや焼き鳥店、ラーメン店のようなシンプルなものをやりたいなと思うようになったんです」

毎日忙しく働く中で、体調の変化と料理についての気づきもあったそうだ。「二日酔いの日とか体調を崩しているときに、フレンチを食べるとちょっと疲れてしまうなと思うことがあったんです。そんなとき、たまたま和食の出汁を飲んで、身体が軽くなるように感じました。それから和食もいいなと思うようになったんです」と有沢さん。そうした理由から和食店や、ラーメン店でも勤務した。ラーメン店は開業も視野に入れていたが、働いてみると回転率重視のため客とゆっくり会話を楽しむ暇がなかった。「客とのコミュニケーションも楽しみたい」と思った有沢さんは居酒屋で勝負することを決意する。

高級レストランからラーメン店まで幅広い業態で学んできた有沢さん

「お客さんに接客してもらう」作戦で大成功

2012年1月、有沢さんがオーナーシェフとなり、学芸大学に『立ち呑みワイン酒場 BOOZE(ブーズ)』をオープンした。

「普通は独立する前にどこかで働いて、自分の理想のお店を作るための準備をしますよね。それでは時間がかかりすぎるので、『開業資金を貯め、経験を積むための店を自分で作ろう』と思ったんです。実際に経営してみて気づくことや、気持ちの変化もあるはずなので、最初は実験的に開業して、2店舗目で理想のお店を作ろうと思いました」

8坪の小さなワイン酒場は、料理一品300円から500円。ワインはグラスに並々一杯注いで500円というリーズナブルな価格設定で、常に満員になるほどの人気店となった。開業資金として借り入れた1,000万円も1~2年で返済できたという。成功の秘訣はどこにあったのだろうか。

「単純な話をすれば、金額以上のものを提供すれば店の価値は上がりますよね。まずは料理のコスパがいいという価値、これに加えて店の雰囲気がいいとか、楽しくおしゃべりできるとか、あらゆる価値を提供できるように考えたんです。でも、学芸大学の店は1日100人ぐらいのお客さんが来ていたので、僕ともう一人のスタッフではどう頑張っても全員とは話せません。そこで、『お客さんに接客してもらおう』と考えました。職場や生活圏が同じ人たちですから、必ずどこかに共通点があるはずです。最初は僕がカウンター席のAさんとBさん交互に話を振ります。共通の話題が出てきたら、AさんとBさんをつなげます。今度は隣のCさんとDさんをペアにします。次に最初のペアとくっつけて4人組にするんです。2人だとすぐ話題に詰まる可能性がありますが、4人になれば必ず誰かが話しますから、後は勝手に盛り上がります。ただ飲みに来ただけなのに、パーティに参加したみたいな楽しい気分になれる。その満足感が価値になると思いました」

有沢さんの狙い以上に、店は大繁盛。だが、開店から4年目になると、忙しすぎてモチベーションが上がらなくなってしまったそうだ。

Pocket
follow us in feedly

Foodist Mediaをフォローして最新記事をチェック!

ニュースレターの購読はこちらから(無料)
Foodist Mediaの新着記事をお知らせします(毎週2回配信)
※お申し込みの前に、個人情報の取扱いについてご確認いただき、同意の上お申し込みください。
[PR]
三原明日香

About 三原明日香

これまでに、百貨店の会報誌や、フリーペーパー、グルメ冊子、地域の経済新聞などで取材記事を執筆。社会保険労務士や年金アドバイザーの資格を持ち、人事労務の分野にも詳しい。趣味は都内のカフェめぐりで、とくにチョコレートには目がない。