コロナ禍であえて原価率UP、大阪『ニューツルマツ』が快進撃を続ける理由
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広告費を削減し原価率をアップすることで、より魅力ある商品へ
中谷さんがコロナ禍でとった戦略は、広告費を削減し、浮いたコストを食材費に回すことでお客の満足度を高めるというものだった。これまではグルメサイトに掲載することで店舗の認知度を向上させてきたが、そうした広告費を削減する代わりに、インスタグラムなどSNSに注力するようにしたのだという。
「最初は私がアカウントを管理していたのですが、社内で写真の撮り方やSNSの投稿方法について講習を行い、現在は店舗のスタッフに任せています。インスタグラムを見て来店するお客様は多くなりましたね」
また、広告費を削減した分、原価率を35%から40%にアップ。特に魚は全国各地から鮮度のいいものを仕入れ、リーズナブルに提供することにこだわっている。看板メニューの「目利きの魚屋箱盛」(999円)は、旬の魚のお造りをふんだんに盛り合わせているにもかかわらず1000円以下だ。中トロとたくあんを合わせた「はみ出すとろたく巻」(980円)も、原価はかかっても上質なマグロを味わってほしいとの思いから本マグロを使用している。良質な食材を使いながらも客単価は3300円~3400円。リーズナブルに旨い寿司と天ぷらがいただけることが、ファン獲得につながっている。
さらに、“映えてもうまいメニュー”の開発もお客を惹きつけている要素の一つだ。
「メニュー開発は、リサーチとマーケティングのたまものだと思っています。あらゆる繁盛店をリサーチしてアイデアをもらい、何かと何かを掛け合わせることで、お客様の心を掴むメニューが生まれています」
DX化にともない新たな接客機会を作り、リピーターを獲得
同社では店舗のDX化を進めており、『ニューツルマツ』の3号店オープン時にセルフオーダーシステムを導入したのをきっかけに、1号店や2号店でも導入した。お客自身がスマートフォンでテーブルに設置されているQRコードを読み取り、メニューを注文するというシステムで、お客にとっては好きなタイミングで注文でき、店舗にとっては少人数でも店を回すことができるなど、双方にメリットが生まれている。
一方で、セルフオーダーシステムの導入によりお客との接点が少なくなり、味気ない接客になってしまったと中谷さんも現場のスタッフも感じていたという。新たに生まれた課題の解決策として取り組んだのがイベントの企画だ。取材時は、来店ごとに押されるハンコがたまると次回来店時にオリジナルメニューがプレゼントされる「花札キャンペーン」を実施中だった。『寿司と天ぷら ニューツルマツ』店長の林亮太さんが発案したもので、キャンペーンをきっかけに10回来店しているお客もいるそう。
「今後もDX化をいっそう強化していきます。今年は食材の受発注や原価計算など数字の管理を簡単にできるシステムを導入して、スタッフには空いた時間を商品開発や売上対策など、戦略を練るために充ててもらうことになります。そうすることで、より状況に合ったPDCAを回すことができると考えています」
セントラルキッチンを整備し、目指すは東京出店
コロナ禍で3店舗を展開してきた『ニューツルマツ』だが、その勢いはとどまらず、2022年3月には「天王寺ミオ」に4号店を出店予定だ。そして、ゆくゆくは東京出店を目指すという。
「3号店は心斎橋パルコ、4号店は天王寺ミオと、商業施設に出店することは知名度の向上につながると考えています。この流れで目標である東京出店に向けて、魚の仕入れルートの構築や安定した商品を提供するためのセントラルキッチン整備など、計画を進めています」
仕込みの一部をセントラルキッチンで済ませることができれば店舗の負担を減らせる。真空パックなどの技術を使えば東京に店舗ができたときも送ることができ、味にムラが出にくくなるだろう。さらに、仕込みの負担が減る分、空いた時間はスタッフの魚の調理技術を向上させるために使い、より商品力を高めて強い業態にしていこうと中谷さんは考えている。今後も『ニューツルマツ』の既存店の運営はもちろん、新店舗の展開にも目が離せない。
『寿司と天ぷら ニューツルマツ』
住所/大阪府大阪市中央区千日前2-7-22
電話番号/06-6631-2929
営業時間/16:00~23:30(料理L.O.22:30、ドリンクL.O.23:00)、土日祝・祝前日12:00~23:30(料理L.O.22:30、ドリンクL.O.23:00)
定休日/年中無休
席数/40
インスタグラム/https://www.instagram.com/new.tsurumatsu/
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