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“トランプ関税”は飲食業をどう変える? 経済アナリスト・森永康平氏が語る、個人店の生存戦略

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「個人で運営する飲食店にもDXの導入をおすすめしたい」と森永氏

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個人経営の飲食業こそDX促進を。人手依存からの脱却カギを握る

――具体的に、今すぐできる対策というとどんなものがありますか?

「トランプ政権の動きは読めないので、何かしら悪い影響があることも前提にしておく必要があるでしょう。

また、国内に目を向けると石破政権は2030年までに最低賃金を1,500円まで引き上げることを目標としています。一見、これは良いことのように思われるかもしれませんが、逆算すると、あと5年で最低賃金を1,500円まで引き上げる場合、年間7.3%のペースで上げなければならない。これは10年間続けていたら最低賃金が倍になるほどの上げ幅で、実際にこのペースで賃金を上げた場合、個人運営の飲食店を含め、倒産に追い込まれる中小企業が続出するでしょう。多くの場合、飲食店はアルバイト、パートスタッフに支えられていますから、物価や人件費の上昇によるあおりを大きく受けるはずです。

そこで、私は『なるべく人に依存しない』ことをおすすめしたいです。いわゆるDX(デジタルトランスフォーメーション)やAIの活用ですね。

日本の労働人口を見てみると、1998年頃から減り続けています。ところが、“人手不足”が問題視されるようになったのは、ここ数年のことですよね。女性の社会進出や定年の引き上げ、高齢者の就業率の上昇などが人手不足を補っていたのですが、それでも追いつかなくなってきているのが現状です。であれば、人に頼らずに済む方法にシフトチェンジをするしかない。なかには、『DXやAIは大企業が取り入れるものだ』という考えの方もいますが、大企業には資本がありますから、DXやAIに頼らなくても人材を確保することができるわけです」

――確かに、工夫次第で人を雇わずに店を切り盛りすることが可能な時代になってきましたね。

「これはある飲食店の事例ですが、その店は基本的に接客を行っていません。お客は自分で空いている席に着き、卓上のQRコードを読み込んで注文します。料理ができるとスマホに通知が届き、キッチンへ取りに行く。レジももちろん無人です。2人程度でキッチンを回しながら、ホールとデリバリーに対応しています。

もちろん、お客様との距離の近さやコミュニケーションを大切にしているお店もたくさんありますし、それを否定したいわけではありません。この飲食店のように、固定費を下げれば下げるほど、消費者の体験価値は下がります。その分、多少金額を高く設定してもホスピタリティの高いお店を選びたいという人も出てくるでしょう。

これまでの日本は“一億総中流社会”といわれ、それなりの値段で、それなりに良いものを提供する企業が成長してきましたが、今後は『価格が安くてサービスも簡素な店』と『高級で手厚くおもてなしをしてくれる店』の大きく二つに分かれるかもしれません」

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河西みのり

ライター: 河西みのり

フリーランスで活動するライター&インタビュアー。現在はソーシャルメディアや業界紙など多岐に渡り執筆。飲食店取材からレシピ本の編集、お取り寄せカタログのコピーまで“食”にまつわる分野を得意とする。