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三軒茶屋『cafe The SUN LIVES HERE』、年間20万個売る「チルク」と貫くカフェの誇り

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2022年に改装された本店。系列店同様、設計はCANOMA、店舗施工はComisenに依頼した

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異なるコンセプトで、街の回遊性を高める三軒茶屋でのドミナント戦略

SOMEWHEREの店舗展開は、すべて三軒茶屋エリアに集中している。キャロットタワー店を除けば、路地裏の本店、世田谷公園横、若林寄りの駒留通り沿いと駅から徒歩10分ほど離れている。

一見バラバラに見えるが、これらは緻密に計算された「客層の循環」を生み出す。2021年にオープンした世田谷公園隣接の『PARK STORE』では、公園体験という文脈に合わせたドーナツを提案する。当初はヘルシー志向の需要や、揚げたての即食を想定していたが、客が自宅へ持ち帰る行動を見てすぐに変更。翌日でもおいしく食べられてご褒美感のある、フカフカ食感でボリューム感のあるイタリアのドーナツ「ボンボローニ」へと大胆に切り替えた。

「大手チェーンの良さはどこでも同じ味がある安心感ですが、ローカル店の良さはそこにしかない希少性です。店舗ごとに異なる体験とラインアップを用意することで、街の中での回遊性を高めたい。三茶という街を、1日中楽しめる場所にリノベーションしていく感覚です」

国産のマスカルポーネと十勝産クリームチーズ、ビスキュイで構成された「飲むティラミス」(980円)。特製ミルククリームをかけていただく動画撮影必至の一品だ

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さらに2024年、街のシンボルであるキャロットタワーへの出店は、ブランドにとって大きな転換点となった。SNSやマスメディアで全国的な知名度を得ていた同社だが、意外にも地元の中高年層への認知が不足しているという課題を抱えていたからだ。

「三軒茶屋は23区内でも高齢者人口が多い街。SNSだけではリーチできない層に知ってもらうため、あえて駅直結の一等地を『地域認知のハブ』として活用しました。電柱広告や近隣広告と連動させ、1年かけてようやく地元のお客さまに『あの店ね』と認識してもらえるようになりました。これは単なる売上以上の、街に根を張るための投資です」

パティスリーでも量販工場でもない、カフェの感性と手仕事が宿る「クラフトカフェスイーツ」を相良氏は提唱する

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IT業界出身者が持ち込む「デザイン経営」と「AIドリブン」

相良氏の経歴は異色だ。新卒でIT企業に入社し、プログラミングや事業運営を学んだ後、未経験で飲食の世界に飛び込んだ。この「アナログな飲食」と「デジタルの思考」の融合が、SOMEWHEREの独自性を形作っている。

「IT業界を選んだのは、若くして独立のための資金を貯めるため、そして差別化を図るためでした。独学で始めたからこそ、既存のパティスリーの常識に縛られない商品開発ができたと思っています。例えば、ケーキ屋さんで熟練の職人が1年に50回作るチーズケーキを、うちはチーズケーキだけに特化して1,000回以上作り続ける。その圧倒的な試行回数が品質を磨き上げるという考え方は、合理的だと思っています」

また、同社はSNS黎明期からビジュアル重視の自走型マーケティングを展開してきた。当初は画像戦略で世界観を伝え、現在は動画戦略へとアップデートを続けている。その視線はさらに先を見据え、現在は「AIドリブンな会社」への変革を掲げ、スイーツ×テクノロジーによる圧倒的な差別化を目論んでいる。

自然な経年変化が感じられるよう端を柔らかい曲線に削り出した木工造作、厚手の黄色いファブリックのベンチ、大理石を落とし込んだカウンターを取り入れた

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一方で、店舗の空間づくりには徹底して「人間味」と「温かみ」を込める。店舗デザインは創業初期から同じパートナーと組み、相良氏自身が言語化したビジョンをプロの目線で具現化していくプロセスを徹底している。

「スタッフが働きやすい環境こそが、良いサービスを生む。2025年に本格始動したシュークリーム専門店『DRIVING CREAM』をオープンキッチンにしたのも、製造スタッフが常にお客さまの顔を見ながら働けるようにするためです。オフィスにはないパブリックな空間で、街と繋がる喜びを感じてほしい。それがSOMEWHEREらしさの源泉になります」

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中森りほ

ライター: 中森りほ

グルメ系ウェブメディアの編集・ライターを経て2017年よりフリーライター&編集者として活躍。『食べログマガジン』『Numero.jp』などで、グルメや旅記事を執筆中。