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日本でも「ゴーストレストラン」は定着するか!? 無店舗型カレー店『6curry』の挑戦

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食材の保管や調理スペースをどう確保するか、間借り先との兼ね合いが重要

ゴーストレストランには多くのメリットがあるが、そればかりではない。いくつかのデメリットもあると廣瀬さんは語る。その一つが、調理スペース、保管スペースの確保が大変であることだ。

店舗を持たないといえども、実際の商品を作る場所は必要になる。そこでゴーストレストランの要となるのが、他店からの間借りなどで利用できるキッチンだ。『6curry』のキッチンは渋谷にあり、レストランとして営業しているところを昼の間だけ間借りして利用している。「借りているレストランはもともと主事業のクライアントの方でした。この企画を話した際に「面白そうだから使っていいよ」と快諾してくれたことがきっかけなんです」。

このように協力してくれるレストランを探さなければならないことは、苦労する点といえるだろう。『6curry』の場合はクライアントが提案してくれたことで始められたが、実際にゼロから探すとなると、さらに手間や時間を要することになる。

そして間借りできたとしても、食材を保存するためのキャパシティを用意することにも苦労を伴う。ゴーストレストランは店舗を持たないため、当然冷蔵庫などの保管スペースも所持しているわけではない。多くの場合、間借り先のレストランから借りることになる。冷蔵庫などの機器や食器、調理器具などをどれくらい使ってよいかなど、間借りするレストランとしっかりコミュニケーションを取ることが必要だ。

キッチンや保管スペースの確保という点ではデメリットを感じるものの、廣瀬さんはこの間借りする形態を「やってみてよかったなと思った点です。メリットでもあるのかもしれません」と話してくれた。

初めて飲食店を出す場合、食材を保管するためのキャパシティや調理スペースを想像するのは難しく、どうしても甘く見積もってしまうことがある。しかし、ゴーストレストランの場合は実際のレストランを間借りすることで、ある程度のリアルなイメージを持つことができる。

「食材の保管も調理も、意外とスペースが必要なんだなというのは、実際に始めてからわかりました。『6curry』は新鮮な野菜を使うので、その分冷蔵庫のスペースが必要になるんです」。

自分たちが想定していたよりも大きな冷蔵庫が必要なことや、冷凍庫もあったほうがいいこと、オペレーションの連携で足りない部分があることなど、やってみて気付いたことがたくさんあったという。店舗を持たないことは店舗を持つこととは違った苦労があるが、その分挑戦し、改善ができる。間借りしなければならないというデメリットは、うまくいけばメリットにも変えられるといえるだろう。

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ゴーストレストランから実店舗を構えるまで。『6curry』の新たな挑戦

現在、『6curry』はUber Eats専門店を一時的にストップしている。その理由は、実店舗オープンの準備に集中しているからだ。ゴーストレストランが店舗を持ち、どうなっていくのか。今後の展開をうかがった。

「UberEatsではランチタイムのみ営業していましたが、今後は、夜の販売にも挑戦したいと考えています。晩ご飯は、カロリーや栄養などを気にしている人が特に多く、食べるものに迷う方も少なくありません。一日頑張って疲れた日、コンビニのごはんは食べたくないけど、自炊する元気がない、そんなときに『6curry』があったら、皆さんの支えになるのではないかと思っています」。

店舗のコンセプトは「セントラルキッチン」。レストランというよりは、『6curry』のキッチンに遊びに来てもらうようなイメージだ。最初に掲げた合言葉同様、人と人、人とアイデアが出会うことで新しい何かが生まれる場所、コミュニティの場所を想定している。

「『6curry』のプロジェクトとプロダクトは、いろいろな要素のかけ算で面白くなっています。カレー×サラダ×見た目がかわいい×手法が新しい……など、これからも多くのものを掛け合わせて、より面白いプロジェクトにしたいと考えているんです。将来的には世界まで混ぜ合わせたいですね」。

ゴーストレストランとしてはじまった『6curry』の試みは、多くの人を巻き込み、挑戦を行い、より良いプロダクトを作ること、より良いプロジェクトにすることにこだわってきた。飲食業経験がない彼らだからこそ、この期間がとても重要だったといえる。初期費用を貯めたり、明確なコンセプト作りをしたりするには、時間も手間もかかる。準備段階としてゴーストレストランで挑戦してみることは、新規開業者にとって効率的な手法の一つといえるのかもしれない。

『6curry』
電話番号/03-6447-7523
受付時間/平日10:00~20:00
https://6curry.com/
https://newpeace.jp/

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竹野愛理

ライター: 竹野愛理

食と文学を愛するライター。飲食店取材、食に関するコラム、書評を執筆のほか、食関連のメディアや書籍にて編集者としても従事。趣味は読書と散歩。本を片手に旅行したり食べ歩きをしたりすることが好き。