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『もつ焼でん』おじさん集まる店で月商1100万円。内田克彦氏の「半永久的に繁盛する」店づくり

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『もつ焼 でん 水道橋店』と内田克彦氏

土曜日の昼下がり、開店時間を過ぎたばかりの『もつ焼 でん 水道橋店』に初訪問してみると、席数40人のコの字型カウンターは、すでに大勢の客でびっしり。ほとんどが中年男性、いわゆる“おじさん”世代の客で、間もなく店内は満員となった。14時前のことである。月商が最大で1,100万円にも上るというのも納得だ。この店の何がおじさん達を引き付けるのか? 同店を運営する『株式会社 田』代表取締役の内田克彦氏に話をうかがった。

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開店間もなく賑わう店内。客のほとんどは“おじさん”だ

ゲイバーで9年間接客を学び、飲食の道へ

内田氏は高校を卒業後、専門学校に通うため佐渡島から上京し、知り合いの紹介で新宿二丁目のゲイバーにアルバイトとして勤務した。内田氏19歳の時である。9年間勤め、店のママ、そして訪れるさまざまな客から接客を学んだ。その後、飲食業に興味を持つようになった内田氏は、梅屋敷の居酒屋『八百八町』一号店で働くようになる。1年後には大田区の蓮沼に出店した『八百八町』二号店では実質的な店長を務め、1か月で2,000万円もの売上を記録したこともあったという。しかし、いつしか「独立」を求めるようになった内田氏は、オーナーと料理長は別にいる形ながらも代官山でカフェバーを開く。この時、内田氏は39歳。しかし経営は奮わず、3年で店をたたんだ。

人生を変えた「もつ焼き」との出合い

​​​21世紀に突入して間もない頃、世は立ち飲みブーム。内田氏は偶然立ち飲みの『日本再生酒場』新宿三丁目店を訪れ、もつ焼きと出合った。「豚の内臓ってこんなに美味いのか!」と感動したと内田氏は当時を振り返る。同じ頃、さらに繁盛店の秘密に気づいた。

「繁盛店に継続して集まるのは“おじさん”であることに気づきました。タピオカや食パンがブームになって飛びつくのは女性ですが、離れるのも早い。おじさんが集まる店であれば半永久的に繁盛するはず、と確信したので​す」(内田克彦氏、以下同)

内田氏「おじさんが集まる店は半永久的に繁盛する」

さらに、内田氏は今後の人生を決定づける店とも出合う。

「立石の『宇ち多゛』に行って、もつ焼きに生涯を捧げようと決めました。同店を初めて訪れた最初の衝撃、二度目、三度目の衝撃まで覚えています。店内の心地よさは、まるで温泉に浸かっているかのよう。もつ焼き屋ほどかっこいい仕事はないと感じました」

その後内田氏は、『日本再生酒場』で1年間働き、もつ焼きの下処理から串打ち、焼きまでの工程を身につけた。ちょうどその頃、転機が訪れる。たまたま聴いていたラジオ番組で内田氏の耳に飛びこんできたのは、『飲食で1億円出資します』という言葉。声の主は、飲食業界の大手・際コーポレーション株式会社の中島 武社長だった。

1億円の出資を得るための課題は「自分が運営してみたい店の図面を描くこと」。内田氏は「コの字型のカウンター」を中心に据えた図面を描き、応募した。コの字型カウンターの利点は、「スタッフの動線を考慮し、料理の提供時間を短縮する」点にあると内田氏は考えている。

「目立つよう “金色”の封筒に図面を入れて応募してみると、最終面接の5人に残りました。面接では自作の歌『もつ心』を熱唱してからプレゼンテーションに臨みました。すると、1億円の出資には至らなかったものの『熱演賞』と『中島塾賞』をいただいたのです」

もともとハードロックにヘビメタ、パンクなど、音楽好きな内田氏のソウルが通じたのだろうか。直後に中島氏からスカウトされ、内田氏はさっそく物件探しに取りかかった。

新宿西口の思い出横丁で自分が描いた図面通りの物件と出合い、開業したのが現在も人気の『もつ焼ウッチャン 新宿思い出横丁店』だ。時に2008年。相棒となったのが現在も『株式会社 田』とコンサルタント契約を結びつつ、料理研究家として活躍している山田英季氏だ。

「山田さんはカフェ時代、バイトの面接に応募してくれた人でした。当時からまかないを任せるとメチャクチャ美味しく、常人とは違った舌の持ち主だと感じていました。山田さんにサイドメニューを任せ、自分は串ものを担当したのです」

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タシロアキラ

ライター: タシロアキラ

大学の教育・研究の記事を中心に20年ほど紙媒体のライターとしてキャリアを重ねる。フリー転身を機に、趣味である食、スポーツ、ガジェットのジャンルでWEB記事執筆にも進出中!