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東京都を提訴したグローバルダイニングに、飲食店オーナーたちは何を思ったか

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写真はイメージ。画像素材:PIXTA

3月22日、和食レストラン『権八』やイタリアン『カフェ ラ・ボエム』などを展開する外食企業のグローバルダイニング社が、東京都を提訴した。法的義務のない時短要請に従わないとする同社に対し、施設使用制限命令を発出した東京都を被告として、当該命令及びその根拠となる特措法が違憲・違法であることを理由に国家賠償を求めている。

この一連の出来事に関してはさまざまな声が飛び交うが、同じく飲食店を営むオーナーたちは何を感じたのだろうか? 実際に話を聞いてみた。

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グローバルダイニング社がコロナ特措法違憲訴訟を行うまでの経緯

事の発端は2021年1月5日、同社代表の長谷川耕造氏がFacebookへ行った投稿だ。二日後の1月7日にはグローバルダイニング社のホームページにも転載されたこの投稿は、緊急事態宣言が再発令され、東京都からの一律の時短要請が出されたことに関して、同社は平常通り営業を行うという方針を示している。

緊急事態宣言下でも平常通り営業する理由について長谷川氏は、要約すると以下4点を挙げている。

(1)2018年の「季節性インフルエンザ」の死者数は3,328名、大流行した1998年〜1999年は32,758名と新型コロナウイルスの死者数の累計3,598名(1月3日現在)より甚大。日本の総死者数も2019年に比べ2020年度は14,000人も減少している状態が緊急事態に当たるのかという疑問。

(2)ロックダウンを徹底している国々で感染が下火にならず、「時短」や「休業」が感染をコントロールするのに効果がないのは世界規模で証明されていると思っているから。

(3)感染者数や死者数が欧米などの40分の1しかいないのに、本当に日本では医療崩壊が起きているのかという疑問。

(4)今の行政からの協力金やサポートでは時短要請に応えられない。

グローバルダイニング社のホームページに掲載された同社の方針

2月26日以降、東京都は飲食店への営業時間短縮要請に従わなかった2,000超の施設のうち、113の施設に個別の時短要請を発出。さらに東京都は3月5日付で、グローバルダイニング社に対し、特措法(平成24年法律第31号)の規定により不利益処分を行う予定であり、行政手続法に基づき弁明の機会を付与するとした「弁明の機会の付与について(通知)」を送付した。

これを受けグローバルダイニング社は3月11日付で東京都に、同社運営店舗26店が新型インフルエンザ等対策特別措置法45条2項要請に応じないことについての弁明書を提出。

この弁明書では、以下3点を示した。

(1)感染を克服するには「感染して免疫を得る」もしくは「ワクチン接種によって免疫を得る」ことにより人口約6割の方が免疫を持ち、集団免疫を確立するしか方法はないという同社の新型コロナウイルスに関しての考え方。

(2)行政への新型コロナ対策についての疑問。

(3)新型インフルエンザ等対策特別措置法第 24 条及び第 45 条を用いた時間短縮営業要請と経済対策についての疑問。

これを受け東京都は3月15日付でグローバルダイニング社に対し「施設の使用制限の命令について」という事前通知を送付。

この通知について長谷川氏は「弊社からの弁明書に関しては一切の返答はなく、『正当な理由があるとは認められない』との一文だけ。(中略)都の目視調査では、要請に応じずに20時以降も営業を続けている施設は1,879件。小池都知事はどのようにこの113施設を選んだのでしょうか? 弊社への『事前通知』にハッキリ書いてあることは、『緊急事態措置に応じない旨を強く発信するなど、他の飲食店の20時以降の営業継続を誘発する恐れがある』ことで弊社施設が選ばれたと理由を書かれています」などと自身のFacebookでコメントしている。

写真はイメージ。画像素材:PIXTA

その後、東京都は3月18日付で、18日から21日までの期間の営業時間短縮を行わなければ科料を課すという「措置命令書」をグローバルダイニング社に通達。グローバルダイニング社はこの命令に応じ、18日から21日までの期間、東京都内の26店舗の営業時間を20時までに変更した。ちなみに「措置命令書」が通達された3月18日、政府は21日に東京都に対する緊急事態宣言を解除することを発表。また、実際に「措置命令書」を出したのは27店舗で、うち26店舗はグローバルダイニング社が経営する店舗であった。

これを受け3月22日、グローバルダイニング社は法的義務のない時短要請に従わないとする同社に対し、施設使用制限命令を発出した東京都を被告として、当該命令及びその根拠となる特措法が違憲・違法であることを理由に国家賠償を求める訴訟を提起。

この訴訟について同社は「私たちが目指すことは、経済的利益の獲得ではなく、民主主義国家としてのあり方について議論し、より良い社会に進歩すること」とコメント。賠償金額も1円×26店舗×4日間(命令に応じ時短営業を行なった期間)で104円としており、経済的利益の獲得ではなく、確たるエビデンスに基づかない東京都の対応について、司法の場できちんとした説明をしてもらうこと。そして、民主主義国家としてのあり方について、社会全体で考えるための一石を投じ、皆でより良い社会に向かう“きっかけ”とすることとしている。

また、一般社団法人Citizen's Platform for Justiceが、本訴訟の裁判費用を支援するクラウドファンディングも開始した。支援金は4月12日時点で、目標の10,000,000円を上回る21,390,845円が集まっている。

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中森りほ

ライター: 中森りほ

グルメ系ウェブメディアの編集・ライターを経てフリーライターに。フードアナリストの資格を持ち、現在マガジンハウス『Hanako.tokyo』や徳間書店『食楽web』、ぐるなび『dressing』、日経『大人のレストランガイド』などで飲食店取材記事や食のエッセイを執筆中。