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コロナに火事、2つの危機と戦った『スナック夜間飛行』。“不死身の女”ギャランティーク和恵さん

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『スナック夜間飛行』の店主・ギャランティーク和恵さん

昨年12月に新宿ゴールデン街で発生した火事で店舗が半焼した『スナック夜間飛行』が、1か月半後の2月3日に営業を再開した。コロナ禍に続き火災という2つの大きな厄災に直面しても、昭和から続く老舗スナックは生き残った。

【注目記事】コロナに火事、2度の危機と戦った『スナック夜間飛行』。“不死身の女”ギャランティーク和恵さん

オンライン酒場という“飛び道具”

ゴールデン街で火災が発生したのは年も押し詰まった12月17日午後1時過ぎ。『スナック夜間飛行』が入る建物から出火した。たまたま店舗内で片付けをしていたオーナーのギャランティーク和恵さんは煙に気づきすぐに避難した。近くで燃える建物を見ながら「(煙の勢いなどを見て)全部焼けると思いました。『ああ、この店の歴史もここでピリオドか』と……」と振り返る。

店内は1972年に『喝采』でレコード大賞を受賞した、ちあきなおみさんのアルバム『もうひとりの私』(1972年12月発売)のジャケット撮影の場所になった。当時『桂(けい)』という店名だった前オーナーの店舗を2007年に引き継ぎ、それから15年後の冬、建物の中からもくもくと立ち上がる煙を見て、その歴史も全て灰燼に帰してしまうことを覚悟したのである。

2022年12月17日に新宿ゴールデン街で発生した火災(写真提供:ギャランティーク和恵さん)

幸いにも『夜間飛行』は、客が座るスツールの側の壁や天井が消火活動の影響で損傷を受けたが、「奇跡的に」(ギャランティーク和恵氏)カウンターのサイドはそのままの姿で残った。ただし、破損した部分の修復工事の必要から、しばらく営業できない状態となり、休業補償の保険にも加入していなかったため大きな危機を迎える。普通の店舗であれば、ここで諦める人も少なくないかもしれない。しかし、『夜間飛行』はコロナ禍での対策のために開発したオンライン酒場という“飛び道具”を持っていたことで最大の危機を免れることができた。

「配信酒場 Snack 閑古鳥」という名のオンライン酒場は、コロナ禍で実店舗での営業ができなくなった2020年4月以降、店内から有料(チャージ500円)でライブ配信をして、お客さんにスナックに来ているような雰囲気を楽しんでもらおうというサービス。スタッフがお酒を飲むための奢りのお酒チケット(700円)も支援の意味合いから購入するお客さんが多かった。常連客を含め通常60人程度、イベントを開催するときは120人程度が集まる盛況となった。

火事になったことで『夜間飛行』からの配信はできなくなったが、たまたま火事の4か月半前の2022年7月1日、新宿区市谷柳町に『喫茶まちぶせ』を開店していたため、そこからの配信が可能となった。こうして『夜間飛行』の再開までの1か月半、配信に注力することになる。

「火事で『夜間飛行』は電気もWi-Fiもダメになり、配信ができなくなったのはコロナ以上に打撃でしたが、たまたま喫茶店を始めていたので、そこから配信できました。不思議なタイミングです。コロナや火事などの被害があった時にサポートとなるものが自分のところにはあったから、何とか持ちこたえられたというのがあります」

なお、火災の原因は古くなった配線からの出火であったことが判明。建物自体、大規模に改善の工事をして配線も新しくしたため、今は安心してお客さんを迎え入れることができるという。

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サクラギミオ 神奈川県 アジア料理 10店舗以内
読んでとても好きです。
2023年03月04日 19時24分44秒
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松田 隆

ライター: 松田 隆

青山学院大学大学院法務研究科卒業。ジャーナリスト。スポーツ新聞社に29年余在籍後にフリーランスに。「GPS捜査に関する最高裁大法廷判決の影響」、「台東区のハラール認証取得支援と政教分離問題」等(弁護士ドットコム)のほか、月刊『Voice』(PHP研究所)など雑誌媒体でも執筆。ニュース&オピニオンサイト「令和電子瓦版」を主宰:https://reiwa-kawaraban.com/