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「立地」が不利でも飲食店は戦える! 地元の名酒場『かどや』が繁盛する理由

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定番メニューのハムカツをアレンジした逸品。つまみにも締めにも最適な「ハムカツサンド(300円)」

お客に快適に過ごしてもらうための「規律」

なんでも、定番メニューより日替わりメニューの方が多いとか。来店しないとわからないメニューがあることも、時間をかけて足を運ぶ人々の楽しみのひとつなのだろう。さらに、下町の居酒屋としては少し珍しい経営方針が『かどや』にはある。

「お客さんにこちらから話しかけることはしません。あと、例えばカウンターで隣り合わせになったお客さん同士の会話も、ご遠慮願っています。滅多に来ないですが、お子様連れのお客様は、奥の個室を使ってもらっていますね」

お客さん同士のトラブルを防ぎたいという思いから、自然と生まれたルールなのだとか。また、入店を待っているお客さんもいることから、店内での待ち合わせも禁止しているという。

日替わりメニューをズラリと表記(写真は取材日のもの)

「混雑時を2時間制にしているのは、少しでも多くのお客様に入っていただきたいためです。良識のある皆さんは、お待ちになっている方々のことも気にかけてくれるので、助かっています」

お店とお客さんのなんとも美しい関係性である。この規律もありきの空間のおかげで、一人で気軽に立ち寄る女性客も多いとか。

「うちは食事だけもできますし、逆にビールやウイスキーのピッチャーもあるので、それをチェイサーとして、日本酒を飲んでいる方もいますよ(笑)」

日本酒は日替わりで「シャムロック」といった珍しい銘柄を用意するなど、通をも唸らせるラインナップだという。

日替わりの「刺身三点盛り(500円)」。(※写真は、マグロ脳天刺身、タイ刺身、アジのタタキ。単品もあり)

「移転はしません。ずっとこの場所で」

最後にあえて「もっと駅の近くに移転する気はないのでしょうか?」と訊ねた。

「それはないですねぇ。この場所が気に入っていますし。今はスマホのナビで場所もすぐわかりますし、むしろ道に迷っても“探し当てた!”と、喜んでくれるお客さんもいるくらいで。あと、この辺は料亭や高級店も多いので、うちみたいな店があると助かると言ってくれる、近隣に住んでいるお客さんも多いんですよ。現状維持が目標です(笑)」

にっこりとした笑顔を見せながらも、十数年、この地でこのお店の看板として切り盛りしてきた女将さんの眼差しは、確固たる自信に満ち溢れていた。

角を曲がれば、煌々とした提灯が待っていてくれる

『かどや』
住所/東京都墨田区向島5-30-6
電話番号/03-3626-9606
営業時間/15:00~L.O.22:30頃
定休日/月耀 ※月曜が祝日の場合は火曜が振り替えで休業
席数/30

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山崎光尚

ライター: 山崎光尚

小学館の雑誌を中心に活動するフリーライター。食以外の得意分野は、音楽・漫画・お笑い・映画など。ヴィレッジヴァンガード公式フリーペーパー『VV magazine』では、毎月、様々な分野で活躍する有名人を直撃取材中。