コロナに火事、2つの危機と戦った『スナック夜間飛行』。“不死身の女”ギャランティーク和恵さん

『喫茶まちぶせ』の店内(写真提供:ギャランティーク和恵さん)
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スナックだからこそ可能な手法
コロナ禍が本格的になった2020年初頭、ゴールデン街の人出は一気に減少した。『夜間飛行』も例にもれず、3月中旬以降、平日は2、3人しかお客さんが来ないという状況になった。その後、東京都から営業自粛要請があり、午後8時以降は店舗を開けられなくなった。その時に考えだされたのが「配信酒場 Snack 閑古鳥」である。
飲食店は、実際に飲食を提供できない仮想空間での営業は考えられない。しかし、スナックは酒を飲みながら会話や場の雰囲気を楽しむスペースで、大事なのはその場の空気。酒やつまみはPCやスマホの前で自分が用意できる“添え物”と言ってよく、オンラインを通じて流れてくる音声や映像を見て、あたかもスナックにいるように空気を感じとれる。
同年4月7日に緊急事態宣言が出され、その後、スナックやバーは休業要請の対象となり、休業を余儀なくされるが、その間も『夜間飛行』はネオンの消えたゴールデン街から、店の空気を伝え続けた。
実店舗とバーチャルの二本立て営業
東京都の営業自粛要請が解除された2022年3月25日以後は店舗をオープンしながら、店内から配信を続ける二本立ての営業となった。誰もいない場所から配信することを意味する「閑古鳥」も名称を「夜間飛行オンライン」と変更した。
オンライン酒場が店舗の存続に果たした役割について聞くと、バーチャルでスナックの空間を提供できたことが大きいとする。
「配信によってお客さんと繋がり続けることができました。スナックは、その場に行かないと会えない人たちと会うのが楽しみという人がいらっしゃるわけです。それが(コロナで)プツッとなくなってしまうと、行く場所がなくなってしまいます。そうならないように、オンラインでもここに来れば私や顔見知りのお客さんがいるという空間を作りました。もちろん、経済的にも助けになりましたし、実店舗を再開する時に全く空白の状態からのリスタートにはなりませんでした」
また、バーチャルに参加してくれて知り合いになった人、歌手としてのギャランティーク和恵さんのファンでオンラインで顔を出してみた人が、実店舗にやってくることも増えたという。これは常連さんが多くを占める店舗では飛び込みの入店のハードルは高いが、事前にオンラインで馴染みができれば「今度はお店に行きます」と言える。その意味ではビジネスを広げる効果もあった。
こうした努力を積み重ね、火事の後もバーチャル上の空間を提供し続け、『夜間飛行』は2度の大きな危機を乗り越えようとしている。

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