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『青山ぼこい』が常連客に愛され続けるワケ。高級店が連なる表参道で“庶民派”を貫く

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フードメニューは日替り。刺身や焼き物は1,200~1,500円、一品料理は600~700円台を中心価格帯としている

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常連客の要望に合わせているうちにメニュー幅が広がった

『青山ぼこい』のフードメニューは50品前後をラインアップ。商品を特にカテゴリー分けしていないが、メニュー上段が割烹料理、下段右側がおばんざい、下段中央が居酒屋料理、下段左側が季節の野菜を使った料理といった形でメニュー配置がされている。

売れ筋1位はグルメ雑誌『dancyu』で「世界一」と賞賛された「ポテトサラダ」(660円)。ポテトサラダやおばんざい類は母・宏子氏のレシピを譲り受けている一方、かつらむきにした大根でマグロを巻いた「まぐろぬた」(980円)など秋男氏の調理の技が活かされた割烹料理をバランスよく混ぜ合わせている。

写真左が「ポテトサラダ」(660円)、右が「鳥立田揚げ」(960円)。メークインを用いた優しい味わいのポテトサラダは母・宏子氏から受け継いだレシピだという

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「40~50代男性はおばんざいや食材の旨味がシンプルに味わえる料理を好む傾向があります。一方、主婦の方が求められるのは『家で食べられないもの』。仕事帰りに軽く飲みたい方、ゆっくり料理とお酒を味わいたい方など、さまざまなお客様の要望に応えられるようにしているうちにメニューの幅が広がっていきました。商品数が増えしまったため、毎日、仕込みに追われていますよ」と秋男氏は笑う。

写真手前から、「まぐろぬた」(980円)、「とうもろこしの天ぷら」(760円)

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マイナス60℃の急速冷凍機で高品質と原価抑制を両立

メニューの幅が広がって大変なのは仕込みだけではなく、当然のようにロスコントロールも難しくなる。「居酒屋として手軽に利用できる店であり続けたい」(夏彦氏)という思いから、『青山ぼこい』は600~700円台を中心価格帯として値頃感を打ち出しており、原価も抑えなければならず、「そのために仕入れと保存に工夫しています」と秋男氏は説明する。

仕入先は秋男氏が日本料理店で修業していた時の先輩。豊洲で仲卸をしており、鮮魚を安く卸してもらう持ちつ持たれつの関係である。「時には小さな店では手に余るような分量の鮮魚を仕入れなくてはならないこともあります。そこをどうやりくりするか。それが知恵の絞りどころですね」と秋男氏は言う。

カウンターの上に備えつけられたショーケースにはおばんざいや旬の食材を陳列。ショーケースを見ながら商品を注文する常連客も多い

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そのために導入したのがマイナス60℃の急速冷凍機だ。

「急速冷凍機を導入したのは10年ほど前です。これによって品質向上と原価抑制を両立できるようになりました。たとえば、冷凍イカの目利きは難しいですが、鮮度が高い旬の生イカを仕入れ、それを下処理して冷凍しておけばクオリティが断然上がるわけです。メニューに刺身を常時5~6品ほど用意していますが、急速冷凍機がなければ品質を保ちながら、これだけの種類の刺身を置くのは難しいと思います」

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栗田利之

ライター: 栗田利之

フリーランスの記者として、15年以上にわたって外食経営誌の記事を執筆。大手、中堅の外食企業や話題の繁盛店などを取材してきた。埼玉県下を中心に店舗網を拡げている「ぎょうざの満洲」が贔屓の外食チェーン。