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飲食店で「行動制限緩和」の実証実験が21日スタート。現場からは「非現実的」の声も

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画像素材:PIXTA

11月からの本格的な行動制限緩和に向け、10月以降「ワクチン・検査パッケージ」を使った実証調査が各地でスタートしている。政府は18日、飲食店でも21日から実験を開始すると発表。京都府の料亭などを皮切りに、北海道、福岡県でも順次実施していくという。

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具体的には「ワクチン・検査パッケージ」があれば、飲食店における5人以上の会食や営業時間の延長が認められる。感染状況の改善に伴い、自治体によってはすでに時短営業や酒類提供などの制限を解除して通常営業に戻すケースも出始めているが、政府はこれらの実証実験を通じ、冬に向けて想定される再びの流行に備えたい意向だ。京都府では、日本料理店などで10月21日から11月3日まで実施。北海道では10月22日から30日まで、福岡県では10月25日から29日まで実施される。

常連客やグループ客の中の一人に未接種者がいた場合、店側の対応は?

一方で、制限が解除・緩和された地域では「客を線引きしたくない」という声も上がっている。実証調査において、政府は「ワクチン・検査パッケージ」の確認を入店・入場の条件とするとしているが、逆に言えば、証明がない場合は入店を断らなければならない。こうした対応の必要性に難色を示す店は多い。

緊急事態宣言解除後も飲食店への時短営業要請を継続している埼玉県は、実験の協力を得るため、証明の有無で客席のエリア分けを行う「ゾーニング」を提案。証明の有無に関わらず入店可能なうえ、証明がある人については、夜遅くまで飲食できるなどの優遇策を検討している。しかし、時短要請は24日に終了予定。担当者は、制限解除後も実験に協力してくれる店があるか、懸念を募らせているという。

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弊社が飲食店.COM会員(飲食店経営者・運営者)を対象に、2021年9月27日~28日に実施した調査(新型コロナワクチン接種の進捗に伴う行動制限緩和についてのアンケート)でも、現場での対応について不安を口にする回答が多数寄せられた。一部を抜粋して紹介する。

・そもそも、その証明書を使った店内エリア分けは現実味がないですし、グループのお客様で一人だけ接種証明がない、という事態にも対応が難しいのが現実です(神奈川県/イタリア料理/1店舗)

・常連様等がワクチン接種をしていない場合、入店を拒否するのが困難(東京都/イタリア料理/1店舗)

・接種者、未接種者の両方が入ってきた時、分かれて座ることはできないので、結局はお客様を取り逃がしてしまうことになる(東京都/ラーメン/1店舗)

・経済を回すために制限緩和は必要だと思うが、果たしてワクチン接種の効果がどこまであるのか。また、様々な理由で接種できない人への対応をどうするかなどが疑問(東京都/その他/1店舗)

・確認作業が煩わしい。該当しない人を店頭で断れるのか? トラブルのもとにならないか? 差別にならないか?(東京都/バー/1店舗)

段階的に行動制限を緩和していくこと自体は、様々な営業規制を求められてきた飲食業界にとっても喜ばしいこと。だからこそ、実際に現場で働く従業員たちがこれ以上困惑してしまうことのないよう、よりリアリティに即した具体的な対応策を提示してほしいものだ。

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田中恵実子

ライター: 田中恵実子

編集プロダクション在籍時にグルメやライフスタイル、住まいなどをテーマとしたさまざまな雑誌・Webマガジンにて取材&執筆をおこなう。現在はフリーランスとして、女性向けショッピングサイトなどの編集執筆を担当。世代より少し上の歌謡曲やJ-POPを愛聴。