飲食業界の現状と今後を知る。『HAJIME』米田肇シェフほか食団連メンバーが語ったこと

食団連専務理事の二之湯武史さん
原価に創造性を乗せた売価を設定すべき
コロナ収束後、業界としてどんな課題をどんな形で解決していくべきか。
「居酒屋は3掛け商売と言われてきました。原価率も人件費も3割。いつの間にか賃貸料も水道光熱費も高騰。経営者は数字と向き合わなければならないのですが、自社の経営のどこに問題があるのかをわかっていない経営者が多い気がします」(髙橋さん)
「値上げをしようと思っている声をよく聞きます」(米田さん)
「値上げという言葉はお客様からすると少しネガティブ。『適正価格に合わせる』という言い方にすべきではないでしょうか」(二之湯さん)
値上げという言葉に対し、会場内の会員から下記の意見が届いた。
〈値上げ=適正価格という考え方は正しい。価格からではなく、お客様が支払っていただける価格を正しく判断することが大事だと思いますが、値付け、価値の考え方、方法を教えて頂けませんか?〉
その質問に対し、米田さんがニンジンを例に回答した。
「原価に創造性をいくら乗せられるかを考えています。ニンジンが1本100円として、その3倍が売値だという考え方はおかしいと思います」
居酒屋では適正価格という言葉を使おうと会員にアピールしている。
「でも、原価3割の呪縛から解かれずにいます。自分の腕では、自分の店では、原価に創造性を乗せられないと諦めているのかもしれません」(髙橋さん)

食団連理事兼事務局長の髙橋英樹さん(夢笛代表)
全業態が同じ税率はおかしい。産業別税制を提案すべき
誇りを抱き、仕事をしてきたと佐藤さんは説く。
「米田さんのようなスターシェフもいますが、もう少し普通に頑張ろうという若者に夢を見せてあげられない。『好きな仕事をしているのだから長時間労働を我慢しろ』は通じない。報われるためにも収益構造を変えるべきではないか」
この業界に構造的な問題があるのではと米田さんは問う。
「飲食業は人を雇い、教育し、共に成長していく産業。にも関わらず、すべての業態が同じ税率です。産業別税制を提言したい」(米田さん)
ゆくゆくは飲食業もロボットを導入し、労働者を切ることになるのか。いまが転換期。それを発信できるのが飲食業だと米田さんは力説する。
「まさにいまが転換期。食団連として飲食業の問題を解決するだけでなく、社会問題を解決するというぐらい広い視野で望むべき」(髙橋さん)

食団連理事の米田肇さん(レストラン『HAJIME』オーナーシェフ)
人材教育の予算を政府が負担してほしい
労働力確保に関する意見も出た。
〈求人が厳しくなるので、早く外国人労働者の入国、雇用緩和をお願いしたい〉
日本の料理專門学校で学んだ外国人は2年間、その後、最大5年間延長し日本で働くことができる。その制度を知らない飲食店経営者が意外と多い。そういう制度があることも発信していきたいと二之湯さんは述べた。
「外国人の料理人には、ほかの業界のように技能実習や専門職として一生日本にいる在留資格はありません。これも是正していきたい」
人材教育に伴う予算に関する意見も提案された。
〈政府からサービス業への人材教育の予算も出してもらいたい〉
「日本の産業政策は製造業に偏っています。製造業であればデジタル人材に補助金が出るが、サービス産業の人材育成に対する認識はない。そういうところにもサービス業の存在感の薄さが出ているのではないか」(二之湯さん)
「料理人の修業時間も現在の経営ではカバーできません。産業別税制を導入し、人件費の比率が高い飲食業は税制を緩和してほしい」(米田さん)
「製造業と飲食業が同じ税制なのは不公平。ひと昔前ならそれはサービス産業の言い訳だと言われても仕方がなかった。でも、これだけ社会構造が変わったのだから政治も変わっていくべき。理論武装し、説得力を持つことも食団連の重要な役割」(二之湯さん)
