飲食店.COM通信のメール購読はこちらから(会員登録/無料)
Foodist Mediaの新着記事をお知らせします(毎週2回配信)
powered by 飲食店.COM ログイン

繁盛店への第一歩は「店名」から? 神社に命名を託す選択、そして武信稲荷神社のご利益

LINEで送る
Pocket
follow us in feedly

日本料理店『二条城ふる田』の命名書

店舗の名前は、その店舗が繁盛するかどうかに大きく影響すると言われる。最近ならSEO対策、ちょっと前なら電話帳で同業者より上に来るようにするなど、ビジネスライクに決める方法もある。しかし店の顔とも言うべき名前だけに、神社に縁起のいい名前をつけてもらうのはいかがだろうか。命名の神様として知られる武信(たけのぶ)稲荷神社(京都市中京区)には店舗の命名の依頼も少なくない。

創祀は平安時代初期、1158年の歴史を誇る武信稲荷神社

武信稲荷神社は、平安時代の初期、859年(貞観元年)2月、右大臣左近衛大将の藤原良相(ふじわらのよしすけ)公(813年~867年)によって創祀された。1158年の歴史を誇り、藤原良相公が一族の名前を付けることが多かったことから、命名の神様として信仰を集めている。童話の一寸法師が住み込みで奉公するのが「三条の大臣殿の屋敷」であり、この「三条の大臣殿」が藤原良相公だと言われている。同神社はその屋敷があった場所に位置しており、一寸法師の物語の舞台になったのである(以上、同神社HPから)。

古い歴史を持つ同神社では昭和20年代から30年代にかけて、現在の宮司である仲尾宗泰氏の先先代が命名の相談に乗るようになった。今ではすっかり地域に定着し、命名の相談を受ける新生児の数は1年で500人から600人に達するという。そして個人の名前だけでなく、法人や店舗の名前を決定する時も相談を受けている。

武信稲荷神社の境内

新生児に比べると「店舗の名前等は昨年2016年で10件程度」(仲尾宮司)だが、それでも商売繁盛を願って訪れる依頼主は途切れることはない。初穂料は人名が1万円から、店舗の名称は3万円からが目安とリーズナブルであることも、多くの人が訪れる理由と思われる。

命名方法は、依頼主からの希望を受けて候補をいくつか出した上で、何度かやり取りをした上で決定する。また、依頼者が「この名前でどうでしょう」と聞くこともあるそうだ。

「色々なご希望があります。(自身の)名前の一部を残す、地名を入れるとか。あるいはどんな店にしたいのか、たとえばアットホームなものとしたいのか、そうでないのか、あるいは繁盛しますようにとか、必ずしも希望は1つだけではないですね。それから、店舗だと名前に『水』を入れると契約が『流れて』しまうから縁起が悪いから入れないでという要望をいただくこともあります」と同神主は言う。決定したら、命名書に書き入れ商売繁盛の祈祷をして渡している。

基本的には店舗の名前も人名と同じで、縁起の悪い「忌み文字」は避け、依頼主の希望に沿った候補を出して決定する。ただし、人名に使える漢字は「常用漢字表と人名漢字表」に掲げられたものに限られるが、店舗にはそのような制限はない。

武信稲荷神社の宮司である仲尾宗泰氏

命名『あまちゃんち』と『二条城ふる田』

大阪府池田市にある居酒屋『あまちゃんち』は、2010年に武信稲荷神社に命名をしてもらっている。オーナーの天達弘路(あまだつひろみち)氏は「子供が名前をつけてもらったご縁ですね。その1年後に店を始めるということで、相談しました」とその経緯を説明する。自身のニックネームが「あまちゃん」であり、将来は家族だけで居酒屋をやりたいということで「あまちゃんの家」という意味の「あまちゃんち」という名前を相談し、決まったという。候補には漢字を入れて「あまちゃん家」とするものもあったが、平仮名だけの名前となった。

同店は開店から7年、消長が激しいと言われ、しかも「食い倒れ」と言われる飲食店の激戦地・大阪で居酒屋の営業を続けている。250種以上のメニュー、飲み物もドイツビールだけで6種以上と充実したメニューという営業努力で顧客をつかんだのであろうが、居酒屋らしい親しみのある名前も商売繁盛に一役買っているのかもしれない。

