カフェチェーン『セガフレード』の“喫煙目的店”。コロナ禍で大きな反響
新型コロナウイルスの感染拡大に伴う休業・時短営業の要請などを受け、大きな痛手を被っている外食業界。そんなコロナ禍の混乱で十分に認知されないままになっていることがある。「喫煙ルール」の変更だ。
国の改正健康増進法と東京都の受動喫煙防止条例がともに4月1日より施行され、飲食店をはじめ、百貨店や娯楽施設、オフィス、集会場など複数の人が利用する施設の屋内は、空間を仕切るなど一定の条件を満たした喫煙専用室や加熱式たばこ専用喫煙室を設けない限り、「原則屋内禁煙」が義務づけられた。
「よく通勤途中で朝食をとっていた昔ながらの喫茶店が突然、全席禁煙になって困っています。食後には一服しながらコーヒーを飲んで、『今日も頑張るぞ!』と気合いを入れていたのに……。4月からたばこを吸える店が少なくなるとは何となく知っていたけど、まさか自分が通っていた店がそうなるとは思いませんでした」(都内在住の30代会社員)
もっとも、4月以降は緊急事態宣言や長引く自粛生活、テレワークの普及などによって、外出・外食自体を避ける人も多く、喫煙環境の変化をいまだに実感していない向きは強い。
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全席喫煙可能な「喫煙目的店」とは
だが、たとえ喫煙専用室がなくても、これまで通り店内で飲食をしながらたばこも吸える店はある。イタリア発のカフェチェーンで、1都3県を中心に全国で30店舗を展開する『セガフレード・ザネッティ・エスプレッソ』では、店舗ごとに喫煙環境を分けている。
もともとコーヒー焙煎メーカーとしてスタートした同チェーンは、淹れたての本格コーヒーはもちろん、ビール、ワイン、カクテルなどのアルコール類や、パニーニ、サンドイッチといった軽食類も豊富に揃え、主に20~30代の客層から支持を集めてきた。
セガフレードの「新宿南口店」を訪ねてみると、店頭には「20歳未満の方の立入禁止」の表示とともに、“喫煙目的店”と大きく書かれたピクトグラム付きのステッカーが貼ってある。平日のランチタイムを過ぎた14時過ぎにもかかわらず、店内はパソコンを開いて仕事の打ち合わせをする若いサラリーマンや、買い物袋を提げた女性などで満席状態。そして、みな紙巻きたばこや加熱式たばこを嗜んでいる。
飲食店の屋内喫煙ルールが厳しくなる中、なぜセガフレードは店内で自由にたばこが吸えるのか。それは改正健康増進法において、喫煙を目的とする施設への措置が設けられているためだ。
喫煙場所の提供を目的とした施設において、たばこの対面販売(出張販売を含む)免許を持ち、「通常主食と認められる食事」を主として提供(※)せずに飲食営業をしている業態であれば、店内喫煙が可能になる。その代わり、客や従業員でも20歳未満の施設内立ち入りが禁止される。
※「通常主食と認められる食事」に、ランチ営業は該当しない。また、電子レンジのみの調理や、出前による提供も該当しない
改正健康増進法が施行され4月以前は、フロア内で喫煙席と禁煙席を分けてきたセガフレードの新宿南口店だが、フロア内すべてでたばこが吸える喫煙目的店に鞍替えすることにした理由は何か。
「当社の店舗運営スタイルは、その場所の客層やニーズに応じたサービス、メニューを提供することを基本にしています。新宿南口店は近隣にオフィスが多く、お客さんの9割近くが喫煙者だったため、もともと全30席のうち禁煙席は4席しか設けていませんでした。周辺の店がどんどん禁煙化に走る中、いっそのこと全席喫煙可にしたほうがこの店にとってはメリットが大きいと判断し、喫煙目的店にすることを決めました」(セガフレード・ザネッティ・ジャパン、マーケティング担当の服部公一氏)
もちろん、都内チェーン店の中には非喫煙者が多く来店する場所もある。広尾や恵比寿、三田などにある店舗がそうだが、そうした店は一部テラス席を除き、全席禁煙にするなど、立地や客層に応じて店の喫煙形態を変えている。
また、大型の複合施設内などに出店し、喫煙者・非喫煙者の出入りが激しい店舗は新しいルールに則り、分煙環境を徹底させた。