東京都「カスハラ防止条例」が2025年4月に施行。他の自治体や大手外食チェーンの方針は?
ここ数年で広く社会に知られるようになったカスタマーハラスメント、いわゆる”カスハラ”。厚生労働省の調査によると、不当な要求や迷惑行為を繰り返すといったカスハラを行う客は、近年増加傾向にあるとみられている。同省は、2022年に防止策として「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」を作成。そのほか、労働組合も同じようにカスハラ防止のためのマニュアルを作成するなど、公的機関もカスハラを問題視している。
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東京で「カスハラ防止条例」が来春施行。三重・桑名では実名公表も検討
カスハラを規制する法律は、2024年12月現在はまだ存在していない。そんな中、東京都では今年10月に全国初となる「カスタマーハラスメント防止条例案」の採決が行われ、全会一致で可決・成立。来年4月から施行される。
この条例では、カスタマーハラスメントを「客から就業者に対しその業務に関して行われる著しい迷惑行為で、就業環境を害するもの」とし、「何人も、あらゆる場において、カスタマーハラスメントを行ってはならない」と、カスタマーハラスメントの禁止を規定している。
また、都と事業者がカスタマーハラスメントの防止に関する施策を実施する責務についても明記している点もポイントだ。一方で「顧客等の権利を不当に侵害しないように留意する」といった内容も定めている。条例に罰則などはない。
同様の動きは、他の自治体でもみられる。11月には、北海道でも同様の条例が成立した。東京都の条例と同じく、来年4月に施行される予定で、罰則はない。
一方、三重県桑名市では、迷惑行為を行った客の氏名を公表する制裁措置が盛り込まれた条例案が12月の議会に提出された。カスタマーハラスメントと認定された事案に対して、市は行為者に警告し、従わなければ委員会の意見聴取などを経て、氏名公表に踏み切るとしている。こちらも来年4月の施行を目指している。可決されれば、市町村でのカスタマーハラスメント防止条例、および制裁処置が盛り込まれた同条例は全国初となる。
すかいらーくホールディングスはじめ、大手外食チェーンも防止に取り組む
自治体だけではない。法律や条例の整備に先駆けて、業界問わずさまざまな企業がカスタマーハラスメント防止に取り組んでいる。飲食業界では今秋、大手外食チェーンの松屋フーズ、ファミリーレストラン「デニーズ」を運営するセブン&アイ・フードシステムズ、すかいらーくホールディングスが、カスタマーハラスメントに関する行動指針を発表した。
いずれも威圧的な言動や暴行、不合理な要求、差別発言のほか、SNSでの誹謗中傷などをカスタマーハラスメントと定めた。対策として、社内に相談窓口を設置するほか、社員向けに対処法の周知・研修などを行う。解決が難しい場合は、入店拒否や接客対応の中止なども行い、必要によっては警察や弁護士と連携するなどの対処をしていく。
「カスハラとは無縁だ」という飲食店は、まれだろう。サービス業界では近年の人手不足の影響もあり、顧客満足度のみならず、従業員満足度の向上に注力する企業も増えている。従業員が安心して働ける環境作りの一環としても、カスタマーハラスメント防止策をとりまとめ、周知するのは効果的な取り組みと言えるだろう。
