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アルバイトの離職率が高い飲食店は必見! スタッフ定着に必要な対策は「働きやすい店づくり」

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忘年会や新年会がひと段落したのもつかの間。3~4月には歓送迎会シーズンがやってくる。飲食業界にとってはかきいれ時であるのと同時に、いかにして人材を確保するか悩ましい時期だと言えるだろう。

人材確保というと、新たに募集をかけて採用することをイメージするが、働いているスタッフを辞めさせないために努めることも大切である。そこでここでは、いかにして人材を確保し、そしてつなぎとめればいいか、その方法をご紹介していく。

そもそも人材不足って飲食業界だけなの?

厚生労働省が2015年12月に発表した有効求人倍率は1.27倍。前月に比べて0.02ポイントの上昇となっている。景気動向の指針としては好意的にとらえられなくもないが、細かくみていくと深刻な人材不足に悩まされている業種もある。

帝国データバンクが企業に対しておこなった調査によると、正社員が不足している企業は約36%、非正規社員が不足していると回答した企業は24.5%であった。業種別にみると、正社員では「放送業界」、非正社員では「飲食業界」がトップとなった。これまでも飲食業界の人材不足は度々懸念されてきたが、特にアルバイトの不足は慢性化しつつあるようだ。

深刻なのはホールスタッフの人手不足

では具体的にはどの職種が人手不足になっているだろうか。昨年1年間で 「求人@飲食店.COM」に掲載された求人(62,154件)のうち、もっとも多かったのは、サービス・ホールの職種。つまりホールスタッフが特に足りていないということになる。ついで求人が多かったのは、調理スタッフ、調理補助など。専門性や技術が求められる職種は習得までにある程度の期間を要することもあり、正社員での求人が多いのに対し、ホールスタッフは、アルバイトでの求人が多いことがひとつの特徴のようだ。

給与よりも工夫が大事! 人材を確保するためのヒントとは

そもそも、求職者が職場に求めるものはなにか。もちろん給与面を無視するわけにはいかない。しかし、給与の高さは求人募集段階でのフックにはなるが、信頼関係の築ける良い人材を集められるかどうかというとそれはまた別の話。逆にいえば、給与をそれほど高く設定できない状況であっても工夫次第で良い人材を集めることができる可能性はあるということだ。

「飲食店.COM」が実施したアンケートによると、アルバイト希望者が重視する勤務条件としては、1位「職種」、2位「勤務地」、3位「給与」、そして4位が「お店の雰囲気」とあった。この中で店側が工夫できるのは「お店の雰囲気」であろう。これを人材をつなぎとめるひとつのポイントと捉えたい。たとえば、高めの給与設定で多くの人材が集まったとしても、離職者が絶えず、新規採用と離職を繰り返すようでは悪循環。そこで考えたいのが、早期離職を防ぎ、人材を育てる工夫だ。スタッフがこの店で長く働きたいと思う環境を作っていくことが、良い人材を確保する鍵と言えそうだ。

スタッフ定着率を向上させる3つの工夫

では実際にどのような工夫が必要なのか。今回はポイントを3つに絞って考えていきたい。

1、安心して働ける環境づくり
まずは、スタッフが安心して仕事に専念できる基盤づくり。近年増加傾向にある非正規の雇用形態に加え、少子高齢化に伴う家族形態の変化が、離職せざるを得ない状況の一端として無視できないところまできている。育児休暇や介護休暇など、もしものときの福利厚生が充実していると、予期せぬ離職を防ぐことができ、安心して働ける環境だというひとつのフラグを立てることができる。働く側も仕事に専念でき、長く働く意欲の向上につながるのではないだろうか。

2、ハウスルールの活用
二つ目はハウスルールを活用すること。ハウスルールとは仕事に対する考え方や知識、そしてゲストへの対応方法をスタッフへ浸透させるために設けられるもの。ルールづくりにおいては、店独自の内容にすること、そして共感度の高いルールを設けることが大切で、これが成功すれば「チーム力の向上」、そして「スタッフ個人のモチベーションの向上」につながる。店に対する愛情を育てるためにも、非常に大切な役割を果たす。

3、充実した研修制度
最後はスキルアップの支援による人材育成。海外研修や農業体験など、それぞれの店が重要なポイントと考えている部分にフォーカスし、その分野をより深く知るためのバックグラウンドを勉強させる。たとえば、アルコールにこだわっている店ならば蔵元やワイナリーなどに研修に行くのも良いだろう。こうして自分が働いている店の強みやポリシーを学ぶことで、店への愛着や責任が増し、そして身についた知識が自信を育てる。自信を持って働ければ、日々の仕事の成果も上がるし、それがやりがいにもつながる。特に最近の若い世代は“学び”の意識が高いので、研修制度は人材を定着させる大きな武器になるはずだ。

今後も飲食業界の採用活動は売り手市場が続いていく。そんな厳しい状況の中で人材を確保していくためには、まずは働く環境をしっかりと整えておく必要がある。そのためには、現在働いているスタッフの声に耳を傾けるのもひとつの方法だろう。繁忙期を迎える前のこの2月こそ、そうした基礎づくりをおこないたいものである。

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イシイミヤ

ライター: イシイミヤ

フリーライター。ファッション誌やカルチャー系のウェブサイトでライフスタイルに関わる記事を執筆。現在はフードカルチャーに焦点を絞り、その最旬事情から老舗の妙味まで多岐にわたり執筆中。週3でアンテナショップに通い、全国の郷土菓子と未知の食材の収集を日課にしている。ビールとコーヒーのトレンドに詳しい。