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和食の未来を考える。京都市に外国人シェフが集うワケとは?

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国内より海外での評価が高まる

和食がユネスコ無形文化遺産へ登録されて2年が経った。登録当初こそ、和食の素晴らしさを再認識する動きが世の中で見られたが、そうした動きが私たちの生活を変化させたかというと、そういうわけではなさそうだ。朝ごはんがパン派だった人がこれを機にごはん派に変わった…なんて話も聞かないし、料理教室で和食を学び始めた…という人にもなかなか出会わない。ほとんどの人が「和食ってスゴかったんだ」と感想を抱いただけで、この話題を終わらせてしまっているのではないだろうか。

しかし、海外の反応はまるで違う。無形文化遺産登録をきっかけに、あらゆる国で和食の需要が高まっているのだ。農林水産省の資料によると、「外国人が好きな外国料理」という調査で和食が堂々の1位を獲得。2位のイタリア料理、3位の中国料理に大差をつけての結果だった。さらに海外の和食レストランも急増しているようで、2006年が2万4千店だったのに対し、2013年には5万5千店まで増加。今、世界中で和食の需要が高まっているのだ。

ただ問題がひとつ。海外の和食レストランの多くは外国人シェフが腕をふるっているのだが、当然、彼らは十分な修行を重ねてきたわけではない。そのため、和食本来の魅力をしっかりと表現できていないのだ。

その背景には「出入国管理及び難民認定法」という法律が関係していると考えられる。条文を一部抜粋してご紹介しよう。

在留資格「特定活動」において、あらかじめ法務省告示で定める活動に、外国人が、日本国内の料理店で働きながら日本の伝統料理の知識及び技能を修得するための活動は認められていない。

和食は日本人にしか習得できないと考えられていたのか、それとも和食の技術を国益と考え、その流出を避けるためだったのか…。何十年も前に制定されたものとはいえ、現代の感覚では違和感を感じるような法律がいまだに存在するようだ。

和食を世界に広めようと国が積極的に動き出す

最近になって、この法律が和食のグローバル化を阻んでいると危機感を感じた国は、法律改正に動き出す。指定する地域に限って、和食店で外国人が働けるよう、法律のなかに特例措置を設けたのだ。特例区となったのは京都市。現在では、老舗料亭『菊乃井』をはじめ、京都市が指定する各店で外国人が働いている。

本物の和食を世界に広めようとするこのような活動は、国が主導しながら様々な形で行われている。たとえばパリの名店『アラン・デュカス』で開催されたフェアでは、銀座『小十』の奥田透氏が腕をふるい、美食家たちの舌を唸らせた。さらには、海外へ向けて日本酒の魅力を伝えるドキュメンタリー番組を放映したりと、メディアを活用した広報活動も開始している。国はこれらの活動を通して、日本への観光客増加、日本産食材の輸出拡大も狙っているそうだ。

和食のユネスコ無形文化遺産への登録で、私たちの食生活が大きく変わることはなかった。しかし、こうして和食がグローバル化する様子を知ると、せめて外国人に恥じないだけの知識やマナーを身に着けようとも思う。まずは箸の握り方から見直してみようか…。

Editting&Text/Hirokazu Tomiyama

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『飲食店ドットコム ジャーナル』編集部

ライター: 『飲食店ドットコム ジャーナル』編集部

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