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『原価ビストロBAN!』がITツールを積極導入する理由。小泉代表「ラクをするためではない」

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木目調でリラックスできる雰囲気の店内

便利だがラクをするためのものではない。セルフオーダーシステム導入後の課題

導入メリットが大きいセルフオーダーシステムだが、接客の機会が減るというデメリットもある。『原価ビストロBAN!』でもそのあたりは懸念しており、導入当初から空いた時間を調理や提供時の料理説明に充て、顧客満足度を高めることを目標としていた。実際に、よりクオリティの高い料理の提供を目指し調理工程を変更したり、料理提供時のトーク一覧を作成したりしているも、まだ試行錯誤している最中だという。

「便利なのは確かなんですけど、何も考えずに取り入れると、結構深刻な状況を招くというか、単にラクをできるというものではなくて、お客の満足度を高めるのが目的ということを念頭に真剣に取り組まないといけないものだと思っています」

ちなみに、キャッシュレスについては、「キャッシュレス化はどんどん進んでいくと思うので、集客とか効率化というより、時代的に必要かなという思い強かったです」とのことだ。

お客の満足度を高めるため、販促費を削りドリンクを原価で提供

『原価ビストロBAN!』では、入場料500円を払う代わりにドリンクをほぼ原価で提供している。スーパードライ生が160円、ハイボールは60円、グラスワインは150円と、お客は破格の価格でアルコールを楽しめるのだ。料理は低温調理した肉を中心に多く取り揃えており、お客からの評判も良くクオリティを考えると決して高くはない。一体どのように収益を上げているのだろうか。

「昔と違いお客様が店を選ぶ基準がシビアになっているという背景があり、それにあわせてお客様の満足度を高めるにはどうしたらいいのか考えた結果、ドリンクを原価で提供するという店のシステムを選びました。なので、利益を出すために販促費は削っています。また、店舗は居抜きの物件で初期投資が抑えられる店でしか出しません。あとは仕入れのスケールメリットを利用できるようフランチャイズを中心に、30店舗の出店を目標にしていますね」

黒毛和牛の極上ローストビーフ

「転職する感覚」で個人事業主になれるプラットフォームを作りたい

ちなみに、小泉氏がフランチャイズ展開を進めるのには、もう1つ目的がある。それは「転職する感覚」で誰でも個人事業主になれるプラットフォームを作ることだ。

「外食産業でも、労働環境が整備されつつありますが、現実問題、飲食でそれをきっちりやると経営が傾き始めるというか、休みは増えたけど、給料減ったよねみたいことが起きてくるかなと思っています。そうなると勤めている店舗から独立して、個人事業主を目指す人が今後ますます増えていくのかなと。

ただ、飲食業界って独立のハードルがとても高いんです。なので、うちは、初期費用の融資もするし物件も探します。仕入れ方法やノウハウももちろん用意します。だから本当にお金がなくても、転職する感覚で個人事業主になることができるんです。それでまず3年くらい頑張れば、まとまったキャッシュを貯めることも可能で、それを未来の自分への投資に使ってもらえればと。独立する人が増えて、会社としては店舗数が増えて、お互いWin-Win。創業時からそういった構想はつくっていました。

飲食業界には受け身の人も結構多いと感じているんですが、自分がそういうところで働いていたらちょっと不安になってしまうと思います。時代にあわせて動き、よりよい未来に向かうことは、お客様の満足度向上にもつながるし、働く人にとっても安心材料になると思っています」

IT化や労働環境の変化など時代の波を感じ取り、お客だけでなく外食産業に関わる人々の未来を視野に入れた店舗経営を行なっている小泉氏。今後も新たなことに挑戦し続け、業界を牽引していくことだろう。

『原価ビストロBAN!』(品川港南口)
住所/東京都東京都港区港南2-2-9
電話番号/03-3472-3030
営業時間/17:00~23:00 
定休日/年末年始
席数/50

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若松真美

ライター: 若松真美

ライフスタイルや旅行に関する女性向けWebメディアで編集者を経験後、現在はフード、トラベル、日本文化などの分野で執筆するライター。蕎麦屋酒と浮世絵を愛する。週末は東京下町を中心に酒場巡りや町歩きを楽しんでいる。