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「THINK ME」で語られた女性パティシエの現実。女性が飲食業界で長く働くには何が必要か

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トークセッションでみずからの経験を話す先輩パティシエたち

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【トークセッションの内容】
①女性パティシエのリアルと目指すべき理想像
②根本的な洋菓子界の課題とこれからすべきアクション
③女性の職人が幸せに働ける社会にするためには?

イベントは、先輩パティシエたちによる上記3つのトークセッションののち、それらのトークをふまえて参加者全員が各テーブルごとに意見を述べ合うという順序で行われた。

子育てしながらどう働くか

最も関心が高かったテーマは、結婚・出産・子育てという人生のライフイベントと働き続けることの両立だ。トークセッションでは、さまざまな困難を乗り越えた先輩パティシエたちの体験が披露された。

「妊娠がわかったのは、店舗の物件を契約した直後でした」

壇上に上がった先輩パティシエ(ファシリテーター)のひとり、延命寺美也さんの最初の妊娠がわかったのは、店舗の物件を契約し、ソムリエである夫の信一さんとともにこれから二人で頑張っていこうと誓い合っていた矢先だった。延命寺さんは、表参道で2019年からアシェット(皿盛り)デセールとワインの店『エンメ』を経営している。

最初は、妊娠を「素直に喜べなかった」という延命寺さんは、店づくりを進めるうちに「お店をやりながら子育てもできるように働き方を変えよう」と考えを変え、昼はデザート、夜はワインバー兼レストランを営業、自分がいなくてもお店が回る仕組みを工夫した。

自らのために工夫した店づくりは、今はスタッフの産休・育休にも生かされ、育休中のスタッフには空いている時間にメール返信や焼き菓子のシール作りのような事務仕事を依頼するなど、働きやすい店舗づくりを模索している。

出産の時期は選べない。その前後は仕事から離れなければならないのに、勤務先に産休・育休の制度がないところも多い。突然起きる人生を左右するイベントに、特に女性は否応なく向き合わざるをえないのが現実だ。

トークセッションでは、事前に寄せられたアンケート回答をもとに、先輩パティシエたちがさまざまな自らの経験を披露した。

■収入面・労働環境面の不安
・男性のようにずっと働いていけるか不安です
・ライフステージの変化に合わせて仕事スタイルを変えて、パティシエという仕事を続けられるか
・労働時間が長く、給料形態が不透明

■結婚・出産・子育て面の不安
・職場で男尊女卑を感じる。妊婦に対しての理解が少ない
・産休育休、時短勤務の制度がなく、退職せざるを得なかった
・今後パティシエと子育てを続けるには体力的にも独立しか現実的でないことが多いが、実際独立して両立できるか不安

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うずら

ライター: うずら

レストランジャーナリスト。出版社勤務のかたわらアジアやヨーロッパなど海外のレストランを訪問。ブログ「モダスパ+plus」ではそのときの報告や「ミシュラン」「ゴ・エ・ミヨ」などの解説記事を執筆。Instagram(@photo_cuisinier)では、シェフなど飲食に携わる人のポートレートを撮影している。