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住宅立地でも“好き”を突きつめて繁盛店に。『アオジ ソシガヤ』に学ぶ「愛される店づくり」

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『アオジ ソシガヤ』のオーナー後藤繁則氏

かつては円谷プロダクションが所在したウルトラマンの町・祖師ヶ谷。祖師ヶ谷大蔵駅から続く商店街を徒歩8分ほど進んだ先に、地元でも人気のイタリアン『アオジ ソシガヤ』はある。特に薪窯ピッツァと自然派ワインに定評があり、他の人気店シェフからの評価も高い。地元民を中心に抜群の人気を誇る同店のオーナー・後藤繁則さんに、「親しまれ続ける店づくり」の秘訣を聞いた。

薪窯の面白さに魅せられて

複数の有名イタリア料理店で料理長を務め、石窯ナポリピッツァの先駆けである『ISOLA』で、ベテランピッツァ職人として腕をふるった経験も持つ後藤さん。ナポリでピッツァを食べた際に、温度調節のダイヤルもない、不確定条件の中で料理を作る薪窯に面白さを感じ、リストランテからピッツェリアのシェフへと方向転換したという。

そして、都心からの程よい距離感、商店街のある環境のいい場所として選んだ祖師ヶ谷に店をオープンしたのは2010年。以来、今では人気店として地元客を中心に昼夜賑わいを見せている。

アンティークショップで購入、元々買い溜めていたものなど、自分が好きなもので統一している店内

空間も料理もワインも、自分が本当に好きなものを

後藤さんは店の特徴について次のように語る。

「店を一言で表すと『趣味の店』。戦略という所から入らず、ワイン、ピッツァ、インテリアしかり、結局自分でやりたいことしかやってないんです」

店内を見渡せば、懐かしい振り子時計、金魚鉢の代わりにしている地球瓶、そして使い込まれていい塩梅に色味を帯びたテーブル。そのテーブルの上にはフランスのアンティークのカトラリーレストが並び、使用する食器も明治・大正時代製造の珍しいものが揃う。なるほど、ここはオーナーの“とっておき”を詰め込んだ宝箱のような空間だ。

「自然派ワインや国産ワインを扱うようになったのも同じです。自然派や国産ワインを飲んだ時、今までにない体に沁みる感じがして、自分が本当に飲みたいのはこっちなんじゃないかと思うようになったからです」

グラスは650円から、ボトルは3,000円台後半から5,000円台前半の価格で提供。国産と外国産を半々位の割合で扱っており、聞けば、店だけでなく家に保管された本数を入れるとおそらく500本はくだらないほどの量を貯蔵しているという。

「出しているワインは、包容力のあるワイン。提供する料理に寄り添ってくれるもの、ワインはそんな役割を担う存在だと思います」

自然派ワインも、自分の好みである濁りが少なく還元臭のあまりしない、柔らかい飲み口の商品を中心に取り揃えている

店には、ワインリストがない。自然派ワインは安定的に仕入れることが難しい面もあり、リストの更新が追いつかないというのがその理由だという。しかし、そういった状況にあることで、客との会話の中で好みを探り、店側からおすすめするというスタイルが確立されている。

「きれいで飲み口が柔らかく、華やか過ぎない」という点を選定基準とし、複数の醸造所や酒屋からワインを仕入れ、それにどんな料理を合わせるかという流れで考えるメニューは、ピッツァをはじめ、前菜からパスタ、リゾット、そしてデザートまで多彩なラインナップを揃える。

「創作という意識は特になく、自分の作りたいものを作っていたらこういう感じになりました。多分、母の作る料理の影響が強く出ていると思います」

人気ピッツァの一つ「たまり醤油につけた青唐辛子風味」。季節ごとに旬の具材を用いたピッツァで、この「たまり醤油と青唐辛子」というのは実家にあるソウルフード的な調味料なのだという。お母様の料理がモチーフになった象徴的なメニューだ。

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河田早織

ライター: 河田早織

フリーライター・記者。人、物、コトと社会をつなぐ媒体として、インタビュー・取材レポート等の記事を執筆。主な執筆媒体は、日本の食、教育、医療、不動産など。