経済アナリスト森永康平氏が語る「2022年の飲食業界」。来年の物価や外食需要の見通しも
2023年に向けて、今の飲食店ができること
■世の動きを予測して、行動する
――長期的には店舗の価値を高めることと同時に、来たる2023年に飲食店が準備すべきことはありますか?
「2020年の緊急事態宣言からの休業要請や時短営業が記憶に新しいですが、飲食店はどうしても受動的にならざるを得ません。ただ、そうなるだろうと予測して計画を立てたり、行動すること、布石を打っておくことは大切です。
コロナ禍で比較的調子が良かったマクドナルドは、コロナ禍の数年前から進めていた自社デリバリー網の整備、モバイルオーダーの導入、ドライブスルーなどのイートイン以外の施策が見事に功を奏しました。さすがにロックダウンに近い状況は考えていなかったでしょうが、先を見据えることの重要さはわかると思います」
――先程の「世界観を作り上げる」という話とはまた違って興味深いです。
「極端な話かもしれませんが、これからは特徴がない中途半端な飲食店には厳しい展開が待ち受けているのではないかと思っています。お店独自の世界観が作れないなら、むしろ完全テイクアウト型にして効率を重視するスタイルに振り切るのもアリかもしれません」
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■身の丈に合ったDXの促進と、積極的なビッグデータの活用を
――投資すべきことはほかにもありますか?
「データ分析をするために、デジタル化は進めたほうがいいと思います。お客さんの注文状況がわかれば、効率的に在庫管理ができるようになってロスも防げますし、感覚で把握していたピークタイムやアイドルタイムも正確に把握できます。業務やシフトを最適化できればコストダウンにもつながりますし、サービス改善のヒントも見つけやすくなるはず。本来であれば経営している中で自動的に蓄積されていくデータを有効活用しない経営者の方って結構いらっしゃるんですけど、もったいないですよ。
資金に余裕がないなら、無料のソフトやエクセルを使うところから始めればいいんです。まずは現状を正しく把握することで、解決すべき課題も見えてくるはずです。
しかし、まだ不安定な経済状況は続くのでチャレンジングな設備投資はおすすめしません。身の丈に合ったDXでビッグデータを活用してください。どんなに小さくてもいいので、はじめの一歩を踏み出すことをお勧めします」
森永さんの見通しでは希望が見える話もあったが、2023年も厳しい状況が続く可能性は大いにある。今後も経営を続けていくために、できることから始めていきたい。