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「THINK ME」で語られた女性パティシエの現実。女性が飲食業界で長く働くには何が必要か

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トークセッションに参加した、先輩パティシエほかファシリテーターたち

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「漠然とした不安」を取り除くには

「ここにいていいのか、自分が邪魔ものになってしまうのではないかという漠然とした不安があります」

イベント後半、各テーブルで参加者が意見を述べ合うテーブルトークで多く出たのが、漠然とした将来への不安感だ。上の世代に目指すべきロールモデルがいないことや、女性の働き方への職場の理解の薄さが、働く若い人たちの日々の不安感につながっている。

それを解決するひとつとして、セッションの際に何人かが話されていたのが「対話すること」。

女性パティシエのロールモデルがまだ少ない現在では、経営側も産休や育休を具体的にどう運用していくか手探りのことも多い。そういう場合に、どのような働き方なら残れるのかを上司と一対一で話してみると、何か突破口がある可能性もある。実際にそういう話し合いを申し出たスタッフの例も会場では紹介された。

イベントを終えて、加藤さんに感想を聞いた。

「これまで注目されてこなかった、社会で蓋をされてきた問題点が今日はたくさんあがりました。皆さんの『この現状を変えたい』という思いを強く感じました。これらを解決するにはひとりでは難しいですが、力での支配ではなく対話でつながることで、これらの問題が多くの人の『自分ごと』となってくれればと思います。

日本の女性たちが職人として働き続けるためには、女性に限らず、職人技術や仕事の価値向上が必要だと思います。現場主体でリモートでは働けないジャンルの職業には、行政や国からの何かしらの援助や、税優遇などの制度が必要とされるのがこれからの在り方かもしれないと思っています」

主催者側はこのイベントを契機に、今後何らかのコミュニティや活動ができないかを模索していくという。

今回のイベントは女性パティシエの生き方を焦点に当てたものだったが、働きやすい職場は、女性だけでなく、さまざまな特性を持つ人々に働く可能性を開くものだ。これまでの働き方を一歩踏み出すパティシエが増えれば、その数だけ新しいスイーツの可能性も広がっていくはずだ。

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うずら

ライター: うずら

レストランジャーナリスト。出版社勤務のかたわらアジアやヨーロッパなど海外のレストランを訪問。ブログ「モダスパ+plus」ではそのときの報告や「ミシュラン」「ゴ・エ・ミヨ」などの解説記事を執筆。Instagram(@photo_cuisinier)では、シェフなど飲食に携わる人のポートレートを撮影している。