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経済アナリスト森永康平氏が語る「2022年の飲食業界」。来年の物価や外食需要の見通しも

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「飲食店にとって非常に厳しい一年だった」と語る森永さん

2023年は円高になって物価が下がる?

――今年は本当に大変な一年でしたが、2023年の経済状況はどうなると思われますか?

「夏あたりには円高方向に動くと見ています。為替レートはいろいろな理由があって動くのですが、私が円高方向に動くと考える根拠は日本とアメリカの金利差です。次のグラフからも、日米間の金利差が開くと円安になり、金利差が縮まると円高になっているのは見て取れると思います。

2022年はアメリカがインフレを抑えるために急激な金利の引き上げをしていました。一方、日本は金融緩和をずっと維持していた。そうすると、日本の金利は変わらないのにアメリカの金利は上がり、そこから金利の差が生まれて円安に振れたんです。

ただ、アメリカは利上げのしすぎで逆に景気が悪くなってきているので、2023年は年央頃から利上げを停止して、年末には利下げをする可能性もあります。そして日本では、日銀の黒田総裁の任期が2023年4月8日までとなっており、次の総裁はおそらく金融緩和の路線を外して利上げに踏み切る可能性があると考えています。その影響で日本とアメリカの金利の差が縮まり、夏頃には円高方向に動くと考えています」

「日米金利差とドル円相場の推移」株式会社マネネ作成

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■ただし、物価上昇の条件は変わらず。販売価格の値上げは「継続」がベター
――輸入に頼る日本で円高に振れる可能性があるのはとても希望がある話です。物価の上昇は2023年も続くのでしょうか?

「物価の上昇圧力は緩くなる可能性は高いと見ています。ただ、あまり喜べる状況にはならないだろうと個人的には思っています。なぜなら、2023年になってもウクライナ侵攻問題やコロナ禍は続く見通しなので物価上昇の条件は変わりません。それなのに円高傾向になったからといって値上げをやめると、また原材料費などが上がったときに苦しくなる。

原材料費がまた上がれば売値はそのままでも利益は減りますし、売値を下げるとさらに利益は減ります。そのしわ寄せが人件費に行くと、正社員を減らして非正規雇用を増やそうとなるかもしれないし、給料やボーナスが減ることも考えられる。表面的には物価の上昇が止まったとしても、ほかでカバーしなければならない可能性はあるでしょう。これが、一概には喜べないと述べた理由です」

飲食店に足を運ぶ人は減っている。客数回復の対策は?

――円高傾向になり、物価の上げ止まりがあることで飲食店への客戻りは考えられますか?

「劇的に状況がよくなるとは考えにくいんですよ。新型コロナウイルスの指定感染症における格下げが決定されたり、経済停滞の原因がある程度解消されたとしても、実質賃金が下がり続けるなかでわざわざ居酒屋で飲むかといえばそうではないはずです」

■「あの世界観が好き」と言ってもらえるような、イートインならではの価値を
――そう考えると、お店に足を運んでもらえるようにいかに外食における付加価値を高めるかが大切かなと感じました。飲食店側ができることは何かあるんでしょうか。

「いまはデリバリーやテイクアウトができて美味しいものを家で楽しめる時代なので、たとえば空間や体験など、いままで飲食店が積極的に投資してこなかった所に力を入れることで、イートインならではの価値を提供するのも一つの手でしょう。

空間や体験の価値という点ではディズニーランドがいい例です。決して安くない入園料ですが、『あの世界観が好きなんだよ』という根強いファンがいる。飲食店が生き残っていくにはそれくらいの領域に行かなきゃいけないのかなと思っています」

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松嶋三郎

ライター: 松嶋三郎

フリーランスのライター。堅いネタから柔らかいネタまで、週刊誌やビジネス誌など紙・Web問わず多数のメディアで執筆中。「書く記事はジャンルも内容も媒体も食わず嫌いしない」がモットー。 https://twitter.com/matsushima36