居酒屋『あまちゃんち』の外観

京都市中京区、懐石・会席料理の『二条城ふる田』は、店の場所が二条城の近くに決まっていたことと、オーナーの古田幸平氏の姓の一部から決まった。

「僕としては『二条城古田』でも良かったのですが『古』を平仮名にすると運勢が大吉だということなので、そうしました」と古田氏は言う。運勢の良否は一般人には判断はつかないが、見た目で漢字5文字が続くと堅い感じになるところを平仮名の「ふる」が効いて、柔らかみのあるバランスの取れた名前になっていると感じる人は少なくないだろう。

都内にも同神社命名の店舗はある。港区南青山にある『南青山 七鳥目』である。焼鳥と旬野菜を提供する同店は、南青山七丁目に店舗を構えていることから、その住所と「鳥」を組み合わせている。

以上の店舗以外でも、京都らしく『聚楽第』(豊臣秀吉が京都に建てた政庁兼邸宅)から一文字とった店名もあり、なかなか凝ったものが多い。

「飲食だと日本料理を扱う店からの依頼が多いですね。新生児の命名では出生から役所への届けまでに14日間という制限がありますが、店舗の場合はそれがありません。ですから、じっくりと何度もやり取りをして決めるということができます」と仲尾宮司は言う。

寺社仏閣における「京都」ブランド

飲食店は「人気商売」である以上、経営戦略としては、いかに多くの人に認知され、いかに来店してもらうかということが重要になる。それは技術的には冒頭触れたようにSEO対策などに拠る部分も大きいのだろう。

もっとも、ネット上にせよ、客とのコミュニケーションの中にせよ、店側が店名の由来について語ることができれば、それは商売に対するモチベーションの高さとして好意的に捉えられるだろう。その上、「神社にお願いした」というだけで「そこまで凝って名前を付けたのか」と、話しのタネにもなりそうである。特に寺社仏閣については「京都」ブランドの威光は強烈で、東京を含む京都以外に住む人間にとっては“何となくすごい”という漠然とした敬意がはらわれそうである。

そうしたファクターを考えた時、命名の神様に相談するのも、経営戦略上、ある種合理的な選択と言えるのかもしれない。

■武信稲荷神社
所在地/京都市中京区三条通
交通/阪急電鉄四条大宮駅から徒歩5分、JR二条駅・地下鉄二条城前駅から、ともに徒歩10分

創祀/貞観元年(859年)
創祀者/藤原良相公
名前の由来/創祀後、藤原武信という人物がこの神社に対する信仰が厚く、発揚に努めたことから武信稲荷と称されるようになった。この藤原武信という人物については「創祀から200年ぐらい後の人ではないかと言われていますが、詳細なことは分かっていません」(仲尾宮司)。

縁結び/命名、勝負の神様として知られるが、御神木の榎(えのき)が縁の木(えんのき)といわれることから縁結びとしても知られている。坂本龍馬が恋人おりょうへの伝言にこの榎に「龍」の字を彫ったとされ、それを見たおりょうは龍馬が京都にいる事を悟り、再会できたという逸話が残る。2人とも縁の木のご利益をいただいたのだろうと伝えられている。

命名の依頼/新生児の命名依頼会社・店舗等命名申し込み

Pocket
follow us in feedly

Foodist Mediaをフォローして最新記事をチェック!

飲食店.COM通信のメール購読はこちらから(会員登録/無料)
Foodist Mediaの新着記事をお知らせします(毎週2回配信)
[PR]
松田 隆

About 松田 隆

青山学院大学大学院法務研究科卒業。ジャーナリスト。スポーツ新聞社に29年余在籍後にフリーランスに。「GPS捜査に関する最高裁大法廷判決の影響」、「台東区のハラール認証取得支援と政教分離問題」等(弁護士ドットコム)のほか、月刊『Voice』(PHP研究所)など雑誌媒体でも執筆。ニュース&オピニオンサイト「令和電子瓦版」を主宰:https://reiwa-kawaraban.com/