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豪徳寺で坪月商55万円を誇る『焼とりダービー』。地域を巻き込む福田氏の求心力

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『焼とりダービー』オーナー・福田侑樹氏

東京には下町風情を残す街が意外と多く存在する。世田谷区豪徳寺もまた、そんな地域コミュニティが根付くエリアのひとつだ。けっして巨大な商圏とはいえないが、福岡流焼き鳥店『焼とりダービー』は、わずか開業2年でリピーター率9割・坪月商55万円超を誇る繁盛店へと成長した。地元客の心と胃袋を掴むことで繁華街の人気店にも勝る売上をつくり出す、代表・福田侑樹氏の戦略に迫る。

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地域に根ざした普段使いできるうまい店。『焼とりダービー』こそ、自らが求めた場所

店があるのは駅から徒歩1分という、地元民たちが仕事終わりに立ち寄るにはもってこいの場所。一見、和モダンな落ち着いた店構えながら、店名や軒先に置かれたユーモアあふれる木像からは自然と親しみやすさがにじみ出ている。

店の前に飾られたオリジナルキャラクターの木像

『ダービー』の名は、店主・福田侑樹(ふくだ・ゆうき)氏の幼い頃のあだ名が由来だという。佐賀県・有田で生まれ、福岡の人気焼き鳥店『六角堂』で腕を磨き上京した福田氏。焼き鳥の激戦区・吉祥寺でさらに研鑽を積みながら、仕入れ業者や都内の市場の情報収集を進め、2020年に『焼とりダービー』をオープンさせた。

「当時34歳だった自分が『今、自分が行きたいと思う店』をかたちにしたのがこの店です。地域の人が、仕事帰りや休日など、週に何回でも気兼ねなく立ち寄れる、うまい店 ——。なかなかないんですよ、そういう“ちょうどいい距離感”の店って」

地鶏を扱う店の多くがオフィス街に集中し、コースでの提供やオーダー本数などに制限を設けている中、『焼とりダービー』では、一本一本炭火で焼くこだわりの串を、好きな部位、好きな本数から提供。価格も一本300円前後という設定だ。

目安の客単価は5,000円ほどに設定し、周辺住民が週に複数回来られるような価格帯を狙う

この気軽さが“地元客の普段使い店”として見事にハマったのだろう。全15席ながら平均日商は約15万円、連日開店と同時に続々とお客が訪れる人気店となった。豪徳寺に特別な縁があったわけではないという福田氏だが、確かな生活圏があるこの街なら、地域に根ざした店がつくれると確信していたと話す。

「うまい焼き鳥のつくり方に、絶対の方程式はない」

店の二枚看板を張るのは、銘柄鶏として名高い佐賀県産・みつせ鶏と長崎対馬地どりを使った焼き鳥。実際に提供する日から熟成させる期間を逆算し、生産者から直接丸鶏のまま仕入れている。捌き、串打ちなどの仕込みはもちろん、その日の肉のコンディションを見極めもっともいい状態に火を入れる焼き上げまで、美味しさへの妥協は一切ない。

食材は生産者から直接仕入れることで、コスト削減のほか、流通経路や保管状況が管理できるメリットも

「炭火なので火の様子も毎日変わるし、鶏にも必ず個体差があります。何年経験を積んでも、うまい焼き鳥のつくり方に絶対の方程式はない。だからこそ、その日その日、とにかく美味しいものを提供したいと思って焼く、それだけです」

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山本愛理

ライター: 山本愛理

フリーライター・エディター。WEBを中心に食にまつわる記事を執筆。 昔ながらの喫茶店から星付きレストランまで、美味しいものを通して幸せな時間を提供してくれる人の声と熱を届けるのが好き。空いた時間はもっぱらカフェ巡り。