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あの『GEM by moto』の敏腕シェフが再始動。『ミズノトリ』流のペアリング思考に迫る

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『ミズノトリ』オーナーシェフ・深津麻紀さん

米と水という最も身近な二つの材料から、多種多彩な味が生み出される日本酒。その魅力を巧みに引き出してきた人気日本酒バー『GEM by moto』の料理長を経て、日本酒×和食のペアリングの店『ミズノトリ』のオーナーシェフとして新たな一歩を踏み出した深津麻紀さんに、ペアリングの考え方や日本酒の魅力、新店への意気込みを聞いた。

知るほどに日本酒は楽しい。原点の和食で再び挑む、日本酒ペアリング

東京・恵比寿で「日本酒ペアリングが楽しめる店」と聞けば、惜しまれつつも2022年秋に幕を下ろした『GEM by moto(ジェム バイ モト)』を思い起こす人も少なくないだろう。多くの食通・日本酒通たちを唸らせてきた人気店だったが、かつてのその場所に新たに暖簾を掲げた店もまた、一目置くべき存在となっている。『GEM by moto』の元料理長である深津麻紀(ふかつ・まき)さんがオーナーシェフを務める『ミズノトリ』だ。

『ミズノトリ』。まだ真新しい店先には新たなロゴも

「氵(みず)」の「酉(とり)」……、まさに「酒」を表す名が付けられたこの店は、日本酒×和食のペアリングをテーマに掲げる。

「日本酒は、基本的に米と水だけで造られるもの。なのに、蔵元や製造方法によってその味わいは無限に表現され、どれもが唯一無二です。こんなに奥深いものはありません。それを料理でどう活かし、またどう合わせれば料理がより活きるかを考えるのが、とにかく楽しい」

知れば知るほど日本酒が好きになると語る深津さんは、15年以上もの間、日本酒に深く携わってきた和食料理人。以前は「酒は料理に寄り添うもの」という考えが強かったと話す彼女にとって、『GEM by moto』でタッグを組んだ日本酒ソムリエ・千葉麻里絵さんとの出会いは一つの転機だったと振り返る。

千葉さんが選ぶラインナップから「単なる料理の引き立て役ではなく、それ一つで豊かな個性を持ち、驚くほど多彩な表情を持つ」という日本酒の新たな一面を見た深津さん。よりペアリングに重点を置くためにそれまでの“純”和食の枠を飛び出し、『GEM by moto』ではさまざまなエッセンスを自身の料理に盛り込んできた。

例えば「肉じゃが」は、ペースト状にしたじゃがいもにフライドオニオンや甘辛い牛肉を合わせ、口の中で肉じゃがの味を完成させるという独創的な一品。貴醸酒とペアリングすることで互いの香ばしさと甘みが引き立ち合い、より深みある味わいに変化するという。

深津さん自身はやわらかな味の日本酒が好みだそう

そんなペアリングの奥深さをより突き詰めたいと、再出発を決めた深津さんだが、ここ『ミズノトリ』では再び和食という枠の中で勝負しようとしている。これまで培った経験をもう一度和食に落とし込み、日本酒×和食でペアリングに挑戦しようというのだ。

「これほどまでに個性あふれる日本酒ですから、古典的な和食だけでペアリングを考えるのは確かに難しい。かといって、いろいろな香りや味を足しすぎると和食から外れてしまうので、何か一つ二つだけ繋ぎ役になる要素を加えることで、“多種多彩な日本酒に合う和食”ができれば」

新しい店に立つスタッフの中には、GEM時代の仲間も。しかし、決して前の店の第二幕ではないと深津さんは話す。

「日本酒と料理で、お客様を楽しませたい」——。『ミズノトリ』は、そんな一つのアイデンティティで繋がった同志と共に心機一転して挑む、新たな挑戦だ。

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山本愛理

ライター: 山本愛理

フリーライター・エディター。WEBを中心に食にまつわる記事を執筆。 昔ながらの喫茶店から星付きレストランまで、美味しいものを通して幸せな時間を提供してくれる人の声と熱を届けるのが好き。空いた時間はもっぱらカフェ巡り。