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パリの三つ星『ル・サンク』の元スーシェフ田熊一衛氏が、地元・福岡で挑む新たな挑戦

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豪快な肉料理も楽しめる

生涯料理人として、新しい可能性にチャレンジし続ける

今回の『FLOW』出店に関していえば、オーナーは場所を提供し、メニューは田熊シェフが監修し、金銭面や人材に関してはOBU Companyの寺川社長がサポートする体制を組んでいる。

「オーナーシェフとシェフは違います。オーナーシェフになると、経営面もすべてみなければいけなくなります。私はそれをしたくなかったので、寺川社長と業務提携を行いました。生涯料理人でありたい、もっとクリエイションをし続けたいという思いが強かったんです」

とはいえ、田熊シェフにはメニュー監修やプロデュースの仕事が次々と舞い込んでおり、今秋には田熊シェフが監修したスイーツが大手コーヒーチェーンの店舗に登場するという。

「メニュー監修や居酒屋への挑戦は、自分の新しい可能性の発見につながりますからね。新しいことにチャレンジするにも、経営面まで見ていては時間が足りません。スタッフたちと一緒に試行錯誤を重ね、成長していくことの方が、私にとってはとても重要なことなのです」

帰国後、スイーツのお店を始めたのも、料理人がつくるスイーツはパティシエとは異なる新しさがあるから。全く異なるアプローチで生まれていくスイーツは、“これまでになかった”と、人々を驚かせてきた。

田熊シェフがつくるスイーツには、パティシエとは異なる新しさがある

一方、パティシエとしての経験値が上がると、パティシエとしての発想で料理をつくれるようになる。けれど、それはそう簡単なことではなく、試行錯誤を重ね、失敗を繰り返すことで徐々に経験値が上がり、料理の重みや深みが生まれていくのだそう。「うちの料理やスイーツは前衛的などと言われがちですが、最初からそれを目指しているわけでも、奇抜なことをしようとしているわけでもないんですよ」と田熊シェフは言う。

現在、田熊シェフは週に一度、福岡を訪れ、料理やサービス全体を見て気になることは伝えている。

「この店のテーマは『自由』です。“自由=なんでもしていい”と思われがちですが、そうではなくて『自由』というルールなんですよね。たとえば、お客様にお水をお出しするとき、右から出すか左から出すかというのは、お客様が右利きか左利きかによっても異なります。『右から出す』ということを決めるのは簡単だけど、『自由』は自分で考えなければならないんです。だからこそ、『自由』は一番大変なんです。決められたサービスではなく、一人ひとりの意識によって生まれるサービスを提供し、心地よさを浸透させていきたいと考えています」

料理もサービスも常にブラッシュアップさせながら、ここにしかない店づくりをめざす田熊シェフ。地元・福岡に新風を吹き込む新たな取り組みに、今後も注目していきたい。

『FLOW(フロウ)』
住所/福岡市中央区今泉1-7-21
電話番号/092-716-4556
営業時間/11:30〜23:00(土日は14:00〜)
定休日/火曜
席数/21

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寺脇あゆ子(cadette)

ライター: 寺脇あゆ子(cadette)

福岡・大阪の出版社勤務を経て、福岡を拠点に活動するフリーの編集者・ライター。グルメ情報誌『ソワニエ』やシティ情報ふくおか別冊『福岡肉本』などの地元情報誌のほか、ぐるなびが運営する『dressing』、スイーツ専門の『CAKE.TOKYO』、ウェブマガジン『greenz.jp』などのウェブメディアでも九州・福岡を中心とした情報を発信している。