飲食店が「事業再構築補助金」を活用する際の採択事例は? デリバリーや通販にも利用可!
コロナ禍以前と比べて売上高が減少した中小企業を対象に事業再構築への挑戦を支援する「事業再構築補助金」。3月3日、第4回公募における通常枠・大規模賃金引上枠・卒業枠・グローバルV字回復枠・緊急事態宣言特別枠・最低賃金枠の採択結果が公表された。今回は飲食業態の具体的な採択事例をいくつかピックアップして紹介する。
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事業再構築補助金の概要
事業再構築補助金は、現在、令和4年1月20日〜3月24日までの期間で第5回の公募を受付中。令和4年度はさらに3回程度の公募を予定している。同制度の補助額は、例えば中小企業の通常枠なら、企業規模により補助上限100万円~8,000万円、補助率は2/3(6,000万円超の部分は1/2)。再起を図りたい企業にとっては利用する価値が大いにある制度だ。ただし申請さえすれば補助が受けられるわけではなく、以下の3つの要件を満たしたうえでの公募制となっている。
・コロナ以前と比べて売上が減っている(5%〜10%以上※期間による)
・新分野展開、業態転換、事業・業種転換等、指針に示す事業再構築を行うこと
・認定経営革新等支援機関と策定し事業計画を行う。さらに補助事業終了後に付加価値額を年率3%以上増やす見込みがあること
申請方法はオンラインとなっており、デジタル庁が運営する補助金の電子申請システムjGrantsから行う。
飲食店で申請できる「事業再構築」とは?
前述した申請要件にある「新分野展開、業態転換、事業・業種転換等、指針に示す事業再構」とは具体的にはどのようなケースが対象となるのだろうか。その詳細は「事業再構築指針」で定義されており、新分野展開・事業転換・業種転換・業態転換・事業再編の5つに分類されている。飲食店の場合、各分類に対して具体的には以下のようなケースが考えられる。
①新分野展開(飲食業+α)
例:店内の飲食スペースを縮小しテイクアウト販売を実施
②事業転換(飲食業のA事業からB事業へ)
例:既存のジャンルから高い売上が見込めそうなジャンルを新たに開業
③業種転換(飲食業を辞めて別業種へ)
例:店舗を閉業し高い売上を見込めそうなコンサルティング業を開業
④業態転換(A業態の飲食業からB業態の飲食業へ)
例:店舗経営を辞めてオリジナル食品のEC販売を開始
⑤事業再編(組織再編を行う)
例:M&Aによって既存の飲食事業を譲渡し、食品製造事業を立ち上げる
上記のような事業再構築を行う際にかかる、建物の建築・改修費用や設備投資費、広告宣伝費、外注費、研修費などの経費が補助の対象だ。
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飲食業の採択事例
第4回公募の応募件数は19,673件。内8,810件が採択された。では飲食業においては、実際にどのような事例が採択されたのか。その一部を紹介しよう。
・店舗依存型脱却に向けてのデリバリー事業(東京都の寿司店)
職人が握るスタイルにこだわっていたため、寿司ロボットなどは未導入だった。デリバリーに適合した事業展開を行うため、寿司の提供速度向上を狙い寿司ロボットを導入する。
・スープカレー専門店がコーヒー豆の焙煎販売および焙煎体験を行う(北海道)
オーダーメイド焙煎の200種類のコーヒー豆の店頭販売、デリバリー販売。焙煎体験会の開催、ドリンクや関連商品の販売など。
・ECサイト構築による「お肉のブーケ」のネット販売事業(東京都の焼肉店)
新型コロナウイルス感染症による経営リスクを極小化すべく、ECサイトを構築し、強みである精肉のカット技術を活かしたバラの花を模した冷凍生肉の盛合わせを販売していく。
・バーから高級おばんざい料理専門店に転向、EC販売にも対応(東京都)
インバウンド客をターゲットとしていたバーから、高級おばんざい料理専門店に転向する。有名和食レストランで修行を積んだ料理人のスキル、全国の生産者からの食材仕入れルートを活かした新たな店に。EC販売にも対応し売上のV字回復を図る。
・大阪の予約困難焼肉店を関東で初出店(大阪府)
都内で複数の居酒屋を経営する企業が大阪市北新地の人気焼肉店の関東初進出を担う。代表自身が本店で修業し銀座の関東初出店を手掛ける。
事業再構築と聞くと構えてしまいがちだが、飲食店ではやはり既存店舗を維持したままデリバリーやキッチンカー、ECなどでの販売を導入する事例が目立つ。店内飲食以外の商品開発や既存の料理と異なるジャンルの飲食物を扱う事業計画が多い傾向で、当然といえば当然だがいずれも単にテイクアウトやデリバリーを始めるだけでなく、ある程度の設備投資が必要なケースだ。そのほかには新たなジャンルの店舗の出店や転向事業も少なくない。
飲食店にとっては厳しい状況が続いているが、新たな事業を始めるチャンスと考え、ぜひ利用を検討してみてはいかがだろう。