20~30代女性客が急増中の学芸大学『クワン』。ロスを抑えた“原価3割以下”の日常ビストロ
繁盛ビストロで学んだ「ロスを出さない」メニュー設計
「『ビストロシン』は、客として通っていてすごく好きな店でした。自分でやるなら、レストランよりも小料理屋的なフランクな店にしたかったので、しんさん(現『ビストロシン・サンテ』オーナー、高野信也氏)には多くのことを教えてもらいました」と岩田氏。特に学びが大きかったと岩田氏が語るのが、ジャンルレスなメニューづくりの発想と、利益を生むためのロジックだ。
「私のベースはイタリアンですが、お客様が喜んでくれるなら何でもありなんだなと柔軟に考えられるようになりました。それに『シン』では、食材ロスは出さないのが大前提。うちとは比較にならないほどメニュー数が多かったですが、食材をうまく振り分けて本来ロスになってしまう食材を使いきるというやり方がすごく勉強になりました」
例えば『クワン』では、肉のグランドメニューは「牛肉のカツレツ」や「牛肉のタリアータ」など4品を揃えるが、これらは同じ部位で調理法を変えたもの。「3種の葉っぱサラダ」は、3サイズで展開するほか1種類ずつ「葉っぱ」としても提供するといった具合に、お客の選択肢を増やしている。
得意分野は、パスタとリゾット。手づくりを徹底し商品価値を高める
また、グランドメニューで目を引くのが「ライス」と「パスタ」メニューの多さ。『ビストロシン』の人気メニューを受け継いだ「ブラックパルミジャーノリゾット」など、全19品を揃える。
「パスタとリゾットは得意分野なので応用がききますし、オーダー後のオペレーションも軽い」と岩田氏。その一方で「一番手間がかかる」という専門店仕込みの手打ちパスタも揃え、リゾットは生米から炊くなど、手づくりを徹底しているのもこだわりだ。人気の前菜盛り合わせでは、自家製ハムや魚介のフリット、ジャガイモのグラタンなど手間をかけた品を盛り込み、1,450円で提供している。
「仕入れは一般的な業者からで、そこにアドバンテージはないと思うので、盛り付けの工夫や味づくりの部分でいかに商品価値を高めるか、常に意識しています。料理が好き、という思いが根底にあるので、ソースやドレッシングも既製品はいっさい使いません。仕込みの負担は大きいですが、それが付加価値や差別化に繋がっていると思います」
キッチンは、岩田氏と社員2名の3人体制。小さな店だが社員比率が高いのも、『ビストロシン』での経験から得たことだという。
