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キーワードは手の届く贅沢。「少し高いけど美味しい」が集客の鍵に

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近年、生活者は“物質的豊かさ”よりも“精神的豊かさ”を重視し始めている。毎日の食事に困ることなく、家も車もある。物質的に満たされつつある日本では、旅行や習い事、コンサートなどといった“体験”に価値を見いだす人が増えているのだ。

本格的な料理や非日常な雰囲気、洗練されたサービスを味わえる高級レストランでの食事も、その“体験”のうちのひとつだ。しかし、そんな外食をいつでもできるわけではない。

そこで、普段使いの飲食店で手軽に非日常を味わいたいというニーズが生まれているのだ。

“いつもの店”から特別な体験を叶える店へ

では、非日常を演出するにはどうすればいいのか? いま“体験”を求めている層は、「魅力的な料理が用意されているなら、多少値段が高くても味わいたい」と考えている。つまり、いつものメニューにはない、スペシャルメニューを用意して“手の届く贅沢”を提供することが、集客アップの秘訣と言える。そんな飲食店の例をいくつか紹介しよう。

■幻の生ハムで集客を図る『SPANISH DINING Rico』
スペイン各地の本格的な伝統料理を提供するダイニングレストラン。内装もスペイン情緒たっぷりで、特別感を演出している。ただしメインとなるメニューは、アラカルトでピンチョスが300円〜、タパスが500円〜という手頃な価格。普段から気負いなく利用できる設定だ。

そんな同店で、非日常を体験できるメニューが「100%純血種 ハモン・イベリコ・デ・ベジョータ」だ。希少なイベリコ豚の生ハムであることから、提供価格は2,000円。他のメニューとは一線を画す値段設定だが、これは“幻の生ハム”と呼ばれているほどの逸品。価格以上の体験をゲストに提供していることになる。

店のコンセプトは“日常で味わえる本物を、もっと気軽にお手頃価格で”とのこと。気軽に、本格的な体験ができる飲食店のお手本だ。

■限定品で“特別感”をアピール『洋食酒場フライパン 下北沢N.n.N』
コンセプトは“ワクワクする大人の洋食酒場”。さっと立ち飲みができるスペース、カウンター席、テーブル席を用意し、内装にも工夫を凝らす。酒の肴にはメンチカツ(800円)やハムカツ(600円)といった洋食メニューがズラリ。この新鮮さがウケて、地元住民を中心に高い支持を得ているようだ。

名物メニューは「ヒレ肉の特製ビーフカツサンド」。こちらも他のメニューとは違い、2,000円という価格で提供。さらに、仕入れと仕込みに手間がかかることから、1日限定5食というレア度も“特別感”を増幅させている。

この2店舗は、基本的には普段使いできる価格設定の飲食店ながら、本格的なメニューを取り入れることで“特別な体験”を提供。その結果、集客に成功している例と言えるだろう。

“お得感”と“感動”のダブルで訴求

本格的な料理が求められているため、通常よりも高価格になるスペシャルメニュー。しかし、定着すれば店の名物になるし、名物を食べるという“特別な体験”のために人も集まる。そして“特別な体験”をした人は、それを誰かに話したいという欲求に駆られる。ゲストの感想が口コミサイトやSNSへ投稿されれば、客が客を呼ぶ好循環が生まれるはずだ。

飲食店にとって「安くて美味しいもの」を提供するのは、もはや当たり前の流れになれつつある。そこから一歩抜きんでるためには、“お得感”に加え“感動”も提供しなくてはならない。そういう意味では「美味しい料理であれば、多少値段が高くても味わいたい」という消費者が増えているのは、ある意味追い風と言える。いつものメニューで“お得感”を演出しつつ、スペシャルメニューで“感動”を与える。そんな成功パターンを今のうちに確立しておきたいものだ。

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いずみかな

ライター: いずみかな

グルメやライフスタイル、育児などを中心に編集執筆業をおこなう。2015年からフリーランスとしての業務を開始。タウン情報誌やレストラン情報を扱うWeb媒体で取材や執筆をしており、特にケーキや洋菓子に興味がある。