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坪月商50万円の下北沢『クオーレ・フォルテ』。イタリアワインに魅了された熱き男の店づくり

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オーナーの羽賀大輔氏

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イタリアワインをメインに据えた下北沢のバール『クオーレ・フォルテ』。今でこそ、下北沢は有名店が数多く集まるエリアだが、オープンした2010年当時はワイン不毛の地。しかし、同店は瞬く間に10坪22席が満席になる人気店となった。オーナーの羽賀大輔氏に、その店づくりについて取材した。

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ワイン不毛の地でバールを開業

大学時代、代官山のリストランテ『キアッケレ』でアルバイトを経験した羽賀氏。その後、一度サラリーマンになるが、『キアッケレ』で見出した飲食業の楽しさが忘れられず、表参道のリストランテ『フェリチタ』(いずれも現在閉店)でサービスマンとして従事。『キアッケレ』でも共に働いた名ソムリエの永島農氏の薫陶を受けた。

「今はモダンな料理やフュージョン系のお店が増えましたが、当時は都内でもキアッケレやフェリチタのようにトラディショナルな料理を出すイタリアンレストランが中心。かくいう私もこの世界に入って、現地の古い料理やワインの面白さに魅了されました。友人にもこの魅力を知ってもらいたいけれど、その頃は価格帯の高いリストランテばかりでなかなか誘いづらかった。それなら、カウンターで気軽に料理とワインが楽しめる店を作ろう、と考えました」

25歳で初めてイタリアを訪れた際、ワインが身近にある現地の食生活に触れたことも大きく影響しているという。

2010年、29歳で開業。新宿や渋谷、恵比寿などの飲み屋街でも物件を探したが、最終的に選んだのは下北沢の一番街商店街にある物件。カウンターを主体にした店を作りやすい、奥行きのある間取りが決め手だったが、当時、一番街商店街はシャッター街のような様相で、特に夜は活気がないエリア。だがそれゆえ家賃が安く、固定費を抑えたいという考えもあって決めた。

「普段から下北沢で飲んでいる人は、よその街には行かずに下北沢一帯で何軒かを飲み歩く人がほとんど。周りの知人からはこんな場所で大丈夫なのかと心配されましたが、そのコミュニティの中にいったん入ってしまえば、行きつけのうちの1軒として長く通っていただけるはずだと発想を変えました」

カウンターには8メートルのブビンガの一枚板を使用

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イタリアワインへの熱量が、お客の心を惹きつける

開業後、徐々に評判を呼ぶようになったのが、羽賀氏が熱量を込めてサーブするワインだ。味で好きになってもらうよりも、自分が魅了されたイタリアワインの文化や生産者の魅力を知ってもらいたい、と当初からマニアックなビオワインをグラスで提供。面白いワインが飲めると、口コミが広まった。

『フェリチタ』で働いていた頃に飲んだ、とある生産者のビオワインに衝撃を受けて以来、年1回はイタリアへ足を運んでいる羽賀氏。現地で撮影した写真を見せながら語る熱い思いがお客に伝わり、今もイタリアワインのファンが増えている。

グラスワインは20種類のラインナップで、価格帯は1,000〜1,700円。ボトルは7,000〜9,000円台を中心に450種類ある。現在はイタリア産が9割で、その他にスペインやフランス産なども用意している。

「最近は安価でワインが飲める店も多く、それに比べると当店のワインは高いと思われるかもしれません。ですが、店のほとんどのワインは生産者と直接会って仕入れたものですし、なかには来店してくれた生産者もいて、それだけ思い入れが強い。決して安売りはしたくないですし、スタッフやサービス、設備にも還元するため、適正価格で設定しています」

グラスワインのリストは紙だと場所を取るので、画像データにしてAirDropでお客のスマートフォンへ直接共有。スマートフォンならほとんどの人が常に卓上に置いているし、帰宅後も画像で見返すことができるため、気に入ったワインの名をすぐに覚えられるというお客にとっての利点もある。

AirDropで共有するワインリスト。簡単なコメントは記載しているが、スタッフが丁寧に説明する

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難波美枝

ライター: 難波美枝

ライター・エディター。プロ向けのフランス料理専門誌の編集部におよそ10年在籍した後、フリーランスに。料理雑誌やワイン専門誌、Webなどで星つきレストランからビストロ、バルまで、幅広く取材。