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変貌が求められる総合居酒屋。低迷脱出の鍵は「専門店化」か?

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長らく低迷が続く居酒屋業態

日本フードサービス協会は3月25日、2月の外食産業市場動向調査の結果を発表した。これによると外食産業全体の売上は、前年同月に比べて5.5%の増加。3カ月連続で前年を上回る結果となった。

今年2月はうるう年の影響で前年よりも営業日数が多く、それが全体の売上を2~3%押し上げた。また、ファストフードが9.6%増、ディナーレストランが6.4%増と順調な伸び率をみせる一方で、居酒屋は前年同月比7.7%減と不調。長らく続く低迷から抜け出せないでいる。

総合居酒屋は変貌が求められている

居酒屋業態が低迷しているのにはさまざまな原因がある。最も大きいのは店舗の激減だろう。特に『和民』をはじめとしたチェーン型の居酒屋が相次いで閉店しているのが大きな要因といえる。

しかし、チェーン型であっても『串カツ田中』や『鳥貴族』といった居酒屋は売上を伸ばしており、その違いを考えると総合型の居酒屋であるか、それとも専門性の高い居酒屋であるかによって明暗が分かれていることがわかる。

これは大手チェーンに限った話ではない。現在のグルメシーンは専門性の高さを求める傾向にあり、居酒屋業態においても「牛タン」「牡蠣」といったように、何か“売り”がないと成功するのは難しい。「なんでも味わえて、それなりに美味しい」では通用しなくなってきているのだ。

手軽に“売り”をつくるにはどうすれば?

店の“売り”をつくるには、客のニーズを読み取りそこにアプローチしていくのが一番の近道。客の年齢層や利用動機を明確にし、現在のメニューやサービスで顧客満足を得られているのか、まずはそこを把握することが大切だ。客のリアルな声を知るなら、「食べログ」などの口コミサイトを活用するのもいいだろう。

とはいえ、これらの調査をおこなったうえで新たなメニューやサービスを生み出すのは大変な労力がかかる。個人経営の居酒屋なら、日々の業務に追われてそれどころではないだろう。もっと手軽に“売り”をつくる方法はないか……。そう考えたときに思い浮かぶのが「酒」である。

たとえば吉祥寺『火弖ル(ほてる)』。この店ではハムカツやスパゲティーサラダなどの大衆的なメニューを主役に、ハイボールやレモンサワーといったこれまた王道の酒を提供。一見すると普通の居酒屋である。しかしこの店がスゴいのは、ハイボールの炭酸水に野中食品工業の「DRINK NIPPON」を使用するなど、酒に対する細かなこだわりを持っているところ。強炭酸水の「DRINK NIPPON」はハイボールファンには有名な炭酸水で、これで割るとアルコール感が和らぐという。こうした通好みのこだわりを持っているのが、『火弖ル』を惹きつけるの大きな理由になっているようだ。

また学芸大学『さいとう屋』も、酒好きから熱い支持を受けている居酒屋だ。この店舗の“売り”は焼酎サワー。焼酎には大衆酒場ファンにはおなじみの「亀甲宮」、通称「金宮」を使用。店の窓に「金宮」のシールを貼っているだけで、それに惹かれた一見客がふらりと訪れることもあるのだとか。

2店舗とも酒に特徴があるといっても、使用する焼酎や炭酸水にこだわっているだけで特別なことをしているわけではない。しかし、この少しの工夫でファンを獲得することに成功しているのも事実だ。このような手軽な手法であれば、どんな店舗でも真似しやすいのではないだろうか。

低迷が続くか、そとも復権か? その鍵は!?

居酒屋業態の不調は今後も続くと予想されており、大手チェーンの中には業態転換に乗り出している店もある。一方で、ここ数年は大衆居酒屋のような「古き良き酒場」が復権しつつある。大切なのはそうしたニーズを捉え、少しずつ店を調整していくこと。特に個人店は、変化を恐れずに大胆に舵を切っていく必要があるといえるだろう。

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『飲食店ドットコム ジャーナル』編集部

ライター: 『飲食店ドットコム ジャーナル』編集部

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