カフェやレストランが提案する「ヌン活」とは?「ヌン茶」が新たな外食需要を生む

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近年、サウナを満喫することを「サウナ活動」、略して「サ活」と呼ぶ風潮があるのはご存知だろうか。実は、サ活と同様、アフタヌーンティーを楽しむことも「アフタヌーンティー活動」、略して「ヌン活」と呼ばれ、アフタヌーンティーそのものは「ヌン茶」と略されている。
2022年の「ユーキャン 新語・流行語大賞」にノミネートされた「ヌン活」。本来はホテルでのアフタヌーンティーを楽しむことにより、日常の中の「プチ贅沢」を味わうという意味で使われてきたが、現在はホテルだけではなく、カフェやレストランなどでも「ヌン活」「ヌン茶」を提案する動きが広がっている。
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「ヌン活」とは? SNS映え・コロナ禍をきっかけに浸透
「ヌン活」が知られるようになったのは、2010年代の終わり頃。「SNS映え」が消費行動に結びついた結果、主にホテルのラウンジで提供されていたアフタヌーンティーの情報がSNSで発信されるようになった。
その後、本格的に流行し始めたのは2020年以降。ちょうど不要不急の外出や会食に自粛が呼びかけられていた頃だ。アフタヌーンティーの「昼間にできる」「飲酒を伴わない」「1人でも楽しめる」という特徴が、当時のライフスタイルにマッチ。息抜きを求めていた人々にとって、「ヌン活」は日常から離れ、ちょっとした贅沢気分を味わうのにぴったりだったのだろう。
2022年には「ヌン活」が「ユーキャン 新語・流行語大賞」にノミネートされた。現在ではホテルだけでなく、カフェやレストランなどでも「ヌン茶」が提供されるようになってきている。

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人気が続く「ヌン活」! お客のアフタヌーンティーの楽しみ方は?
アフタヌーンティーでは、ティースタンドでスコーンやケーキ、サンドイッチといったフィンガーフードを提供する。また、フードやドリンクには食べ飲み放題が取り入れられていることが多い。時間帯によっては同じ場所でハイティー(肉や魚などを使用したメイン料理も提供する)や、カクテルタイムを設けるなど、サービスの幅は広がりを見せている。また、最近はセイボリー(塩味のある食べ物)を添える、“食事系ヌン茶”で差別化を図る店舗も出てきた。
価格帯は、4,000~9,000円程度。そもそもアフタヌーンティーは、19世紀にイギリスの貴族の間で広まった習慣であり、客側はその雰囲気も満喫したいと考えている。そのため、ティースタンドを使用したフードの提供はもちろんのこと、スマートカジュアル程度のドレスコードや、飲食の際の基本的なマナーも含めて楽しむ客も少なくない。食事以外でも特別感を演出することが「ヌン活」に求められているようだ。
アフタヌーンティーを提供するカフェ・レストランの多様化
「ヌン活」ブームが広がるなか、さまざまなスタイルでアフタヌーンティーを提供する店舗が増えている。
たとえば、グローバルダイニング系列の『カフェ ラ・ボエム ペントハウス』(東京都港区)では、季節ごとのアフタヌーンティーメニューが人気。ロボットが働くことで知られる『ペッパーパーラー』(東京都渋谷区)は、ロボットに囲まれる空間の中でアフタヌーンティーを楽しめる。
また、表参道のランドマーク『ザ ストリングス 表参道』(東京都渋谷区)では人気アニメやゲームのキャラクターをモチーフにしたアフタヌーンティーを提供。“推し活”とヌン活を同時に楽しめるようにすることで、幅広い客層にもアピールする。
一方、ホテルのラウンジでのアフタヌーンティーサービスも広がりを見せている。東京のホテルで最初にアフタヌーンティーを提供したことで知られる「椿山荘」(東京島文京区)のロビーラウンジ『ル・ジャルダン』では、庭園を眺められる席で英国式の伝統的なスタイルのアフタヌーンティーのほか、季節限定のプレミアムコースを提供する。たとえば新緑の時季にはお茶の老舗である「辻利兵衛本店」とのコラボレーションをするなど、趣向を凝らしたさまざまなアフタヌーンティーが楽しめる。

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飲食店にとって、アフタヌーンティーはアイドルタイムを活用できるメリットがある。さらに、アフタヌーンティーを楽しむお客は滞在時間が長くなる傾向にあるため、追加メニューの注文も期待できるだろう。
アフタヌーンティー文化を取り入れ、ソフトドリンクやフィンガーフードを充実させることで、酒類販売をベースにしていた飲食店が新しい客層を開拓できる可能性もある。ブームの勢いがあるうちに、新たな価値・体験を創り出せれば、顧客層の開拓の機会にもなるだろう。
