月商400万円の学芸大学『nicome』。空中階でも客を呼ぶ「SNS戦略」と「バズ料理の作り方」
酒場のトレンドエリア、学芸大学。ベッドタウンでありながら、駅前商店街を中心に良質な店が林立し、コロナ禍以降、急激な盛り上がりを見せている。その激戦区の中で人気上昇中なのが、『学大居酒屋 nicome(ニコメ)』である。
場所は学芸大学駅から徒歩1分。抜群の好立地かと思いきや、東口商店街から一歩入った人通りの少ない路地裏で営む。しかも根城はビル2階と視認性が悪い……。不利な立地条件の中、売上は2年前の開店当初に比べ、約2倍の月商400万円へ。週末の回転率は3回(28席)に届くという。一体、路地裏かつ空中階の店で、どのように集客を図っているのか。32歳の若き経営者、吉村光平氏に話を聞いた。
学大のカジュアル居酒屋需要を反映し業態変更
店がある路地裏は、東口商店街の喧騒とは打って変わって静かだ。住宅地へと続く100mほどの通りに飲食店は、『nicome』を含めて2軒しかない。さらに空中階であればフリー客のウォークインは困難だろう。そもそもなぜこの飲食店泣かせの物件を選んだのだろうか。そう聞くと、吉村氏は苦笑いを浮かべながら話し始めた。
「学大に絞って物件を探していたんですけど、路面店は3、4店舗ほど立て続けに(審査で)落ちちゃって……。開店したいタイミングで応募しても、10社ぐらいの競合がいますから。なので“妥協の”空中階です。ここは3か月ぐらい空き家状態でした。人があまり歩かない通りに面し、新しい建物(2021年施工)で賃料が高い(月48万円)のが、その理由かと。けれどこれ以上待っていたら、いつ営業できるか分からないし、『(商売は)やり方次第だよな』と自分に言い聞かせ、契約しました」
そして晴れて2023年10月にオープンを迎えたが……。
「案の定、最初はしんどかったです。空中階の営業も初めてでしたが、こんなにもフリー客が来ないのかと実感して。最初の売上は月商200万円ちょっととかです。どうやって集客すればいいのか、いろいろ考えました」と吉村氏は静かに話す。
その打開策として、まずはコンセプトの見直しを図った。最初はイタリアン主体のレストラン寄りの酒場だったが、利用シーンを選ばないカジュアルな居酒屋へ切り替えることに。それに伴い、料理も少量多品目のジャンルレスな創作系へとシフト。おばんざいとブルスケッタの両方を取り入れたのも、その表れだ。
背景には、吉村氏が学芸大学で仕事をしていく中で感じた気づきがある。学大の圧倒的な居酒屋需要の高さと、カジュアルにハシゴするお客が多い傾向を肌感覚で知ったのだ。



