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飲食18団体が緊急会見「外食は我慢の限界」。時短要請・禁酒政策の緩和求める

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“禁酒政策”が飲食業者を分断する空気を招いている

18団体に声をかけ緊急記者会見を提案したのは、日本ファインダイニング協会副会長で、ワンダーテーブル代表の秋元巳智雄氏だ。秋元氏によれば、会見のタイトルを「外食崩壊寸前、事業者の声」とした理由は二つあるという。一つは、文字通り倒産や閉店に追いこまれた飲食業者が多いこと。もう一つは何か。秋元氏はこう説明する。

「2回目の緊急事態宣言までは飲食店の95%が政府の要請に従ってきましたが、3度目の延長で従わない店が増えています。守っている側も政策には納得できないが、守らなければ世の中がおかしくなるため、赤字をたれ流しながら政策に従っている。守らない店を責めようとは思いません。でも、守らない店が増えてきたことで、飲食業を分断するような空気が流れています」

“禁酒政策”に服従するか否かの二者択一に迫られたことで、飲食業者の間に溝ができつつあると秋元氏は指摘するのだ。そもそも飲食業界には、ほかの業界と異なり、行政に物申す文化がなかった。ところが、コロナ禍の昨年以降、それぞれの団体が、行政に働きかけるようになった。その甲斐もあり、家賃補助などの要望が受け入れられてきた経緯がある。しかし、小さな団体では力が及ばない。18団体が飲食アライアンスとして結束し、行政に規制緩和を要望。結果、飲食業界内にできつつある分断を止めようというのだ。

写真はイメージ。画像素材:PIXTA

科学的なエビデンスに基づいた政策を求める

「今日の緊急記者会見のキーワードは、エビデンス(根拠)」と秋元氏は言い切る。飲食店といっても多様な業態がある。それにも関わらず、一律で規制が行われている。どのような業態であれば感染リスクが高いのか低いのか。科学的なエビデンスに基づいた政策を実行してほしいと18団体は訴えているのだ。

「しっかりとした感染対策を行ない、第三者認証を受けたところには、経済を回していけるような緩和が必要」(秋元氏)

「4月、科学的なエビデンスに基づいた感染対策を行なっている店を認証し、制限を緩和すべきだという要望を政府に届けました。結果、4月末、内閣官房から都道府県知事に対し、『認証制度の導入を進めるように』という通知が出ました」(二之湯氏)

認証制度とは、「すべての座席でアクリル板などを設置するか、座席の間隔を1メートル以上確保する」、「窓の開放による換気を30分に1回、5分程度行う」などの基準を満たしていれば、認証を得られるという制度だ。すでに地方自治体の中には認証制度を採用しようとする動きもある。

6月4日の読売新聞によれば、「全国知事会は5月29日にまとめた国への緊急提言で、感染状況に応じて認証店を時短要請の対象から除外することを含めた仕組みを国に求めている」が、「この点について、国の議論は進んでいない」とある。

「認証を受けても通常営業ができないことがわかりました。いったい何のための認証なのか。ガイドラインを守っている店は、規制が緩和される仕組みを作ってほしい」(二之湯氏)

写真はイメージ。画像素材:PIXTA

アメリカのファンド(基金)は協力金。片や、日本は貸付

3月末、政府系金融機関が飲食と宿泊業向けに500億円の支援ファンドを設立した。会見に出席したメディアから「500億円の支援では不足なのか」という質問があった。その質問には、バルニバービの佐藤裕久氏が対応。

「アメリカは、数兆円という規模で外食を支援しようとしている。国家レベルでいうと日本はアメリカの3分の1。日本政府がインバウンドや食文化を標榜するならば、500億円では話にならない。2桁足りないのではないか。ファンドの組成を考えてほしい」

ファンドには、二つの政策があると二之湯氏が説明する。アメリカでは減収分を補填する政策としてファンドの組成を行なっている。つまり融資でなく、協力金としてのファンドだ。

「日本の場合は『貸付』。いずれ返さなければなりません。さらに貸付を受ける選択を事業者ができるのか。基金という言葉は同じですが、政策の中味はまったく違うことを理解してほしい」

最後に「今後の具体的な活動内容を教えてほしい。提言を政府や自治体にどのように届けるのか」という質問があった。二之湯氏の答えはこうだ。

「近日中に要望提言活動を行います。未来への、前向きな活動も行っていきたい。コロナが落ち着いたら、世界に誇る日本の食文化を、横の連携を深めることでより良いものにしていく。コロナだからこそまとまることができたし、ひとつのチャンスだと考えている」

厳しい状況が続く飲食業界だが、“飲食アライアンス”として声を上げた18団体の力で、規制緩和の実現を切に願う。

■飲食アライアンスに賛同した18団体は以下の通り
・一般財団法人 カクテル文化振興会
・一般社団法人 ChefooDo
・一般社団法人 食の拠点推進機構
・一般社団法人 食文化ルネサンス
・全国すし商生活衛生同業組合連合会
・公益社団法人 全国調理師養成施設協会
・一般社団法人 全国日本調理技能士会連合会
・全国芽生会連合会
・一般社団法人 全日本・食学会
・一般社団法人 日本イタリア料理協会
・一般社団法人 日本飲食未来の会
・一般社団法人 日本エスコフィエ協会
・一般社団法人 日本バーテンダー協会
・一般社団法人 日本ファインダイニング協会
・一般社団法人 日本麺類業団体連合会
・公益社団法人 日本中国料理協会
・特定非営利活動法人 日本料理アカデミー
・公益社団法人 日本料理研究会

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中島茂信

ライター: 中島茂信

CM制作会社を経てライターに。主な著書に『平翠軒のうまいもの帳』『101本の万年筆』『瞳さんと』『一流シェフの味を10分で作る!男の料理』『自家菜園のあるレストラン』。『笠原将弘のおやつまみ』の企画編集を担当。「dancyu web」や「ヒトサラ」、「macaroni」などで執筆中。