やる気になる名言から、クスッと笑える迷言まで。食にまつわる名言・格言集

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「豆乳を投入」
「カレイを使って華麗なる手さばきを見せたい」
「究極のMBDF(マーボー豆腐)」
“オリーブオイルの貴公子”こと速水もこみちの言葉である。人気番組「ZIP!」の料理コーナー『MOCO'Sキッチン』での台詞だが、あの甘いマスクから発せられるしょうもないダジャレは今や朝の名物に。「今日はどんなダジャレが飛び出すのか? オリーブオイルは使うのか?」と、同コーナーを楽しみにしている方も多いのではないだろうか。
さて速水もこみちの迷言はさておき、料理界にはさまざまな名言・格言がある。今回はそれらの言葉の中から、飲食業界で働く方にとって刺激になるようなものをいくつか紹介していきたい。

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料理人の励みになる2つの名言
■ブリア・サヴァランの名言
「料理することは、われわれの文明を促進させたすべての技術の白眉である。というのは、厨房の必要がわれわれに火の使い方を取得させてくれたからである」
1800年代の名著『美味礼讃』の著者ブリア・サヴァランの言葉。火は文明の象徴だとされているが、その発達のきっかけを与えたのが「調理をする行為」だと語っている。「料理はすべての技術の白眉である」とは、料理人に誇りを与えてくれる言葉である。
■北大路魯山人の名言
「いいかね、料理は悟ることだよ、拵(こしら)えることではないんだ。名人の料理人というものはみなそれなんだね」
芸術家であり、そして稀代の美食家として知られる北大路魯山人の言葉。魯山人は食に関する格言をさまざまと残しているが、食の道を追及しその果てに得た言葉だけに、真理をついた重みのあるものが多い。「料理とは悟ること」とはどう解釈すればいいのか? その意味を考えるだけでも面白い。

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グルメ著名人のユニークな名言
飲食業界で働く人の刺激になるかはわからないが、グルメ著名人のユニークな名言も紹介。
■吉田類の名言
「5軒いったらたぶん2軒は覚えてないですね」
酒場詩人として知られる吉田類の言葉。BS-TBSで放送中の「吉田類の酒場放浪記」も絶好調の彼だが、番組収録で足を運んだ5軒中の2軒は覚えていないとのこと。それだけ真剣に酒を楽しんでいるのであろう。ちなみに番組の締めの台詞は「もうあと2、3軒まわっていこうと思います」だ。
■彦摩呂の名言
「具の満員電車や~!」
「野菜たちの6か国協議や~!」
「マグロの鎮魂歌や~!」
「もつ鍋界の世紀末覇王や~!」
「うわぁ。海の宝石箱や~!」の名台詞で知られる彦摩呂。この「宝石箱や~」という台詞はグルメレポーターとしての転機にもなったらしく、以来、オリジナリティーを追及。数々の名言を生み出してきた。ちなみに世紀末覇王とは『北斗の拳』のラオウのこと。どんなもつ鍋なのか気になる……。
■辰巳芳子の名言
「何かを得るかじゃないのよ。何を捨てるか。何を捨てるかで残ったものの意味が決まる」
御年91歳、料理研究家・辰巳芳子の言葉。著書『スープ日乗』に記載されている言葉だが、この著書には金言が散りばめられており、料理人の方は一度目にすると面白いだろう。厳しくも温かい彼女の人柄の虜になるはずだ。

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一流だからこそ言える「飲食人の心得」
■ミッシェル・トロワグロの名言
「自分にとって非常に感動的なことは、人生の晴れの日、結婚記念日や誕生日などに、お店に来てくださるお客様が絶えないことです。先日も『トロワグロに来るのが私の夢でした』と言って、90歳のおばあさんが来てくれましたが、それは衝撃的にうれしいことでした。この仕事の醍醐味は、そんなところにもあると思っています」
40年以上も三ツ星に輝き続ける『メゾン・トロワグロ』。この世界的な名レストランを率いるミッシェル・トロワグロが発した言葉だ。あらゆる名声を手にしながらも、ひとりのゲストとしっかりと向き合い、そこから喜びを得る。レストランの本質とは何かを教えてくれる名言だ。
■田崎真也の名言
「お客様が店に来るのは、料理人の技術の高さや食材の新鮮さにため息をつくのが目的ではないんです。自分が楽しむ、あるいは同伴者をもてなして気持ちいい時間を過ごすためにお金を払うのです。そこを取り違えているようでは、どんなにいい腕をしていても、一流とはいえないでしょう」
一流ソムリエとして幾多のゲストをもてなしてきたからこそ言える言葉。この考え方は当たり前のことかもしれないが、料理人やサービスマンとして自信を得るうちに、その「当たり前」も忘れがちになってしまう。「ゲストに喜んでもらう」という飲食店のあるべき姿を忘れずにしたいものだ。
いかがだろうか。こうして色んな人の名言・格言を調べてみると、飲食の仕事の奥深さに改めて気付かされる。しかしさまざまな考え方がある中で共通しているのは、「美味しい料理」と「もてなしの心」が飲食の仕事の基本であるということ。
そういう意味でいうと、速水もこみちの「迷言」は視聴者を楽しませようとする「もてなしの心」の顕れであり、やはり彼はエンターテイナーとして一流なのである。
