月商500万円、営業利益率は驚異の30%! 中目黒『kosamme』の高収益モデルをひも解く
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物件の判断から業態開発までを店長に任せる
志成NEXTの事業展開で注目されるのが、業態開発を含めて店長に経営判断の権限を大きく委ねる方針を採っていることだ。
『kosamme』の店長を務める横田奈央氏は前職の外食企業で新店の立ち上げを経験。志成NEXTに入社した後は『amme』の店長として大幅な売上アップを果たしたすご腕だが、『kosamme』は現物件の可否を判断するところから業態づくりまで一任されたという。
「横田は独立意欲が高く、ゼロから業態づくりをした経験は独り立ちしてからも必ず役立つはずだと考えました」と語る佐藤氏。それに対して、横田氏は「できれば10坪程度のこぢんまりした店をやりたかったのですが、その倍サイズの20坪の物件。強豪がひしめく中目黒の路地裏、空中階ですから、正直なところ『厳しい』というのが物件を見た第一印象でした。でも難題だからこそ、得るものも大きいと考え、思い切ってチャレンジすることにしました」と答えた。
メインターゲットは30~50代の女性。「少量、多品種、高品質な料理を求める女性のお客様の声が『amme』でも多かったんですね。たしかに女性視点に立って開発された居酒屋は意外と少ないですから、そのニーズを掘り起こすことが差別化につながると考えました」と横田氏は業態開発のポイントを説明する。
メニュー考案は店長。商品名と値付けのみ佐藤社長が決める
フードは「旬のおばんざい盛り合わせ5品」(1人前980円)を名物メニューに掲げ、とりあえず4品、逸品9品、土鍋ごはん2品、しゃぶしゃぶ1品、デザート1品の5カテゴリー計18品をラインアップ。「旬のおばんざい盛り合わせ5品」には、少量、多品種、高品質という横田氏の狙いが反映されている。「料理そのものはオーソドックスなおばんざいのイメージとはだいぶ異なります」と横田氏はその商品特性について説明する。
『kosamme』のフード、ドリンクは横田氏がメニュー組みから考案しているが、値付けとネーミングについては佐藤氏が決めている。「僕が得意なのはマーケティング。料理の知識は乏しいですが、その商品がどんなネーミングであればお客様の目を引き、いくらなら売れるかということを調査、分析する方法を営業マン時代に学んでいましたから、そのノウハウを活用しているわけです」(佐藤氏)
たとえば「旬のおばんざい盛り合わせ5品」については横田氏の草案では「豆皿料理」と表現していた。刺身、肉料理、野菜料理、珍味が盛られた豆皿の盛合せメニューだったが、「豆皿の盛合せだと料理がイメージしにくく、といっても前菜盛合せだとオリジナル性を感じられない。おばんざいというと煮物が多いのですが、その語源まで調べてみると、とくに煮物に限定して用いられる言葉ではないことがわかったため、料理のイメージが伝わりやすいおばんざい盛り合わせという商品名にしました」という佐藤氏。つまり、お客の興味を引くには、ある種の“わかりやすさ”が鍵になるのだろう。
一方、980円という値付けについては近隣の居酒屋やバル・バールなどの前菜盛り合わせの価格をリサーチ。「割高感が出ないようにするため、各店の前菜盛りの価格の中央値を基準に値決めしました」と言う。
また、逸品カテゴリーの売れ筋は「kosamme式!モンブランポテサラ」(780円)。お客の目の前でジャーマンポテトの上にマッシュポテトを絞って料理を完成させるのだが、これはモンブランケーキのマロンクリームをつくる電動絞り機から発想を得て、横田氏が考案したアイデアメニューだ。
「ポテサラ780円は居酒屋の相場としてはやや高めといえますが、その価格でもお客様に価値を感じていただけるようにすることが腕の見せどころ。原価に頼らず、商品価値を高めるための工夫に知恵を絞ることがメニュー戦略の基本方針です」(佐藤氏)
しゃぶしゃぶ、土鍋ごはんは『amme』、『sqall』でも提供している売れ筋のメニューカテゴリーだが、この2品も卓上で料理を仕上げるという点ではモンブランポテサラと共通する。
「ブランドもち豚の梅つゆしゃぶ」(1人前1,280円)は雑炊で締めるのがお決まり。8月に投入されたばかりの「なまらいくら土鍋MAX」(6,600円)はお客の目の前で炊きたてのごはんの上にたっぷりのイクラを盛り付けている。シズル感があり、ボリュームもあるため、単価を上げやすく、しかも調理負荷が軽いため、生産性アップに大きく貢献するメニューになるわけだ。
