「原材料費の高騰」をどう乗り切るか。飲食店の生の声から実情を知る
ロシアによるウクライナ侵攻がもたらした物流の混乱やエネルギー不足、さらにはコロナ禍による人手不足といったさまざまな理由により、原材料の価格高騰が止まらない。加えて、1ドル135円台(2022年6月20日時点)まで円安が進行し、飲食店に大きな打撃を与えている。
【注目記事】飲食店が活用できる「給付金・補助金・助成金・融資制度」総まとめ -最新版-
原材料費の高騰、90%の飲食店に影響
弊社が運営する「飲食店リサーチ」は、2022年4月25日~4月26日の期間、飲食店.COM会員(飲食店経営者・運営者)502人に対して「原材料の価格高騰」に関するアンケート調査を実施した。調査結果によると、「原材料費の高騰は貴店の営業に影響を及ぼしているか」という質問に対し「影響している」「やや影響している」と回答した人は合計で90%以上にものぼった。
こうした現状において、原材料費の価格高騰は飲食店事業者にどのような影響をもたらしているのだろうか。今回は2つの飲食店を取材、リアルな現場の声を聞いてみた。
魚介、肉、野菜…名物のパエリアに価格高騰の波
2018年に日本初上陸したスペイン・バルセロナの人気シーフードレストラン『XIRINGUITO Escribà(以下、チリンギート エスクリバ)』では、なるべく国産の食材を使用するようにしているという。キッチンスタッフである佐々木氏は話す。
「原材料は全体的に上がっています。特に野菜類は時価なので顕著。スーパーで売られている市販の野菜と同じように、価格が上がっています。うちは輸入野菜を使っているわけではないですが、輸入野菜を使用する飲食店の負担はもっと大きいでしょう」
同店は現地のレシピを踏襲したパエリアが名物として知られているが、このパエリアに使用する魚介類にも価格高騰の波が押し寄せている。
「パエリアには様々な魚介類をたっぷり使うのですが、エビやイカなどは10%以上値上がりしています。さらに輸入に頼らざるを得ないムール貝は、元々の仕入れ先からは輸入できなくなってしまって。やむを得ず業者さんから別のムール貝を仕入れるようにしたところ、45%も値上がりしてしまいました」
パエリアには魚介類だけでなく、鶏肉を使うレシピもあるという。しかし、鶏肉を使うことで食材コストを抑えられれば良いが、問題はそう簡単ではない。佐々木氏は打ち明ける。
「肉類は全体的に高騰していて、鶏肉は50%も値上がりしました。賄いで鶏肉を使うことも多かったので影響は大きいです」
先述の飲食店リサーチの調査でも、価格高騰の影響を感じる品目として「鶏肉、鶏肉加工品」と回答した割合は35%、「牛肉、牛肉加工品」に関しては40%に及ぶ。
■キャノーラ油はプラス8割近く値上がり。「高騰の勢いが尋常じゃない」
ちなみに、今回の調査で68%の人が価格高騰の影響を受けていると回答したのが「食用油」だ。『チリンギート エスクリバ』でも同様の実感があるようで、「キャノーラ油は70〜80%値上がりしており、高騰の勢いが尋常じゃないんです。スペイン料理で使用するオリーブオイルも高騰しています」と、佐々木氏は嘆く。
また、「全体の割合としては大きくありませんが、調理で使う真空パックや、テイクアウト容器なども値上がりしていて、負担になっています」とのこと。原材料費の高騰は食材だけでなく、消耗品類にまで及んでいることがわかる。
■豚熱の影響で、輸入自体不可となった食材も
さらに佐々木氏は、「原材料費の値上がりではなく、イタリア産の生ハムやサラミなど、輸入できない食材も出てきている」と語る。これはイタリアで今年1月に発生が確認された、豚の伝染病、ASF(アフリカ豚熱)の影響によるものだ。
「日本で提供されている生ハムやサラミのほとんどはイタリア産なのですが、ASFの影響で日本はイタリア産の生ハムやサラミの輸入を停止しています。うちのお店で提供しているパンチェッタコッタも仕入れが止まってしまい、メニューから外さざるを得ませんでした」
業者側で日本国産や別の国の商品を提案してくれるケースもあるというが、生ハムやサラミなどはなかなか入手が難しいという。