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会食、飲み会時のマスク着用は感染確率に影響するか。感染研の2021年研究結果を紹介

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写真はイメージ。画像素材:PIXTA

国立感染症研究所(感染研)は10月6日、会食や飲み会への参加、マスク着用の有無が新型コロナウイルスへの感染にどのように影響するかの研究結果(新型コロナワクチンを接種していない者における新型コロナウイルス感染の社会活動・行動リスクを検討した症例対照研究(暫定報告))を発表した。昨年10月に発表された「一般的な会食」における集団感染事例の調査結果とともに紹介する。なお、「一般的な会食」とは、レストランや喫茶店、定食屋など、飲酒ではなく食事を目的として入店できる店舗での集会を指す。

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感染研は、2021年6月より東京都内の5医療機関において発熱外来等を受診した成人1525名の社会活動・行動を解析した。そのうち新型コロナワクチンの接種歴がない753名の調査から次のことがわかった。

■会食・飲み会に参加しなかった者と比較して、会食・飲み会に参加した者では、感染確率が高い。特に昼よりも夕方・夜の飲み会・会食の方が感染確率は高い。ただし、飲酒を伴う場合は1回でも感染確率があがる。

■会食や飲み会、食事様式、カフェ利用等の様子においては、最大同席人数は自身を含めて5人以上、また最大滞在時間は2時間以上の場合、感染リスクが高い。

■食事や飲み物を口に運ぶとき以外マスクをつけていた者は、会食・飲み会参加・カフェ利用がない者と感染確率は変わらない。

■一方、マスクを着用していなかった・席についてマスクを外した者では、極めて感染確率が高くなる。また、不織布マスク着用者より布・ガーゼマスクやウレタンマスク着用者の方が感染確率が高い。

調査結果を踏まえ、感染研は、「感染のリスクは単一ではなく、一つの感染対策で十分というものも存在しないため、本報告等を踏まえて、流行状況に応じて政府・自治体の要請に応じた感染対策を遵守し、感染リスクの高い行動を極力避け、ワクチン接種を検討し、複合的に感染リスクを下げることが重要である。また、今後の流行・対策状況の変化、変異株の影響等によって結果が変わる可能性がある」とコメントをしている。

写真はイメージ。画像素材:PIXTA

また、2020年10月に発表された「一般的な会食」における集団感染事例の調査結果では、会食における集団感染は3事例(飲食店2店舗、レストラン1店舗)。このうち2事例はテーブル、1事例はカウンターを利用した客の感染伝播だった。店員や客のマスク着用状況は、2事例では全員着用なし、1事例は詳細不明。また、3事例すべてにおいて発症者と感染者の距離が近かったが、発症者と同じ店舗に居合わせ、別のテーブルに座っていた客への感染は認められなかった。以下、具体的に事例を見ていく。

■対面テーブルでの感染
対面距離が1メートル程度のテーブルに座った3人のうち、発症者の向かいに座って飲食した2人が感染。感染者は発症者の対面で数時間マスクなしで会話していたという。感染伝播の要因は、発症者と同席し、距離が近かったためだと考えられるが、3人は一緒にイベントにも参加しており、レストランで感染したことは断定できない。

■カウンター席での感染
広さ20平米程度の店内、隣と腕があたるほど距離の近いカウンター席で、発症者の隣に座っていた客や接客を担当した店員が感染。テーブル席を利用した客と2メートルほど離れた場所で調理をしていた店員は感染しなかった。マスクの着用は全員なし、調理用の大きな換気扇があり、部屋全体の換気はされていた。発症者との距離の近さが感染伝播の要因と考えられている。

■食器の共有による感染
発症者の母親が2人の子どもと甥っ子を連れて向かい合わせのテーブルで飲食。母親の隣に座っていた子どもと対面に座っていた甥っ子の2人が感染した。母親は甥っ子に自分のスプーンを使っておかずを食べさせていたというから、会話での感染だけでなく、スプーンの共有で付着した唾液により感染した可能性も考えられる。

一方、高齢者施設の食堂で、1.8メートルほど離れて斜め向かいに座って食事をすることで感染伝播を防げたとみられる事例も報告されている。

写真はイメージ。画像素材:PIXTA

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上記の3事例の共通点は、発症者と感染者の距離が近いことだった。感染研は「今回の結果から、一般的な会食の場では、客については同店舗に感染者が居合わせることよりも、同席のグループ内に感染者がいることの方が感染するリスクが高いと推測された。一方スタッフは店舗内に感染者が居合わせると、配膳、会計、その他様々な場面で接触する可能性があるため、常に感染のリスクが存在すると考えられる」とコメント。

さらに、一般的な感染対策であるマスク着用、手指衛生、従業員の健康管理、身体的距離の確保等に加え、次の点に留意することで、「一般的な会食」においては、個人、集団での感染伝播の可能性を下げられるとした。

・同席のグループ内でも身体的距離をできるだけ確保する
・飲食中以外の時間(トイレ移動、会計、注文時、食後の会話など)におけるマスクの着用
・箸やスプーンなどを共有しない(感染者の唾液の付着による感染の予防)

これら2つの調査結果からは、一般的な感染対策がいかに重要かがわかる。一方で飲食店での行動制限の緩和により、基本的な感染対策が緩みつつあることは否めないだろう。利用客はもちろん、接客を担当する従業員たちを感染から守るためにも、今一度、感染防止対策の周知徹底を図りたい。

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上條真由美

ライター: 上條真由美

長野県安曇野市出身。ファッション誌・テレビ情報誌の編集者、求人ライターを経て独立。インタビューしたり執筆したり、平日の昼間にゴロゴロしたりしている。肉食・ビール党・猫背。カフェと落語が好き。