清澄白河の人気ワインバー『ガゼボ』。ムーブメントを牽引したのは“来店を断る勇気”
「お客さんはワインを飲める方のみ」という明確なルールづくり
現在、『ガゼボ』は「ワインバー」であることを徹底し、店頭に掲げた黒板メニューやInstagramに、「当店はワインバーです。ワインを飲める方のみのご来店でお願いしてます」といった一文を明記して、明確なルールを設けている。ドリンクメニューにもソフトドリンクは書かれていない。
「私自身もワインが大好きで、ワイン好きのすそ野を広げたい、底上げしたいと思ってこのお店のコンセプトを決めました。オープン当初は、ワインのオーダーが必須であるということはどこにも明記していなかったので、もともとお酒を飲まない方や車で来たので飲めないというお客さまも多くいらっしゃっていたんです。でも、そういった方々にはお店の趣旨を説明して、お断りしていました。中にはお気を悪くされた方もいらっしゃいましたが、コーヒーの街としてここまでイメージが定着していた清澄白河でワインバーとして認知してもらうには、それくらい徹底しないとだめだと思いました」と新宮さんは振り返る。
一見するとおしゃれなカフェのような雰囲気を持つ『ガゼボ』。実際に「夜カフェ」としてお茶を飲める店だと思って入店してくるお客もいるという。
良い口コミも悪い口コミもどちらも見ないという選択
「数え切れないほどの飲食店の中で、『ガゼボ』を選んでくださったお客さまをお断りするのは、本当に申し訳ないと思っています。でもすべて受け入れてしまうと、数年後にはきっとカフェのようなビストロのような、中途半端なお店になってしまうと思ったからです。初めの1~2年は精神的に辛いこともありました。大変でしたが、『ワインバー』であることだけは、自分自身で守っていこうと決めていました」と新宮さんは続けた。
中には飲食店の口コミサイトやSNSなどに一方的な批判や心ない書き込みをする人もいて、目にすると嫌な思いをすることも多かった。最初は口コミに返信したりと対応していたが、ある時から良い口コミも悪い口コミもどちらも見ることをやめたという。
周りの声は気にしないように努め、ワインを飲みたいと来店してくれたお客に丁寧に向き合い、楽しんでもらうことに専念した。そのうちに徐々に常連客も増えはじめ、新宮さんのワインセレクトを楽しんでくれるお客も増えていったという。
お客の求めるものを提供し、完成されていく店もあるが、『ガゼボ』のように自らが決めたイメージやコンセプトを貫き、環境や流行に流されずに経営していく店もある。そのために、わざわざ足を運んでくれたお客に趣旨を説明し、お断りすることはそう簡単にできることではない。それは決しておごりなどではなく、自分の信念に素直に従った結果だった。うわべだけの接客ではない、新宮さんの経営者としての覚悟の表れだったのだろう。





