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飲食業界の最先端をいく5店から「繁盛の法則」を学ぶ。進化系酒場からガストロノミアまで!

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今年も飲食業界には様々なトレンドが生まれた。若い世代に“文化”として受け入れられ、今まさに脚光を浴びている横丁や大衆酒場、名門で学んだ若手シェフが紡ぐ小体な良店、“EAT GOOD”を合言葉に躍進する産直系の居酒屋・ビストロ……。これらのブームは一過性のものではなく、飲食業界にしっかりと根付いていくだけの力強さを持っているのが特徴だ。

一方で、インバウンド需要の高まりや、消費増税の話題とともに注目された“中食”についても忘れてはならない。飲食店としてはこうした動向を常に意識しながら、柔軟に進化していくことが今後も求められそうだ。

では、進化していくには何が必要なのか? 一番大切なことはトレンドを肌で感じ、そして学ぶことだ。というわけで今回は、最近のトレンドを肌で感じることができる5店をピックアップ。今後に役立つであろう、学ぶべきポイントをお伝えしていく。

名店出身のシェフが腕をふるう個性派イタリアンで“オリジナリティー”を学ぶ

今年5月、代官山にオープンした『falo』。イタリア語で‘焚き火’という意味をもつ店名のとおり、店内に配した炭火台での調理が魅力のイタリアンだ。シェフの樫村仁尊氏は広尾の名店『アクアパッツァ』で料理長を務めた実力者。一流店仕込みの繊細な味付けに加え、目にも楽しいダイナミックな調理法も話題になっている。

最近は『falo』のように肉の調理法として炭や薪に注目し、店内に本格的なシステムを導入する店舗が増加中だ。今年4月、3度目のリニューアルオープンを果たした『TACUBO』も、新店には薪釜を備え、力強い肉の味わいを実現。前菜やアルコールを楽しみながら、薪や炭の火を眺める、新たなスタイルを提案している。今後注目のスタイルといえるだろう。

ちなみに、樫村シェフのように有名店で修行を積んだシェフが独立し、個性あふれる新たな名店を誕生させているのも最近の外食シーンの傾向だ。確固たる腕をもつシェフたちが、時代のニーズと自身のテーマをどのように表現するのか、ぜひ足を運んでチェックしてみてはいかがだろうか。

人気日本酒バーから、「進化系酒場」の成功の秘訣を学ぶ

人気店がひしめく恵比寿エリアで連日盛況の日本酒バー『GEM by moto』。ワールドワイドな広がりを見せる日本酒ブームの中で、独自の世界観を構築する人気店だ。店主はもともと新宿の『日本酒スタンド酛』の店長だった千葉麻里絵氏。豊富な知識を生かして全国から集められた日本酒とともに、それぞれの酒を引き立てるアテを存分に楽しむことができる。

店内は昔ながらの大衆酒場好きには馴染み深いコの字カウンターだが、アテのメニューにはトレンド要素もしっかり盛り込まれている。例えば、大衆酒場で定番のハムカツも『GEM by moto』では「ブルーチーズハムカツ」となってひとひねり。意外性や目新しさだけでなく、それぞれのアテが日本酒との相性をしっかりと考えられていることも日本酒愛好家や業界関係者に愛される理由だろう。大衆酒場のような気軽さと、専門性の高い酒や料理との融合という点で、今チェックしておくべき店ではないだろうか。

中食産業の今後を話題のガストロノミアから学ぶ

鎌倉の『OLTREVINO』はイタリアの“エノガストロノミア”を見事に表現した店。ここ数年キーワードとして耳にすることが多いガストロノミーとは、その国の文化やライフスタイルとともに美食を考えるという多角的な食文化の考察を意味している。エノはギリシャ語でワインの意、つまり、『OLTREVINO』はワインを楽しむための様々なものが手に入るライフスタイルショップだ。シェフが作る本格的なイタリア料理や惣菜を楽しめるほか、店内には300種類のイタリアワインをはじめ、チーズやハムなどワインとともに楽しむ食材が豊富に取り揃えられている。

『OLTREVINO』の魅力は、イートインとテイクアウトどちらもできること。お目当ての食材やワインを買って帰り自宅で楽しむ人もいれば、惣菜を選んでイートインしていく人もいる。外食産業の中でもテイクアウトへの注目度が高まる中、商品とともにそれを取り巻く食文化を伝える、というスタイルは大きなヒントになるのではないだろうか。

ミシュランで星獲得の和食店からインバウンド対策を学ぶ

和食が世界無形文化遺産に登録されたのは昨年の冬。年々増加する外国人観光客の多くも日本の“食”を楽しみに来日しているという。そんな中、神保町の和食店『傳』は、伝統的な和食の域にとどまらない独創的なプレゼンテーションで外国人にも喜ばれる注目の人気店だ。

例えば、ケンタッキーフライドチキンのパッケージを模した箱で振舞われる手羽先の唐揚げや、和菓子の最中のパッケージで出されるフォアグラの最中など遊び心も満載だ。またスタッフにもバイリンガルを採用したり、ホームページも英語ページを設けたりとインバウンド対策にも積極的。外国人客をいかにもてなすか、その在り方を学ぶのに最適な店ではないだろうか。

横丁ブームから今求められる外食のニーズを学ぶ

大衆酒場の人気に通じる“横丁”の魅力。間口の狭い居酒屋がひしめき合う横丁は、“せんべろ”という言葉に象徴されるように、千円あれば十分に酔えるような単価の安さ、ノスタルジックな雰囲気、そして様々な店をはじごできる回遊性などで再び注目を集めている。有名どころは新宿の「思い出横丁」や「ゴールデン街」。渋谷の「のんべい横丁」や吉祥寺の「ハモニカ横丁」も古い歴史がある。武蔵小山の「りゅえる」など、惜しまれつつなくなってしまった横丁もあるが、恵比寿の「恵比寿横丁」など、新旧店舗がうまく融合し進化している横丁もある。

訪れる人は一晩で複数の店舗を巡るので、1店舗への滞在時間は少ないが、その分回転率が良い。また横丁自体に盛り上がりがあれば客の呼び込みもスムーズなので、店舗出店には好立地といえる。出店を検討している方にとっては、とても刺激を受ける場所といえるのではないだろうか。

いずれの店舗も、味や雰囲気だけではなく、食材や食文化への造詣の深さやそれに根ざした店舗づくりが満足度につながっているように感じる。消費者のニーズは、多くの情報や選択肢の中で今後もより鋭敏になるだろう。ぜひ気になる店舗へ出かけて、今後の経営のヒントを掴んでほしい。

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イシイミヤ

ライター: イシイミヤ

フリーライター。ファッション誌やカルチャー系のウェブサイトでライフスタイルに関わる記事を執筆。現在はフードカルチャーに焦点を絞り、その最旬事情から老舗の妙味まで多岐にわたり執筆中。週3でアンテナショップに通い、全国の郷土菓子と未知の食材の収集を日課にしている。ビールとコーヒーのトレンドに詳しい。