飲食店の二重価格は是か非か。ラーメン店の騒動に学ぶ、景表法違反やトラブルを防ぐ3つの注意点
訪日外国人観光客の増加を背景に、飲食店でもインバウンド向けの価格設定を検討する動きが広がっている。一方で、その設計や伝え方を誤ると、思わぬトラブルを招きかねない。大阪のラーメン店で起きた「二重価格」を巡る騒動は、その難しさを象徴する事例と言えそうだ。
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なぜトラブルに? 大阪の事例から見る「説明不足」のリスク
2026年1月、大阪・難波のラーメン店が、訪日外国人観光客と日本人で価格を分ける「二重価格」を導入し、トラブルとなった(参照1)。券売機で表示言語を日本語から英語に切り替えると、ラーメン1杯の価格が約1,000円から約2,000円になる仕組みだ。
店側は、高価格の英語メニューについて、訪日客向けに具材や味付けを変えた特別仕様だと説明している。一方、食後に価格差に気付いた外国人客が内容の違いに納得できず、返金を求めて口論に発展。警察への通報を示唆する事態となり、SNS上でも大きな議論を呼んでいる。
背景として考えられるのは、価格差の理由や提供内容の違いが十分に伝わっていなかった点だろう。券売機上では英語メニューが単なる翻訳のように見え、「同じ商品なのに高い料金を請求された」と受け取られても不思議ではない。提供内容が異なる場合でも、その違いを写真などで明確に示さなければ、不信感や誤解を招きかねないはずだ。さらに表示方法次第では、景品表示法上の「有利誤認」と判断されるリスクも潜んでいる(参照2)。
二重価格の難しさは、このラーメン店に限った話ではない。世界遺産・姫路城でも、訪日客のみ料金を引き上げる案が検討されたが、運用の難しさから慎重な議論が続いた経緯がある。価格に差を設ける場合、運用と説明の設計を丁寧に行わなければ、混乱を招きやすいことがうかがえる。
価格設定は「上乗せ」より「割引」が推奨される理由。トラブル回避3つの注意点
今回の騒動から見えてくるのは、価格設定をどうすべきだったかという問いだ。併せてトラブルを防ぐためには、以下のような点に注意が必要だったといえる。
注意点①:「割引」で心理的・法的なハードルを下げる
一つの方策として、「外国人割増」ではなく「特定層への割引」という考え方がある。すべてのお客に共通の価格を設定し、日本在住者や地元客に対して割引を行う「居住者割引」であれば、「地元・常連客への還元」というポジティブな理由付けができ、心理的な抵抗やトラブルを抑えやすいのではないだろうか。また、法的な価格表示の整合性も保ちやすくなるだろう。
注意点②:「事前の承諾」を得るためのオペレーションを徹底する
割引方式はサービスの一環として説明しやすく、差別的との批判を受けにくい利点がある。また、サービスを受ける側が自主的に身分証を提示することを条件とすれば、店側がお客の属性を判断する必要もなく、現場での摩擦を減らすことにもつながる。また、割引基準を国籍ではなく「居住」に置くことで、日本在住の外国人も公平に扱える点は、経営上の重要な視点となりそうだ。
注意点③: 「価格差の根拠」を明確にし、内容の違いを可視化する
価格差を設ける場合には、料金だけでなく内容面での違いを明確に示すことも欠かせない。特別メニューや多言語対応など、価格に見合うサービスを用意し、事前に分かりやすく伝えることで、利用者の納得感は高まるはずだ。
インバウンド需要を取り込むうえで、二重価格は一つの選択肢と言える。受け止められ方を左右するのは、その設計と情報の伝え方なのだろう。透明性と公平性を意識した価格設定こそが、安定した運用につながっていくのかもしれない。










