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奇跡のレストラン『カシータ』の真実。高橋滋代表が語る「究極のサービス」とは?

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『カシータ』を運営する株式会社サニーテーブルの代表取締役 高橋 滋氏

「飲食店は料理よりもサービスが大切だ」というのは、よく言われることである。だが「良いサービスとは何か」と問うと、その答えは人によってまちまちだ。「笑顔での接客」を思い浮かべる人もいれば、「おまけの一品や値引き」と考える人もいるだろう。料理のように目に見えるものではないからこそ、はっきりとした答えが掴みづらい。しかし、星の数ほど飲食店がある中で選ばれ続けるためには、サービスについてきちんと考えておく必要がある。今回は、質の高いサービスとホスピタリティで評判のレストラン『カシータ』のオーナー・高橋 滋氏に「サービスの本質」について伺った。

愛と感動のレストランが生まれたきっかけ

2001年に六本木にオープンしたレストラン『カシータ』は、心のこもったおもてなしが評判を呼び、「奇跡のレストラン」と言われるほど注目を集めている。2005年には現在の青山へ移転、都内に複数の姉妹店を持つ。

もともとバイクの輸入業を営んでいた高橋氏が飲食業に参入しようと思ったのは、20数年前に世界屈指の高級リゾートホテル、アマンリゾーツを訪れたことがきっかけだ。海外旅行が趣味の高橋氏は、バリ島の『アマンダリ』、プーケットの『アマンプリ』などに宿泊するうちに、アマンの魅力が施設の豪華さや料理の美味しさといったハード面だけではないことに気がついたという。

「1994年にフィリピンの『アマンプロ』に滞在したことが僕の人生を変えました。島の専用空港にセスナで降りたったとき、初対面にも関わらず、GMやスタッフが『Welcome to amanpulo, Mr.Takahashi!』と出迎えてくれました。滞在している間、裏方のスタッフも私を見かけると『Mr.Takahashi, how are you?』と声をかけ、どんなお願いにも笑顔で応えてくれるのです。この従業員全員で向かってくるサービスを受けて心が震えたんですね。『これをビジネスにしたら絶対にお客様の支持を得られるはず』と思いました。アマンの究極のホスピタリティを日本のレストランという土壌で表現したい。そのために作ったのが『カシータ』です。最初に決めたのが、お客様を名前で呼ぶことと、何を頼まれてもイエスということでした」

初めて会う人に名前で呼ばれて嬉しくならない人はいない。『カシータ』では、初めての来店客にも「〇〇様、お待ちしておりました」と名前で話しかけている。この“カシータマジック”により、心の距離が一気に縮まるのだ。

ゲストとの心の距離を一気に縮める親しみある接客が魅力だ

究極のサービスとは何か

高橋氏は、コンサルティングや講演会を通じて、全国の経営者に「究極のサービスとは何か」と聞かれるという。

「究極のサービスは『お客様の言うとおりにすること』です。経営者の方には、『目の前のお客様に対してどれだけ柔軟な対応ができていますか?』と聞きます。例えば、看板に『18時から営業』と掲示してあれば、99%の人は18時以降に来店します。それでも早く着いてしまう方には、何か理由があるんですよ。でも、『本当は18時からですけど、どうぞ中でお待ちください』とほとんどの人が言えません。他の業種でも同じです。例えば携帯ショップの店員。お客様が営業時間の10分前にドアをノックして『今から実家に行かないといけないので、修理をお願いできませんか』と頼まれたとしても、『営業時間前なので』と断るか、下手したらドアも開けません。そのときに『本当は10時からなんですけど、お急ぎですよね。どうぞ』と言えるかどうか。経営者にはそこから始めてくださいと言っています」

どんな会社にもルールはあるが、杓子定規に押し付ければ、客はストレスを感じてしまう。究極のリゾートと名高い『アマンリゾーツ』や『ザ・リッツ・カールトン』など、顧客満足度の高い企業は必ずサービスに柔軟さがある。

「日本人は当たり前のようにノーと言ってしまいます。例えば、先日都内の高級イタリアンに行って、サラダを食べる際に箸を頼みました。しかし『当店はイタリアの文化を尊重しているので、箸を使うことは他のお客様のご迷惑になります』と断られました。僕が箸を使うことが、誰の迷惑になるというのでしょう? わざわざ料理長まで出てきて、『箸は出せません』とダメ押しをするのです。どうしてそんなにかたくなになってしまうのか。客が箸を求めたら、何気なく出すのがサービスではないでしょうか。こだわるところが違うのではないかと感じます」

高橋氏の著書の中に「一生懸命には死角がある」という言葉があるが、自分の仕事に熱中しすぎると、本当に大切なものを見落としてしまうのかもしれない。高級店なのにカードが使えなかったり、払った金額の明細がわからなかったりするなど、飲食店ならではの慣習が残る店も多い。

「先日、グルメサイトの評価が満点に近い寿司店に行きました。カウンターで2人で食事して、『3万円くらいかな』と予想して会計に行くと『8万円です』と言われて驚きました。明細もなければ、カードも使えません。格好悪いですが、同伴の方を人質にしてお金をおろしにいきました。帰ってグルメサイトの書き込みを見てみると、みんな料理の味をほめるばかりで、明細がないことやカードが使えない不便さに言及していません。つまりユーザーも『美味しければいい』と思っているのです。だから店も変わらない。そのやりかたを否定はしませんが、『カシータ』とは水と油のように根本から違うとは感じます」

店のブランド力や商品力が高ければ、サービスが悪くても客は訪れるかもしれない。しかしそこにあぐらをかいていると、店は進化しない。ルールを越えてきた客に対して、できる限り要望に応えることがファンを作る第一歩となる。

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三原明日香

About 三原明日香

これまでに、百貨店の会報誌や、フリーペーパー、グルメ冊子、地域の経済新聞などで取材記事を執筆。社会保険労務士や年金アドバイザーの資格を持ち、人事労務の分野にも詳しい。趣味は都内のカフェめぐりで、とくにチョコレートには目がない。