築地の場外市場で大規模火災、「何とか助かった」の声も。望まれる行政を含めた防災
東京・築地の場外市場で8月3日、大規模な火災が発生。ラーメン店など7つの店舗、935平方メートル(約283坪)が焼けた。現場では1日たった同4日も警察や消防の検証が続き、難を逃れた周辺の店舗もオープンできないなど、影響を受けている。
一夜明けて現場検証、焼け焦げたあとを見る観光客
火災が発生したのは3日午後4時50分頃。市場の朝は早く、多くの店はこの時間には既にシャッターを下ろしている事実上の「夜中の時間帯」に相当する。報道によると消防車など63台が消火活動にあたり、4日午前1時前後にようやく火はおさまった。死傷者は出ていない。火災の発生原因は調査中だが、一部では「ラーメン店の厨房での燃え方が激しく、そこが火元の可能性がある」という報道もされているが、4日午後現在、真偽は明らかになっていない。
鎮火からおよそ12時間たった4日正午頃、現場を訪れると焼け焦げた匂いがあたりに充満していた。現場検証のため、市場の前を通る新大橋通りは新橋方面に向かう上り車線が通行禁止。すべての車両が晴海通りとの交差点で右左折させられた。
消防庁の職員によって現場検証が行われており、焼け跡で写真を撮影する姿が見られた。人気観光地のため外国からの観光客も多く訪れており、焼け落ちた場所をスマホで撮影する様子も。ただし、最も激しく燃えた場所では、規制線などに「撮影禁止」のカードが貼られていた。その場でカメラを取り出すと警察官から立ち止まらないように促されるため、多くの人が焼け焦げた様子を横目に見ながら通り過ぎていく。テレビクルーも次々と現場からレポートをするなど、半日たってもその余波は収まっていない。
「焼けなかったウチがグチを言ってはいけない」
そうした状況の中、4日朝に商店街の組合から各店舗に対して「火事に関して取材に応えると、他のお店にも次々と報道陣が来るから、取材は受けないでください」という指示が出されたそうで、周辺の関係者は一様に口が重い。
「世間話なら」と、火災現場からすぐ近くで水産関係の店を経営する60代の男性は「火事の影響で、今日(4日)は店を開くことはできません。その意味で商売に影響はあるのでしょうが、実際に焼けた店もあるから、焼けなかったウチが『商売が…』なんてグチを言ってはいけません。明日(5日)あたりまで閉めて、その後ぐらいから開けようと思っています」と話した。
火災現場から10メートル程度しか離れていない問屋の夫婦は「昨日は火が近くまで来ていたから、もうダメだ、と。でも、午後10時くらいに火の勢いが弱くなり『何とか助かった』と思いました」と、前日の様子を振り返る。
なお、火災時に近隣の90軒ほどが停電。この点について、近所で乾物関係の問屋をしているという女性は「停電になった店舗には、鮮魚を扱う店もあります。そういう店では冷蔵庫、冷凍庫が全部使えなくなって、大変だったと聞いています。ウチはビルの地下に自家発電設備があるから、大丈夫でしたが」と話す。仮に火災に遭わなくても、こうした被害を受けることがあるだけに、飲食店にとって火災は大敵である。
現場から100mも離れていない築地本願寺では8月2日から5日まで「納涼盆踊り大会」が開催されているが、火災のあった3日は中止された。会場の出店(でみせ)の食品を午後8時まで売り、早々と大会を終えたという。
築地市場でターレットトラックという運搬車を運転している50代の男性は「消火活動をしている横で、盆踊りはまずいでしょ。やめて当然。自分の取引先は火事にはならなかったけど『だから良かった』なんて話じゃない。自分だって新大橋通りが通れないから、大回りして運ばなければならないし、色々と影響は受けている。飲食店は火を扱うから、特に注意しないといけないね」と話していた。
小池百合子都知事、市場業者と連携を深め防災を
現場は木造の住宅が密集している場所で、いったん火が出ると一気に燃え広がる構造になっている。2016年11月にも市場内で火災が発生。それに続く今回の事態に小池百合子知事は「あらためて築地市場内のチェックを強化するよう指示した。場外でも再び火事が起こらないよう(市場業者と)連携を深めていきたい」という考えを示した。
都内でも有数の観光地として人気が高い築地。これからの再開発に向けて、これまで以上に行政を含めた防災対策が強く望まれることが明らかになった火災だった。