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日本も卵10個500円の時代がくる? ケージフリー・エッグが世界を席巻中

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米ウォルマート、2025年までにすべて「ケージフリー・エッグ」に

アメリカの小売り大手ウォルマートが、取り扱う鶏卵を2025年までにすべて「ケージフリー・エッグ」に切り替えると今年4月に発表し、日本でも大きなニュースとなった。アメリカでは、2015年頃から大手スーパーマーケットのほか、マクドナルドやサブウェイ、デニーズなどの外食チェーンでも、使用する卵を10年以内にケージフリー・エッグへ移行すると宣言している。

今、アメリカの流通や食品、飲食業界で話題の「ケージフリー・エッグ」とは一体どのようなものなのだろうか。

ケージフリー・エッグとその背景

ケージフリー・エッグとは、ケージ(鳥かご)に入れずに飼育する鶏が産んだ卵のこと。ケージを使わない飼育方法には、鶏舎内の平たい地面の上で飼う「平飼い」と、屋外に放つ「放し飼い」がある。屋外での放し飼いで生まれた卵は、特に「フリーレンジ・エッグ」とラベルされる。

では、なぜケージフリーが求められているのだろうか。大きな理由は、従来型のケージ飼いが「動物福祉(アニマルウェルフェア)」に反すると考えられているからだ。

ひとつのケージに2羽以上の鶏を入れ、身動きができないほどの狭い環境で飼育し採卵する。このような過密状況での飼育は、鶏にストレスを与え、健康を損なう原因にもなってしまう。こうした考えがヨーロッパを中心に広まり規制が進んだようだ。

動物福祉とは日本人にとってあまり馴染みのない考え方かもしれないが、これは1960年代にイギリスで家畜の悲惨な飼育状況がリポートされたことを切っ掛けに生まれたものだ。

動物福祉に対応しているか否かについては、次のような評価基準がある。
1、飢えと渇きからの自由
2、肉体的苦痛と不快からの自由
3、外傷や疾病からの自由
4、恐怖や不安からの自由
5、正常な行動を表現する自由

ケージ規制、世界の動きは?

従来型ケージの禁止は、スイス(1991年)を皮切りにスウェーデン(1999年)、フィンランド(2005年)、ドイツ(2007年)と進んだ。ちなみにEUでは、2002年より従来型ケージの改良を養鶏業者に義務づけている。1羽あたりの面積を550平方センチメートルから750平方センチメートルに広げ、かつニワトリの習性に配慮して止まり木や砂、巣箱の設置をするというものだ。

なお、ケージフリー・エッグの国内生産の割合は、イギリスが約50%、オーストラリアで約30%だが、アメリカでは約8%。アメリカではカルフォルニア州が州法で従来型ケージを禁止している。

日本ではどうなる?

日本の場合、約95%が従来型のケージ飼育を実施している。ケージ飼育の利点として、排せつ物と切り離して飼育できる、健康管理がしやすいことが挙げられる。「物価の優等生」と称される価格も、この飼育方法に支えられているのだ。

参考までに、飼育別ごと卵1個の小売価格を調べてみた。

ケージ飼い 平均36円、最安19円
平飼い   平均60円、最安31円
放し飼い  平均83円、最安59円
有機    平均126円、最安120円
※東京都区部 平成26年度畜産関係学術研究委託調査報告書より

やはりケージフリーの卵の方が高価になるが、飼育の手間などを考えると当然の結果といえるだろう。日本でも、動物福祉の意識の高まりや、国際基準とのすり合わせによって、アメリカほど急進的ではないにせよ、ケージフリー・エッグの生産・流通量が徐々に増えていくと予想されている。飲食店にとっては直ちに影響があるわけではないが、注視していかなくてはいけない話題である。

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本間純子

ライター: 本間純子

映像制作会社を経て、フリーライターに。企業PR誌で食材の開発や世界の食文化をリポートしている。CD-ROM『日本酒の郷をめぐる~北陸編』(ポニーキャニオン)では、酒蔵をたずね、酒づくりや酒にあう土地の食などを取材、執筆した。個人的には「日本のレストランで世界一周」をたくらむ。