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飲食店が人手不足に陥った2つの理由。採用難を解消するための対策方法とは?

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飲食店の人手不足は少子高齢化とブラック職場問題が大きな理由

少子高齢化により、圧倒的に労働人口が減少していく現代。働き手の減少は飲食業界においても深刻な影を落としている。加えて昨今話題になることの多い「ブラックバイト」問題も、人材確保を難しくしている大きな要因となっている。

オリンピック開催を控えた東京では新たな商業施設が続々とオープンし、そこに話題の飲食店が軒を連ねることも多いが、店舗で働くスタッフの確保が難しいという声も多く聞かれるようになった。もはや慢性的ともいえる人手不足は、飲食店経営の最重要課題といっても過言ではないだろう。

人材を確保するには求人広告を利用するのが一般的な方法だが、求人広告には勤務時間・休日数・給与などの勤務条件をきちんと明記しなければならず、また昨年には最低賃金が引き上げられ、今後も賃金の引き上げは政府を挙げての目標となっている。そのため仕事を探す求職者側にとってみれば、これまで以上に良い条件の中で、複数店舗の中から自分の希望にあった職場かどうかを選べる状況だといえる。一方で、採用側にとってみれば給与面などをシビアに見られてしまうため、店舗間の人材獲得競争が激しくなり、好条件を提示できない個人店では人材確保に苦戦を強いられるという状況が続いているようだ。

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飲食店の人手不足、特にアルバイト・パートの人材難が問題に

飲食店において、圧倒的に不足しているのがアルバイトやパートで働くスタッフだ。厚生労働省が発表している「労働経済動向調査(平成28年11月)」では、産業別に見たパートタイム労働者の過不足判断D.I.値(※1)において、宿泊業・飲食サービス業の労働者不足が目立つとのデータが示されている。

店舗運営を支えるアルバイトやパートの存在は、飲食店において欠かせない存在だが、首都圏ではアルバイトやパートの平均時給が1,000円を超え、人件費増加に悩む店舗も少なくない。また店舗によっては、主婦や学生頼みだったアルバイト・パート人材を確保するためにエルダー層の雇用や外国人の雇用に活路を見出しているところもある。エルダー層は社会経験が豊富なので接客に落ち着きがあると評判で、また外国人も昨今のインバウンド需要に欠かせない人材として活躍している。ただし、エルダー層雇用の際には体力面での配慮が必要であったり、また外国人雇用の場合もコミュニケーション面に課題があるので、その辺を考慮しながら採用を検討する必要がありそうだ。

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人手不足に陥る飲食店と、人材を確保できる飲食店の違い

ただでさえ労働人口が減少していく今、飲食店運営の要となる人材を確保するためには、それなりの戦略を立てることが大切だ。例えば、大手飲食企業と個人飲食店を比較した場合、安定志向のある求職者は給与条件などの良い大手飲食企業を選択する傾向にある。一方で個人店は、店舗運営にトータルで関われることから「将来は独立して店を持ちたい」「飲食店運営に興味がある」と考えている人材にとっては魅力ある職場となっている。結論で言えば、大手飲食企業と個人店では人材募集をする際に、それぞれの特色を前面に出しながら、求職者の心に“響く”募集をかけるよう意識することが大切なのだ。

総じて人材確保に苦戦している飲食店は、求職者が職場を選べるようになっているという、時代の変化を受け止められないでいるケースが見受けられる。例えば「昔は社員でも月10数万円の給料が当たり前だった」「残業があるのが当たり前」といった考えを働くスタッフに押し付けてしまうような飲食店は、求職者にとってみれば「そんなに苦労してまで働きたい職場」には見えず、より好条件の他店に応募してしまうことは容易に想像できるだろう。雇用する側がスタッフの働きやすい環境や条件整備に心を砕けるかどうかが、スタッフ募集の結果に大きく影響を与えるのだ。

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飲食店の人手不足を解消するための対策方法とは?

人材募集をする際に確実に人を集めるための一番手っ取り早い方法は「時給を高く設定する」など給与面でのメリットを打ち出すことだ。とはいえ、飲食店経営において重要なFLコストの一端を担う人件費は、やみくもに高く設定できるものではないのも事実。人件費が高くなれば、食材費などの他の経費をカットせざるを得なくなり、提供するサービスの質が下がってしまう可能性も否定できない。

限られた人件費の予算の中で確実に人材を確保するためには、求職者のニーズに寄り添った条件を募集側が考え、合わせていくことが大切だ。例えばアルバイトとして若い世代の確保を狙うのであれば、「髪型自由」「ネイルOK」「プライベート重視」「週1日~OK」など、気軽に募集しやすくなるキャッチを求人広告に盛り込むことも有効だ。また、今後店舗運営を任せたい30歳前後の人材確保を考えるなら、「月給○万円保証」「インセンティブあり」など給与面のメリットを打ち出すといいだろう。

求人広告の原稿には、できる限り職場で働くイメージを持ってもらうための写真や職場環境を掲載することも大切だ。「男女比5:5」「主婦(夫)活躍中」「夫婦で運営しているアットホームなお店」など、どんな働き方ができるのか、どんな環境なのかを具体的に伝えることができれば求職者も安心して応募できる。またこうして情報をしっかりと伝えておけば、採用後の早期離職を防ぐことにも繋がる。

ただでさえ状況が厳しくなっている飲食業界の人材確保。店舗ごとの特色をしっかりと打ち出し、また雇用される側が安心して働ける環境づくりを行いながら、求職者に寄り添い条件設定などを考える姿勢が今後はますます求められそうだ。

※1「過不足判断D.I.値」……労働者数について、調査日現在の状況で「不足(やや不足、おおいに不足)」と回答した事業所の割合から「過剰(やや過剰、おおいに過剰)」と回答した事業所の割合を差し引いた値をいう(厚生労働省資料より)

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『飲食店ドットコム ジャーナル』編集部

ライター: 『飲食店ドットコム ジャーナル』編集部

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