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クラフトビール、人気の背景に3つの理由【クラフトビール特集1/3】

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毎年、様々なお酒のトレンドが生まれているが、ここ数年、破竹の勢いで飲食シーンを賑わせているお酒がある。クラフトビールだ。

ご存知の方も多いだろうが、クラフトビールとは「小さな醸造所で、職人が造るビール」のことを指す。現在、日本には約240の醸造所があると言われており、それぞれが個性あふれるクラフトビールを造り出している。

ちなみに、ビールの種類は全部で100種ほどあるとされており、そのほとんどが海外で造られてきた。私たちが居酒屋で乾杯しているいつものビールは、“ラガータイプのピルスナー”と呼ばれるスタイルで、この味しか知らないという方もきっといることだろう。

100種類あるビールの中には、より苦味を強調したものもあれば、フルーティーな香りを楽しめるものもある。クラフトビールを味わったことがある方は、まず、この多彩な風味に驚くはずだ。そして、より自分好みの味を追い求めて、クラフトビールの奥深さにハマっていくのだ。

本特集では、このクラフトビールの魅力について、全3回の連載記事を通してご紹介していく。第1回目となる今回は、ビールの基礎知識について説明していきたい。

まずはビールの種類についてご説明しよう。ビールは大別すると3種類に分類される。

■エール(上面発酵)
エール酵母を用いた発酵方法を「上面発酵」と呼ぶ。16~24℃で発酵し、発酵期間は3~5日。アイルランドの「スタウト」やベルギーの「ホワイトビール」、アメリカの「アメリカンIPA」などがこの分類に含まれる。

■ラガー(下面発酵)
「下面酵母」と呼ばれる発酵方法で、こちらはラガー酵母を用いた手法。10℃前後、7~10日で発酵する。すっきり爽やかな味わいが特徴で、ドイツの「ジャーマン・ピルスナー」やアメリカの「アメリカンラガー」、日本の大手ビール会社で販売されているビールもこの分類に含まれる。

■ランビック(自然発酵)
空気中に漂う野生酵母の発酵によって造られるビール。ベルギーの伝統的な製法で、醸造所によって風味が異なる。

ランビックはベルギーでのみ生産されるのでその種類は限られたものだが、エールとラガーは、製造方法や原料、さらに色や香りによってさらに細分化され、その結果100以上のスタイル(ビールは種類のことを「スタイル」と呼ぶ)を生み出した。

じつはスゴい、日本のビール!

先にも述べたように、私たちに一番馴染みがあるビールはラガータイプのピルスナーと呼ばれるスタイルだ。国内では、このピルスナーを軸に様々なブランドが開発されているが、なかでも絶大なシェアを誇るのが、ご存知「アサヒスーパードライ」である。

じつはこの「アサヒスーパードライ」がちょっとスゴい。2014年に開催された『ワールド・ビア・カップ』のインターナショナルスタイルラガー部門で、ゴールドメダルを獲得しているのだ。アメリカやドイツ、さらにイギリスなど、ビール大国と言われている国々を抑えての堂々たるゴールドメダル…。この事実を知るだけで、普段のビールも格別な味わいになりそうだ。

クラフトビールがブームを巻き起こした背景とは?

日本でクラフトビールの醸造が活発化した背景には、1994年4月に実施された酒税法の改正が影響している。それまで、ビール製造に参入するためには年間2000キロリットル以上の製造量を確保しなくてはならなかったが、法改正により最低製造量が年間60キロリットルまで引き下げられた。これによって大手メーカー以外もビール製造に参入できるようになり、ホテルなどの観光関連業者が次々と参入。「地ビール」と銘打たれたビールがいくつも誕生し、一時的なブームを巻き起こした。しかし、その出来栄えは今ほど良くなかったようで、2003年には一旦ブームも下火になる。

そこからまた、新たなブームの波を作り上げていくわけだが、その過程には3つのポイントがある。

1つ目は技術の向上だ。ビールの本場ドイツから講師を招くブルワリーも登場し、醸造技術がみるみる向上。麦芽や酵母を繊細に組み合わせ、苦味や甘味、さらに香りを造り手独自の感覚で調整していく。こうした個性追求型の醸造所が続々と誕生し、地ビールはいつしか「クラフト(手作り)ビール」と呼ばれるようになる。

2つ目は、ビールの味の違いを楽しむという文化が、日本人にも根付き始めたことが挙げられる。2000年代に入るとクラフトビールを扱うビアパブも少しずつ増え、尚且つ、ベルギービールなどの個性豊かな海外ビールも手軽に楽しめるようになった。このビールの多様化は、今までピルスナーしか味ったことがなかったビールファンに衝撃を与え、彼らがインフルエンサーとなることで、クラフトビールの魅力が少しずつ広まっていったのだ。

そして3つ目は、ビアイベントの開催。海外から輸入される珍しいビールや、日本で独自開発されたクラフトビールを紹介するビアイベントが各地で開催されるようになり、クラフトビールという文化を軸にコミュニティーが形成されるようになった。このブームの兆しを受け、メディアもこぞってクラフトビールを取り上げるように。その結果、ブームの波はより大きいものへと成長していくのだ。

こうした過程を経て、現在、クラフトビール文化は成熟期を迎えようとしている。ビールファンがいかにこの文化を楽しんでいるのか? 次回はクラフトビール文化を長年支えてきた、日本最大級のビアイベント「ジャパン・ビアフェスティバル2015」を取材してきたので、その様子をレポートしていきたい。

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『飲食店ドットコム ジャーナル』編集部

ライター: 『飲食店ドットコム ジャーナル』編集部

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